この春休み、お子さまの興味や関心のあるテーマの場所に行き“学ぶ”という、いつもの旅行に“学び”の要素を強めた、今までとは一味違う家族旅行に行きませんか。保護者の方が計画される家族旅行でも、もちろんお子さまは多くの“学び”を得ているはずですが、今回はお子さまの興味関心を中心にすえた「テーマ型旅行」をご紹介します。近場で日帰りでも構いません。お子さまと一緒に学びを深める旅行に出かけてみてはいかがでしょうか。
コツ1 旅行の前に、お子さまと一緒に旅行の計画を立てる
(1)旅行のテーマになりそうなお子さまが「興味があること」「もっと知りたい」と思うことを書き出す
「テーマ型旅行」とは、お子さまがその土地ならではの歴史・文化・風土に触れ、新しい経験をして視野が広がる旅行のこと。最初に旅行の目的やテーマをお子さまと一緒に考えるところから始めてみましょう。お子さまが興味をもったものに対する知的好奇心を刺激するような声かけをお願いします。お子さまの興味や関心はやる気につながり、さらに旅行先での行動が伴うことで経験と成長の機会になります。
「最近、おもしろいなと思っていることはなに?」などとお子さまに質問しながら、お子さまの興味や関心を探っていきましょう。

【お子さまの興味関心の例】
・6年生で地層というものを習うらしいけど、地層ってどんなものだろう?実際に見てみたいし、地層がどのようにできるのかをくわしく知りたい。
・大河ドラマで平安時代に興味をもったけど、源氏物語が書かれた時代の紙ってどうやって作るんだろう?
・住んでいる町にはお城(城趾)があるけど、その周りには昔なにがあったのか?お城ができた背景や歴史も気になる。
(2)選んだテーマに対して、どこで学べそうかを調べ、行き先を決める
(1)であげたテーマの中からとくに興味のあるものを選んで調べていきましょう。「この中でいちばんやってみたいものはなに?」などと聞いて、どこに行くかを最終的に決めて行きましょう。Webで調べる場合は、検索するワードの選択や調べ方を保護者の方がサポートしてあげてください。「〇〇という言葉で調べてみようか」「こういう場所があるらしいよ」などと、調べた内容からさりげなく提案してみるのもいいでしょう。
旅行と言っても、美術館や博物館、動物園や水族館などの施設や工場見学、古地図を片手に散歩、キャンプなどの日帰りでも十分です。大事なのは、お子さまが自分でどこに行き何をしたいかを考え、主体的に決めていくことです。お子さまが決めかねているという場合は、自分で考え、決めることができるようなサポートの声かけをお願いいたします。そのうえで、お子さまが興味がある場所に出かけることに加え、今はまだあまり興味がないようだけど、興味・関心を引き出せそうな場所を立ち寄り先として提案してみてもいいかもしれませんね。
(3)具体的な旅行の計画(スケジュール)を立てる
行き先が決まったら、地図で場所を確認しながら、具体的な旅行の計画(ルート、移動手段、立ち寄り先、宿泊先など)を決めていきましょう。Webサイトなどで調べながら、行き先の周辺で「どこにいちばん行ってみたい?」「次に行きたいのはどこ?」などと、優先順位をつけながら、旅行の計画を立てていきましょう。お子さまの年齢に応じ、できる範囲で一緒に計画を立てることで、自分で考える力や自分の意見を伝える力がついてきます。さらに、具体的なスケジュールを作ることで、「〇〇に△時までに着くためには、家から□□分くらいかかるから、×時ごろの電車に乗らないと」など、逆算して考える力も自ずと身につくはずです。
<スケジュール作成のポイント>
下記の質問をお子さまと共有して、一緒に調べながら大まかな旅行のスケジュールを立ててみましょう。
いちばん行きたい場所はどこか(地図で場所を確認しながら)。
そこで必ずやってみたいこと、見たいものにどのくらいの時間がかかりそうか。
そこまではどうやって行くのか(交通手段や経路)。家からどのくらいの時間がかかるのか。
目的地に何時に到着するのがいいか。逆算して、家を出る時間は何時がいいのか。
そこへの行きや帰りで、立ち寄りたい場所はあるか。
次に行きたい場所はあるか、それはどのくらい(距離・時間)離れているか。
日帰りで行けそうか。宿泊が必要か。
スケジュールはあまり細かく立てる必要はありません。目的地・ルート・時間が決まったら、メモ程度でのいいので調べたことを簡単にまとめておきましょう。
(4)チェックリストを作り、旅行の準備をする
旅行の計画が決まったら、旅行の準備としてやるべきことをお子さまと一緒にリストアップし、効率的な段取りを一緒に考え、準備していきましょう。お子さまと一緒に交通機関のチケットの手配や宿泊先の予約をしてみてください。これらはいわゆる「段取り力」をつけることにつながります。お子さま自身が自分で考えた計画に沿って準備を進め、実行していくという体験を通してしか学べないことがあります。時間がかかってしまうかもしれませんし、うまくできないかもしれません。しかし、そのような体験こそが次につながる貴重な学びになります。下記のチェックリストを参考にしながら、お子さまができる範囲で一緒に楽しみながらやってみてください。
【チェックリスト例】
◆1か月前までに準備すること
・体験や見学に予約が必要な場所の予約をする
・交通機関のチケットや宿泊先を予約する
◆1週間前までに準備すること
・必要な持ち物を書き出す
・現地で食べたいものやおみやげをリストアップしておく
(5)時間があれば簡単な「旅行のしおり」を作ってみる(旅行の計画をまとめる)
いつもの家族旅行をバージョンアップさせるために、手書きで構いませんので、できれば「旅行のしおり」をお子さまと一緒に作ってみませんか。表紙には(1)(2)の旅行先や旅行のテーマを書き、内面には(3)で考えた旅行のスケジュールを記入します。そして、裏表紙には(4)の旅行までに準備することなどを書いてみてもいいですね。さらに、行き先の歴史的な背景や自然環境、特産品なども調べて書いておくと、より旅行が充実したものになります。作った「旅行のしおり」は、ぜひ旅行当日に持っていってください。
コツ2 旅行中は、お子さまが主体性を発輝できるようにサポート
旅行中はお子さまに役割を与え、自分で答えを見つける経験を
①年齢にあわせて役割分担を
「テーマ型旅行」では、お子さまが自分で「どこに行き、何をするか」を決め、準備を進めることが重要になります。旅行中はお子さまの年齢やきょうだい構成に応じ、「旅行中の時間管理をする役割(時間管理リーダー)」、「旅行の写真を撮る役割(写真撮影リーダー)」、「購入するおみやげを選ぶ(おみやげリーダー)」など、任せられる役割を、与えてあげてください。お子さまが旅行中の何らかの役割を担うことで、主体性が発揮され、旅行をより創造的に楽しむことができるようになるはずです。

