あてはまるものを探してみよう

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)


 こんにちは、最近アイスクリーム用のスプーンを買った小田です。「手の熱が伝わりやすく、その熱でアイスが少し溶けるから、冷凍庫から取り出したばかりのアイスも食べやすい」というのが売りのスプーンです。実際に使ってみたところ、確かに手の熱は伝わっている気がします。スムーズにスプーンが入っていく、というほどではありませんが、押し込むときに手が痛くなることがないかな、という感じです。ただ、手の熱がアイスに伝わりやすいということは、逆に言うとアイスの冷たさが手に伝わりやすいということなので、食べている途中に指先が冷えたりはします。夏でよかったかな、というところですね。

さて今回は、論理の問題です。算数で“論理”を扱ううえで、「あてはまるかどうか」を判断する力も大事です。しっかり問題文を読みつつ、まずは気軽にチャレンジしてみてください。

それでは早速行ってみましょう。
 

Stage54:あてはまるものを探してみよう

(ア)〜(エ)のカードのうち、次の(i)(ii)のいずれにもあてはまるものを、すべて選んでください。
(i) 右上に数字が書かれている。
(ii) △が書かれていない。

(イ)と(エ)

※ ほかのカードが条件にあわない点
(ア)右上に書かれているのが数字ではない。
(ウ)△が書かれている。

まずは問題の意味の確認ですね。「いずれにもあてはまる」というのは、「両方にあてはまる」(「解いてみよう」のLevel2、Level3では「全部にあてはまる」)ということだ、と伝えてあげるといいでしょう。

問題がいまいちピンときていないようであれば、まずは問題文を読むよう伝えてください。とくに、条件をしっかり読むことが、今回は大事です。場合によっては音読してもらってもいいでしょう。1人で読むのが難しそうであれば、一緒に読んであげてください。

お子さまが答えをいくつかあげたら、まずはそれらが本当に条件をみたしているか、1つひとつの条件について順に確認してあげましょう。条件をすべて(例題なら2つとも)みたしていればOKです。お子さまが選んだものがすべて正解であれば、いったん「ほかにはなかった?」と聞いてみましょう。「ない」と言うようでしたら、“選ばなかったもの”について「これはどこがダメだった?」と聞いてあげてください。どこが条件にあてはまらないかを答えられれば、とてもすばらしいです。お子さまの様子を見て、こういった問題があまり得意でなさそうであれば、「あてはまるもの」をすべて見つけた時点で終わってしまっても大丈夫です。

 

Level 1

(ア)〜(オ)のカードのうち、次の(i)(ii)のいずれにもあてはまるものを、すべて選んでください。
(i) 数字が2つ書かれている。
(ii) 四角(□または■)が書かれている。

Level 2

(ア)〜(オ)のカードのうち、次の(i)(ii)(iii)のいずれにもあてはまるものを、すべて選んでください。
(i) 書かれている数字をすべて足すと10より大きい。
(ii) 黒くぬられた形が1つ以上書かれている。
(iii) 同じ形が2つ以上書かれていない。

Level 3

(ア)〜(オ)のカードのうち、次の(i)(ii)(iii)のいずれにもあてはまるものを、すべて選んでください。
(i) 5より小さい数字が書かれていない。
(ii) 書かれている形がすべて黒くぬられている。
(iii) 7と★の少なくともいずれかが書かれている。

Level 1

(ウ)(オ)
※ ほかのカードが条件にあわない点
(ア)数字が1つしか書かれていない。
(イ)四角が書かれていない。
(エ)数字が3つ書かれている。
 

Level 2

(ア)(エ)
※ ほかのカードが条件にあわない点
(イ)書かれている数字を全部足しても10より小さい。
(ウ)同じ形(▲)が2つ書かれている。
(オ)黒くぬられた形が書かれていない。
 

