【対談】小学生の学びと、中学生の学びは何が違う?

2025年3月から始まる中学生向けコース。小学生向けコースをご受講中の保護者さまは、これからの学習がどう変わっていくのか気になるところかと思います。
そこで、今回は小学生向けコースと中学生向けコースの違いや共通点について、小学生向けコースの代表者である鈴木貴子と中学生向けコースの代表者である祝部憲孝よりお話しいたします。
※本記事は、9月末に一部の方にお届けしたご案内に掲載した記事を再編集のうえ、再掲しています。ご案内には掲載していない内容もございますので、ぜひご覧ください。

鈴木 貴子

小学生向けコース代表者
鈴木 貴子(すずき たかこ)

株式会社Z会
通信教育事業本部
幼児・小学生事業部
事業部長

 

祝部 憲孝

中学生向けコース代表者
祝部 憲孝(ほうり のりたか)

株式会社Z会
通信教育事業本部
中学生事業部
事業部長

「考える力」を育むことは、小学・中学でも大切にしている信念

──それぞれのコースで、コース設計や教材作成上工夫していることは何かありますか?

鈴木 Z会の教材は基礎知識を丁寧に理解できるよう工夫していますが、それだけでなく「考える力」をつけることを重視している点がZ会ならではです。
小学生向けコースでは、ドリルのように機械的に解ける問題ではなく、文章を読んで、「どういうふうに解くといいのかな?」と考えなければ解けない問題を多く出しています。例えば国語だと、小学校の単元テストでは理由を問う問題などは該当箇所を抜き書きで答えることも多いと思います。Z会では、学年が上がるとそのまま抜き書きするのではなく、2つの段落から少しずつ要素を引っ張ってきて自分でまとめ直して書くような問題を出しています。このような、じっくりと本質を考える問題によって、考える力を身につけられるようにしています。
祝部 中学生向けコースも同じです。特に添削問題では、単純な知識を問う問題は出さず、理由を問うような問題、例えば理科であれば、その現象の理由がわかっていなければ答えられないような問題を出します。知識の暗記ではなく、知識を知識として使える状態にもっていく出題をしています。

──小学生、中学生それぞれの時期に身につけてほしい姿勢とはどのようなものですか?

鈴木 小学生向けコースで身につけてほしいのは、家庭学習の習慣をつけることと、自ら学習計画を立てる習慣をつけることの二つです。例えば、タブレットコースの場合、モデルスケジュールからずれてしまった時に、自分でスケジュールを調整できるようにしています。また、紙の教材で学ぶコースの場合、その月の学習を1カ月間で完結させるにはどうすればいいかを考えてもらえるよう、カレンダーとシールを教材と一緒にお送りして自分で計画を立てることをやってもらっています。
祝部 中学生向けコースも同じです。中学生になると、計画を立てて勉強する場がZ会から学校にまで広がっていく、つまり、定期テストという学校の中のイベントで実践していく段階に移っていきます。中学生向けコースでは、学習アプリの画面で学習の進捗状況がわかるようにしていますので、やるべきことの把握や優先順位づけ、スケジューリングなどに活用し、「計画を立てて勉強する」「計画通りにいかなくても臨機応変に対応して立て直す」という取り組みに挑戦し、自主的に学習を進める姿勢に進化していってほしいと思っています。

──小学生向けコースと中学生向けコースに通底する理念やこだわりについては、お互いにどのようにとらえていますか?