②自分の荷物の管理は自分で
お子さまがまだ小さい方は、保護者の方にサポートいただきながら、自分の旅行の荷物を準備してみましょう。旅先での荷ほどき、荷造りをお子さま自身で行うことは、主体性を養う良い機会になります。そして、旅行中は、ぜひお子さまの頑張りを認め、ほめ、励ますような声かけをしてあげてください。
③五感をフルに活用して楽しみ、疑問には自分で答えを見つける経験を
旅行中はお子さまが五感をフルに活用して旅行そのものを存分に楽しめるように、お子さまが気づいていない視点があれば、保護者の方がお子さまの視野を広げるような問いかけをしてあげてください。また、旅行中はお子さまの「なぜ?どうして?」という疑問を大切にし、わからないことは自分でパンフレットをもらって調べたり、地元の方に質問してみたりすることを促してください。自分の疑問に対して、自分で答えを見つけるという経験は今後の学習において必ず役立つはずです。
コツ3 旅行後には、お子さまと一緒に旅行を振り返ってまとめる
旅行を追体験。学びや気づきを見える化し、記録に残す
旅行後は、ぜひ家族で旅行を振り返り、旅行で新しく知ったことや興味をもったこと、またお子さまの頑張りを旅行の記録として残しておくことをおすすめします。旅行で自分の役割を果たし、「やればできる」という成功体験はお子さまの自信にもつながったはずです。また、旅行を振り返ることで、お子さまなりに「うまくいったことや、もっと〇〇すれば良かったこと」などに気づき、次の旅行に向けた改善点が出てくるかもしれません。

「家族旅行ノート」のようなものを作ってもいいですし、紙にまとめるのは大変という場合は、お子さまがタブレットをお持ちであれば、旅行の写真だけを集めたアルバムを作って、そこにキャプションを入れておくだけでもいいかもしれませんね。あとで見返すことができるように、現地でもらったチケットの半券やパンフレットなどをファイルに入れて整理しておくのもおすすめです。旅行を振り返り、記録に残すことで、お子さまが旅行から何を学び、何を得たかが見える化(言語化)され、自然と表現力や語彙力が養われるとともに、家族の大切な思い出の記録にもなります。
<振り返りのポイント>お子さまの旅行での学びを見える化するための問いかけ
下記に関連する問いかけをお子さまにして、旅行を通して感じたことや経験したことを自分の言葉で表現するサポートをしてあげてください。そして、自分の言葉で記録に残すように促してみてください。
- 「印象に残ったこと、楽しかったこと」(思い出)
- 「気づいたこと、初めて知ったこと、挑戦したこと」(学び・発見・体験)
- 「うまくいったことと、うまくいかなかったことや大変だったこと」(Good・Bad)
- 「もっと旅行を楽しむためにできること、次に行ってみたいところ」(改善・提案、次の挑戦)
家族旅行は、貴重な学びの機会であり、お子さまの成長を促す良い機会です。日常から離れ、新しい経験をすることで、お子さまの知的好奇心が刺激され、興味関心の幅が広がっていきます。旅行先での体験や食事、特産品などの記憶が、その地域の気候や自然、歴史、産業とつながることで実体験を伴う知識としてより理解が深まっていきます。
さらに、旅行のそれぞれの過程(旅行の計画を立てる→旅行に行く→旅行後のふり返りをする)で、「考えをまとめる力」「段取りを考える力」「感じたことを言葉にする力」などの「非認知能力」も磨かれていくことでしょう。この記事が、家族旅行の計画の参考となれば幸いです。
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