[子どもとデジタル機器]【第4回:ネットに匿名性はない】

「子どもにどれだけ情報端末を使わせるのか」「子どもとインターネットの関わりをどのように考えるべきか」。保護者にとって、大変悩ましい問題のひとつです。そんな「お子さまと『情報』との関わり方」についてZ会プログラミングシリーズの責任者が解説します。

(※前回記事【第3回:確かな情報って?】はこちらから

※本記事は、2021年2月24日に「Z会 STEAM・プログラミング教育情報サイト」上で掲載した記事を一部修正の上、再掲しています。

 

ネットに匿名性はない

もうこれは、言い古されたことかもしれません。
「ネットに匿名性はないよ!」
個人の力だけでは限界はあるものの、法的な手続きを踏めば、ある書き込みが誰によってなされたものなのかは追跡可能です。実際に、ネット上に誹謗中傷の書き込みをしたとして逮捕された人も少なからずいます。もちろん、情報開示までには手間がかかるために泣き寝入りする人も多いでしょうし、一定以上の技術があれば自身の痕跡を残さないようにすることも不可能ではないでしょう。ただ、われわれは、「ネットに匿名性はない」と考えて行動すべきと考えておくのが無難です。

デジタルタトゥー

もうひとつ、「デジタルタトゥー」という言葉もぜひ、知っておいていただきたいものです。あたかも一度入れたタトゥーが消えないように、インターネット上で拡散した情報をすべて消すことは困難であるとの意味を込めた言葉です。

一時期問題になった(そして今でも問題であり続ける)ものに、「リベンジポルノ」があります。交際相手に共有した、公開するつもりのない私的な画像や動画を、後に無断でインターネットなどを通じて不特定多数に配布されたり、公開されたりしてしまう、というものです。そうした写真が完全に消えることは、まずありません。デジタルタトゥーとなってどこかに残り続けます。これは、かなり悲惨なことです(被害者にも加害者にもならないために、撮らない・撮らせないのが大切です)。こうした例に限らず、画像であれ文章であれ動画であれ、デジタル端末で作成した情報を他人と共有することで、その情報は漏えいし得る可能性があると考えておくべきです。また、思ったような受け取られ方をするとは限りません。その時点で相手をどれだけ信用していたとしても、いつ心変わりがあるかわかりません。ウイルスなどに感染して情報漏えいが起きる可能性もあります。「自分(たち)は大丈夫」ではなく、いつ何が起きるかわからないという思いだけは持っておいてください。

大事なことなんだけど……

……ということを子どもたちに伝えても、不思議なほどに響きません。「へー、怖いね」という返事はありますが、自分ごととして受け止められないのです。いえ、子どもに限りません。大人に対しても同じです。とある芸能人への誹謗中傷の書き込みをしたとして逮捕された主婦は、取り調べに対して「何が悪いんだ」という趣旨の発言をしたそうです。

考えてみれば、当然のことかもしれません。
インターネット上で誹謗中傷をしたとしても、目の前で誰かが傷つく様子を見られるわけではありません。口に出すわけでもなく、目の前で誰かが苦しむわけでもないのですから、陰で悪口を言うのと同じ感覚で「誰かを苦しめている」という実感が湧きにくいのでしょう。

しかし、それではいけません。

「脅す」ことは意味がない

これまで多くの学校で行われてきた「ネットモラル」の授業や講座では、ネットの恐ろしさを伝えることが多かったように思います。引き合いに出すのははばかられるものの、違法薬物に対する指導と同じで、これをしてはいけない、これは危ない、これをするとこうなってしまう、という内容のものがほとんどでした。もちろん、不都合があることを、危険があることを、正しく知ることは大切なことです。しかし、それでも好奇心のほうが勝ってしまう可能性があるのです。まして、実感の湧きづらいネットモラルの問題は、遠い世界の話としか受け取れないことでしょう。それでは、どうすればよいのでしょうか。

知識を正しく知った上で

まず、大前提として、知識を正しく持つことが必要です。これまでの「脅す」指導も必要でしょう。してはならないこと、危ないこと、行動してしまった結末などは、知識として知っておく必要があります。

その上で、考えさせる必要があります。いい子になる必要はありません。人間ですので、ちょっと意地悪な気持ちになることもあるでしょう。悪口のひとつくらい、言いたくなることもあるでしょう。否定はしません。そのような気持ちになることを認識させましょう。

そして、本連載の最初の話に戻ります。約束しましょう。
小学生のお子さまには小学生なりの、中高生のお子さまには中高生なりの約束があります。知識を前提に考えさせ、約束をしましょう。

ネットモラルの問題で怖いのは、自身が被害者にも加害者にもなり得ることです。そのためにも、「うちの子は大丈夫」ではなく、あらゆる可能性を前提としてご家庭で考えていくべきことなのです。

 
これまで4回にわたり、お子さまと「情報」の関わりについて考えてきました。まだまだ言い足りないこともありますし、皆さまも疑問に感じていることもあるでしょう。また、機会があれば、そうしたものについても触れてまいります。

([子どもと情報] 終わり)

[子どもと情報]バックナンバーは下記からお読みいただけます。

【第1回:デジタル端末は強「敵」だ!】
【第2回:だって楽しいんだもん!】
【第3回:確かな情報って?】
【第4回:ネットに匿名性はない】

 

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