イカとタコ、あるいは、会話劇

出たばかりの新刊から保護者にも懐かしい名作まで、児童文学研究者の宮川健郎先生が、テーマに沿って子どもの本を3冊紹介していきます。 
今月のテーマは【イカとタコ、あるいは、会話劇】です。

 

『いかあげ たこあげ』中面画像
『いかあげ たこあげ』より

「おーい、そこのイカ、たこを おろせ! 
たこあげ するな」
「たこあげ? これは いかあげ ですよ」
「いかあげ? どうみても たこあげ じゃないか」

 

今日(きょう)はどう? あれ()ってくれこれ()ってくれって()わない、いい()じゃない?」
「まあまあまあ、いい()だな」
「そう。じゃあどうでしょう、そこでひとつ提案(ていあん)です。いい()(きん)ちゃんに(なに)かごほうび」
「それがいけねーんだよ、お(まえ)は!」
「あ、飴屋(あめや)さんが()てる」

 

「きょうは おかしな いちにちだったよ。
かいしゃに いくとちゅう そらを みあげたら
おおきな おおきな くもが あったんだ」

 


 

『いかあげ たこあげ』書影

『いかあげ たこあげ』
作/高畠じゅん子、絵/高畠 純 
偕成社、2024年 
カバーの袖に「イカとタコの「たこ」をめぐるナンセンスな会話劇。」と記されている。この絵本だけではなく、今月の3冊は、みな会話劇だ。

 

『春風亭一之輔のおもしろ落語入門』書影

『春風亭一之輔のおもしろ落語入門』
落語 春風亭一之輔、画 山口晃 
小学館、2016年 
「初天神」をふくめ、当代一の人気真打ち、春風亭一之輔の語る落語七席が読める。「知っているとおもしろい 落語のしぐさ」のページには、「落語は、一人で何人もの人を演じ分けるため、話すときのしぐさにルールがあります。」として、「上・下を切る」などのイラスト入りの解説がある。

 

『ふしぎ ぞくぞく ぞくぞく かぞく』書影

『ふしぎ ぞくぞく ぞくぞく かぞく』
お話 大林 大、絵 かとうひろゆき 
ポプラ社、2024年 
CMの企画・制作者がお話を書き、アートディレクター/グラフィックデザイナーが絵を描いた絵本。会話劇は、だんだんこわくなる。

 

宮川先生プロフィール写真

宮川 健郎 (みやかわ・たけお)


1955年東京生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。同大学院修了。現在、武蔵野大学名誉教授。大阪国際児童文学振興財団理事長。『現代児童文学の語るもの』(NHKブックス)、『子どもの本のはるなつあきふゆ』(岩崎書店)、『小学生のための文章レッスン みんなに知らせる』(玉川大学出版部)ほか、著書・編著多数。

 

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