Z会小学生向けコースについて
鈴木 先ほどお話しした通り、「考える力をつけること」は、小学生・中学生でも重視していますが、もう一つこだわっていることがあります。それは、「書くこと」です。
祝部 そうですね。書くことによってこそ、自分がどこまで理解できているのか・いないのかに気づくことができるので、アウトプットすることは最も重視すべきだと考えています。そして、足りない視点や知識に気づいていただくために添削指導があります。
鈴木 答案を書く際に盛り込むべき要素を理解しているつもりでも盛り込めていないことって結構あると思います。添削指導はそこをきちんと拾っています。また、算数や数学だと、そもそも問われていることが何かを理解していないと立式ができません。理解を深め、試行錯誤して立式し、解答を導くためにも書いて考えることはとても大事だと思います。

──アウトプットすることは、理解度の確認だけでなく、知識を使うトレーニングの側面もあるように思います。この点について、小学生向けコースから中学生向けコースで変化する面があれば教えてください。

Z会中学生向けコースについて
祝部 算数・数学を例に話すと、小学、中学、高校と進んでいくにつれて、扱う題材が数字でイメージする具体的なものから、記号などでイメージする概念的・抽象的なものに変化していきます。中学はちょうどその入り口で、XやYを使って表現・理解するものが出てきて、高校になると、具体がなくなり各種定理の中からどれを使って解答を導き出すかというところから考える概念的な世界になります。その理解の度合いや使い方を、アウトプットすることで確認していくことになります。
鈴木 確かに、国語や英語の素材文も、身近な題材から、だんだんと社会問題など大きな題材に移り、抽象度が上がっていくという点で、数学との共通点がありますね。

添削指導は、高校入試に向けて、教科専門性の高い指導へ

──学習指導要領は時代にあわせて変化してきていますが、その点についてはどう考えていますか?

鈴木 そのときどきの学習指導要領が育もうとしている資質・能力をふまえて問題をブラッシュアップしていますが、その際に、考える力をつけられる問題にする点はぶれないようにしています。例えば、社会では、一問一答の問題を出すのではなく、「この地図から読み取れることは何?」と問うような問題を昔から出しています。今の大学入学共通テストの社会科目(地歴・公民系の科目)で資料をたくさん読ませて読み取れる内容を回答させる問題に通ずるものがありますよね。
祝部 中学生向けコースも同じで、考える力をつけられる問題にすることを重視しています。ただ、一つ、小学生向けコースと異なるのは、高校入試をめざして学ぶ側面があるということです。高校入試の問題にも、流行や学習指導要領をふまえた傾向などがありますから、毎年、入試を分析した上で「こういう出題の仕方をすると、もっと考える力を問う問題になるよね」などと議論して中1から中3まで全学年の教材の見直しをかけています。

添削指導で重視しているところ

──添削指導では、何を重視して指導されていますか?

鈴木 担任指導者制をとっているコースでは、お子さまの変化や伸びを汲んで褒めるなどして一人ひとりの成長や身につけた力を認めるというスタンスで添削指導を行っています。もちろん、添削の質を維持するために、内部で添削者の先生たちの指導内容をチェックすることもしています。
祝部 中学生向けコースは、担任制ではなく教科専任制に変わるので、小学生向けコースから進級した際に違和感を覚えるところかもしれません。ただ、高校入試に向けて教科ごとに必要な力を養っていくために適した体制だと判断しています。
鈴木 小学生コースでは「ここはもう少しこういう要素もあるとよかったね」といった情緒的な指導をしていたところから、中学生向けコースでは、「この要素が足りていない」と明確に指摘するようになり、より教科専門性の高い指導になっていきますよね。それが、高校入試に必要な力を養うことにつながるということかと思います。
祝部 その通りです。あとは、先ほど話した高校入試の傾向をふまえて問題をメンテナンスした際には、その意図や問題を通じて問うている考え方が生徒さんにも伝わるように、「生徒さんにこういう気づきを与える朱筆を入れていただきたい」と添削者の先生にお願いしています。また、意図した解答を生徒さんが書けているか、書けていない場合は適切に添削指導が入っているか、また、その問題の後に出した問題の正答率にどのように影響したかなどを分析し、教材の設計が適切かどうかを検証しています。

──このほかに、小学生、中学生というそれぞれの学齢に合わせた学習を提供するために工夫されていることは何ですか?