Level 3

(イ)(ウ)
※ (イ)は7と★が両方書かれているが、条件は「少なくともいずれかが書かれている」なので、条件にはあてはまっている。
※ (ウ)はそもそも数字が書かれていないが、条件は「5より小さい数字が書かれていない」なので、条件にはあてはまっている。
※ ほかのカードが条件にあわない点
(ア)黒くぬられていない形が書かれている。
(エ)5より小さい数字(4)が書かれている。
(オ)7も★も書かれていない。
 

6月号で、算数における「論理的な思考」をできるようにしていくためには、まず「結論の候補をもれなくあげていく力」が大事だ、という話をしましたね。今回はそれに加えてさらにもう1つ、別の「論理的な思考」に必要な力の話をしたいと思います。

今回のテーマとなるのは、「条件にあてはまっているかどうかを確認する力」です。これと「結論の候補をあげていく力」を組み合わせると、まず「結論の候補をあげて」いき、それぞれの候補に対して「条件をみたしているかを確認」することで、「正しい結論」を導くことができるでしょう。

たとえば、次のような問題があるとします。

4人組のグループと6人組のグループがあわせて12グループあります。全体で56人であったとき、4人組のグループと6人組のグループはそれぞれ何組いるでしょうか。

いわゆる“鶴亀算”の問題ですね。“文章題”的な解き方はもちろんありますが、そもそもこの問題に正解するだけであれば、もっと単純な方法が存在します。それは、あてはめていく方法です。

この問題での正解として考えられるのは、「4人組が0組、6人組が12組」、「4人組が1組、6人組が11組」、……「4人組が12組、6人組が0組」のいずれかです。そうやって正解の候補を列挙できれば、あとはそれぞれ条件にあてはまるかどうかを確認していけばいいでしょう。「4人組が0組、6人組が12組」のとき、全体で72人なので「全体で56人」という条件にあてはまりません。「4人組が1組、6人組が11組」なら全体で70人となり、これも違います。順々に調べていけば「4人組が8組、6人組が4組」のときにちょうど「全体で56人」となるので、これが正解だとわかりますね。

4月号で、算数を学んでいくうえではまず試行錯誤することが大事だ、とお伝えしました。最初の段階ではとにかく“やってみる”だけでいいのですが、結論の候補を列挙していく力やそれらを条件と照合していく力がついてくると、その“試行錯誤”自体もうまくなっていくでしょう。試行錯誤がうまくなれば、結論に到達するまでの時間が短くなるというだけでなく、その過程でいろいろなことに気づきやすくもなります。そこで得た気づきが、次に“考える”ための材料につながるのです。その意味では、「結論の候補をあげていく力」「それらを条件と照合していく力」は、まさに「論理的に考える力」の根本にあると言うことができるでしょう。

今回の問題は、そのうちの「条件と照合していく力」を身につけていくための問題です。条件自体がシンプルなときは、それほど難しく感じないかもしれません。しかし、Level3のように条件の書かれ方が少しひねられたりすると、本当にそれで正しいのかどうか不安になったりもしてきますね。条件が複雑になればなるほど、人間は意外と“書かれている通り”に解釈せず、自分の頭の中で勝手に意味を作り上げてしまいがちです。「文章題が苦手」という人も少なくないですが、その“文章題”の難しさも、このあたりにあるのでしょう。条件を書かれている通りに受け止め、それに合うかどうかを判断する、その結果が間違っていれば、自分の解釈を修正していく、という練習を積んでほしい、というのが、今回の問題の狙いです。
 


いかがでしょうか。

暑い日がまだまだ続きますね。暑さが続きすぎるので、例年通り、そうめんを食べて過ごしています。暑い季節にそうめんをゆでるのは大変、という話もありますが、今は電子レンジでゆでられる容器があったりするので、そちらにすべて任せています。文明の発展って大事ですよね。ゆであがった麺は冷水でしめないといけませんが、流水でいいかなと思って水道水を使うと、水がそこまで冷たくないというか、むしろ微妙にぬるいのが最近の悩みです。氷は作っておく必要がありますね。この季節、ほかにも氷を使う機会がいろいろあるので、切らさないよう頑張っていきたいと思います。

それではまた来月!

 

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書


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