さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)
こんにちは、体重を2kg減らした小田です。お医者さんにほめられました! もう少し減らしたいのですが、大幅に減らさなければいけないわけではないので、低いハードルで習慣化できそうなことから順に取り組んでいます。エアロバイクともずくは順調に続いているので、次は「コンビニの揚げ物を減らす」に挑戦中です。今まで週に2〜3回食べていたのですが、よくよく考えると、どうしても食べたくなるときはあるにしても、ふだんからそんなにたくさん食べたいわけではないので、ひとまず“2週間に1回まで”にすることにしました。慣れてくるといいな、と思います。
さて今回は、図形の問題です。同じ形をかく、というシンプルな問題ですが、向きを変えたりすると、なかなか難しかったりもします。その難しさも楽しみながら、ぜひ気軽にチャレンジしてみてください。
それでは早速行ってみましょう。
Stage53:同じ形をかいてみよう
例題
右の四角の中に、左と同じ模様をかいてください。ただし、なるべくフリーハンドで(定規などを使わずに)かいてください。正確でなくても構いません。
例題の答え
略
まずは、問題の意味が理解できているかどうかの確認ですね。例題と「解いてみよう」のLevel1は、与えられたものと同じ形をかく問題です。「定規などを使わずに」というのは、もちろん、鉛筆や消しゴムの“まっすぐなところ”なら使っていい、ということではありません。「解いてみよう」のLevel2や3は「右に90度回転」や「180度回転」させたものをかく問題ですが、角度などがまだよくわかっていない様子でしたら、実際に紙などを回転させて見せてあげてください。
Level2や3の問題は、頭の中で回転させてほしい問題ではあるので、「どう回転させるか」を理解したあとは、もとの向きのままでやってみてほしいところです(どうしても頭の中で回転させるのが難しい場合は、「回転させた状態」のものを見ながらかいても構いません)。
5月号「図形のセンスを身につけよう」の問題と同じように、今回の問題も“意外と難しい”問題です。お子さんがお子さんなりに頑張ってかいていれば、基本的には正解にしてあげてください。図形に対する苦手意識があまりないお子さんであれば、大きくズレている部分については少し指摘してあげてもいいでしょう。ただ、その場合も細かくダメ出しをするのではなく、だいたい正しくかけていればよしとしてあげてください。なかには、この図を「直線で区切られたもの」ではなく、下図のような「タイルがしきつめられたもの」と見えている子もいるでしょう。そのとらえかたも間違いではありませんので、そういった感じでかいていても、だいたいかけていれば正解です。
解いてみよう
(イ)の四角の中に、(ア)と同じ模様をそれぞれかいてください。ただし、なるべくフリーハンドで(定規などを使わずに)かいてください。正確でなくても構いません。
(イ)の四角の中に、(ア)の模様を右に90度回転させたものをそれぞれかいてください。ただし、なるべくフリーハンドで(定規などを使わずに)かいてください。正確でなくても構いません。
(イ)の四角の中に、(ア)の模様を180度回転させたものをそれぞれかいてください。ただし、なるべくフリーハンドで(定規などを使わずに)かいてください。正確でなくても構いません。
解答
(1)(2) 略
さんすう力UPのポイント
5月号で、図形のセンスについてのお話をしましたね。図形のセンスを身につける、つまり、図形の特徴を感覚的にとらえる力を磨いていくことは、算数を学習する上でひとつ重要な要素ではあるでしょう。しかし、それだけが“図形を学ぶこと”ではありません。算数で“図形”を学ぶ意義は、「さまざまなものの形の性質や特徴を理解すること」です。感覚的にとらえられるようにするだけでなく、それらを理論的に学んでいくことや、技術的にとらえる方法を身につけることもまた、“図形の学習”においては重要です。
人間は、意外と“ものの形”をしっかり見ていない、というのは、5月号でもお伝えしたとおりです。実物に触れることで、“ものの形”をみる機会を増やす、というのが5月号のテーマでしたが、今回は、それに加えて「細部に注目して“しっかり見る”」ことがテーマです。
今回の問題、慣れていない子どもにとっては意外と難しいでしょう。例題などの“そのままかく”問題であっても、最初はなかなか上手くかけません。Level2や3のような、回転させたものをかく問題は、言うまでもないでしょう。ただ、この問題は“センス”がなければできないかというと、そういうわけではないのです。“センス”がなくても、技術的にクリアする方法は存在します。
たとえば、下図の赤い線に注目してみましょう。この線は、「左の辺の真ん中の点から右下の頂点」に引かれていますね。これを90度右に回転させると、左の辺は上の辺に、右下の頂点は左下の頂点になるので、「上の辺の真ん中から左下の頂点に引かれた線」となります。そうやって一つひとつのパーツを“言語化”していくと、頭の中で考えるよりは簡単に“同じ図”をかくことができますね。
上の図にかいたように、それぞれの頂点や点に記号をうっていくのも有効です(アルファベットに慣れていないようなら、○や□でも構いません)。そうすると「Eの点は辺ABの真ん中」というように、よりわかりやすく言葉にできますね。
算数の学習というと、“センス”が必要だと思われていることが多いですが、実際にはむしろ、「“センス”に頼らないための“技術”の習得」という面も強いです。感覚的には正確にとらえるのが難しいものを、技術によって正しくとらえていく、というのが、算数の役割であり、その技術を身につけていくことが、算数の学習なのです。感覚によって全体像を漠然と把握することと、技術によって細部を正確にとらえることは、算数の学習の両輪です。センスがないから、と諦めるのではなく、ぜひ「センスに頼らないための技術」を練習し、習得していってほしいところです。
いかがでしょうか。
暑い日が続きますね。暑さに強いタイプではないので、あまり家から出たくないな、と思いながら日々を過ごしています。ますます運動不足になりそうですね。コンビニの揚げ物は減りそうですが、かわりにアイスの消費が増えそうです。最近はおいしいアイスがいっぱいありますからね。食べすぎないようには注意したいと思います。
それではまた来月!
文:小田 敏弘(おだ・としひろ)
数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。
公式サイト:http://kurotake.net/
主な著書
- 「算数のセンス」の具体的な中身を知りたい方はこちら
『できる子供は知っている 本当の算数力』(日本実業出版社) - 試行錯誤しながら、計算や図形のセンスを鍛えたり、考える力を育んだりしたい方はこちら
『東大文の会式 東大脳さんすうドリル 基礎編』(幻冬舎)
『東大文の会式 東大脳さんすうドリル 計算編』(幻冬舎)
『東大文の会式 東大脳さんすうドリル 図形編』(幻冬舎)
『東大文の会式 東大脳さんすうドリル 論理・文章題編』(幻冬舎) - 中学入試の問題の内容や、その本質が気になる方はこちら
『本当はすごい小学算数』(日本実業出版社)