鈴木 小学生向けコースの場合は、1カ月ごとの学習をきちんとやっていきましょうということを重視しているので、それ以外の追加の教材は基本的にはありませんが、中学生向けコースだと定期テスト用の教材が追加される点が違いですね。
祝部 そうですね。定期テスト対策や英検®対策など、カリキュラム学習だけでない目的の勉強が入るタイミングがあるので、これらに特化した教材を提供しているのは違いではありますね。
※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。このコンテンツは、公益財団法人 日本英語検定協会の承認や推奨、その他の検討を受けたものではありません。

小学生から、中学生の学習に適した学び方へ

──小学生コースで紙の教材で学んでいた方にとって、学び方に何か変化はありますか?

祝部 中学生向けコースではタブレットを用いて学習します。現在小学生コースを受講中の方にとっては、使う道具は変わりますが、テキストと解答用紙を横に並べて問題を見ながら答案を書いたり、テキストに書き込みながら解いたりといった行為は、画面を分割して、問題と解答欄を左右に表示することで、タブレットの画面上でも可能にしています。一方、タブレット学習ならではの機能も搭載しており、わからない用語に関する、教材や教科を横断した関連事項へ素早くアクセスして理解を深められる機能「学び検索チエノワ」はZ会の独自機能です。今後は、この機能にとどまらず、タブレット学習だからこそ実現できる「学習の広がりと深さ」を追求し、本質的な学習をさらに深められるように教材開発を続けていきます。

──サービス提供の面で工夫している点はありますか?

祝部 小学生向けコースでは学習を習慣化することを重視しているという話がありましたが、中学生向けコースでも、まさに同じところをめざしていきたいと思っています。その時々の忙しさに応じて演習問題の分量を変えられる機能や、1年間で最もモチベーションが高い春先に、取り組み意欲を高めるイベントを学習アプリ内に設けたりして、学習の習慣化を促しています。また、一定のペースで学習を進めることが難しい場合にも、状況に応じて優先して学習する単元を選べるようオープンカリキュラム(中学3年分の全単元を公開し、受講者が任意で学ぶ単元を選択できる仕組み)にして、学習ペースを調整できるようにしています。

──では最後に、保護者の皆さまにメッセージをお願いします。

鈴木 中学生になると、勉強の進度も速くなりますし、学習内容も深くなっていきますが、小学生の間に家庭学習の習慣をつけていただければ、まったく怖いことではありません。一つ、残りの期間で取り組んでいただきたいことを挙げるとすると、お子さまが自ら問題を解き、間違ったところは解説を読んでその間違いの原因を確認する習慣をつけていただくことです。理科や数学など積み重ねが重要な教科はもちろん、どの教科も理解不足を解消して次に進むことが大切だからです。
祝部 教科書で学ぶ知識と知識の繋がりがわかって初めて、知識は活用することができます。その知識を活用する力を発揮する世界が、中学、高校、大学、その先へと進むにつれてどんどん広がっていきますし、具体的な世界から抽象的な世界へといった変化もあります。中学では、実社会との繋がりを感じる学びがどの教科にもあります。例えば、理科や社会、数学には日常で活用できる学びがありますし、英語も、外国の方とのコミュニケーションツールとして実践的な学びもしていきます。そうして世界が広がっていく学齢ですから、ぜひ教科書的な学習をするだけでなく、Z会の教材を使って知識を繋げて活用することや、教科書の少し先を行く学びを体験していただきたいと思います。私たちも、より深い学びができるよう教材を作っていきます。
鈴木 「解きごたえがある難しい問題だけどおもしろいな」と思ってもらえるように工夫を凝らしているところは、どちらのコースも共通するところだと思います。おもしろがって楽しく勉強する姿勢が身につくと、この先もさまざまなことを自ら勉強できる子どもになっていきますので、中学に進んでも、ぜひ「なんでもおもしろがる」姿勢で勉強していただけるといいなと思います。

──ありがとうございました。

中学生向けコースでお待ちしています

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