第45回 暗記科目ではない!理科という教科 ~小学6年生のあなたへ~

執筆者:坂巻健二(Z会進学教室 川越教室/理科科)
記事更新日:2022年03月25日

暗記科目ではない!理科という教科 ~小学6年生のあなたへ~

こんにちは。Z会川越教室の坂巻です。突然ですが、みなさんは、理科という教科に対してどんな印象をお持ちでしょうか。「難しい」「簡単」「面白い」「つまらない」理科ほどこの印象に個人差がある教科は無いのではないかと思います。その差の大きさが成績の差の大きさにつながりやすい所には注意が必要でしょう。

暗記教科じゃない

ウチの子は、「理科は好きじゃない」ようだけど「点数は取ってくるので心配していない」というケースもあるかと思います。しかし、そこには落とし穴があります。小学校の理科はほぼ暗記教科なので、覚えてしまえば点数は取れます。中学へ進んでも、しばらくその印象は変わりません。しかし、1年次の中盤で光や音の分野に入ると、高度な思考力や計算力が必要になり、様子は変わります。ただ、それでも学校のテストでは点数が取れ続けてしまう可能性があります。問題が簡単なため勘違いしていても正解出来たり、ワークの問題がほぼそのまま出てくるので覚えて対応出来てしまうからです。こうして、学校のテストでは点数が取れるのに、模試や塾の問題には歯が立たないという現象が起きます。この状況に気付くのが遅れると入試に間に合わなくなります。

どうすれば良いのか?

良問、難問にあたることで、自分の理解度を正しく判別できます。では、さっそく挑戦してみましょう。

問1;鏡に反射された光が進む方向には、下図のような性質があります。
( 入射角 = 反射角 )
これを踏まえて、以下の問題を考えて見ましょう。

Pから出て、鏡に反射し、Qにいたるまでの光の道筋を書いてください。
①は簡単なタイプです。勘違いをしていても何となく正解できます。
②は難しいタイプです。本質的な理解をし、正しい手法を用いなければ解けません。


問2;身長180㎝の人がいます。

①全身を写すためには、鏡は最低でもどれだけの大きさ(上下幅)が必要か。
(難しいですが、有名な問題なので、覚えていれば正解できます。)

②鏡の大きさが足りず、自分の上半身しかうつりませんでした。そこで全身を写そうと、姿勢を変えずに、鏡に近づいたり、離れたりしてみました。するとどうなるでしょうか。正しいものを選んでください。

A;鏡から離れると全身がうつった
B;鏡に近づくと全身がうつった
C;近づいても離れても全身がうつることは無かったが、うつる部位は変わった
D;近づいても離れても全身がうつることは無く、うつる部位も全く変わらなかった

(解答はページの最下端です。)

いかがでしたでしょうか。
②を理由まで正しく理解して解けるならば心配はありません。対して、①は勘違いしていたり、覚えていただけでも出来てしまいます。もし、学校で①のレベルの問題しか出ないならば、深く考えるよりは覚えてしまったり、簡単な手法で解いてしまった方が効率的なため、そういう習慣が身についてしまいがちです。ここで注意して頂きたいことは、「思考力は良い習慣によって身につき育つ、悪い習慣によって破壊される」ものだということです。

思考する習慣を大切にしてあげましょう

子供の思考力を育てるために周囲に出来ることは、子供の「なぜ?」を大切にしてあげることです。

例)子供「電子レンジでは、水はすぐに温まるのに、なぜ氷はほとんど温まらないの?」
良い対応:不思議だね、一緒に調べてみよう(最高です)
:なんでだろうね、理科の先生に聞いてみよう(これで良いです、プロに任せてください)
悪い対応:電子レンジってそういうものだからね(相手にしないのは良くありません)
:氷はとても冷たいからだよ(いい加減なことを教えるのは良くないです)

大人が自然現象や科学技術に疑問を持つことは難しいです。見慣れているためです。しかし、子供は違います。小さい子ほど、大人が困るような疑問を持ち、大人に聞いてきます。「なんで月は落ちて来ないの?」なんて聞かれても答えようがないと思います。困ったら学校や塾の理科の先生に丸投げして頂いて大丈夫です。ただ、その姿勢を大切にすることを伝えてあげて下さい。そして、自分で考える事、自分で調べる事を促せたら最高です。思考力は自然に育っていくでしょう。

暗記教科から思考力が大切な教科へ

理科は学年が進むほど、思考力が重要な教科になっていきます。さらに、時代の流れによっても、思考力の重視が進んでいます。センター試験が共通試験と名前を変え、理系を中心に難易度が大きく上がりました。基礎知識と解法のテクニックで対応出来てしまう問題から、本質的な理解や思考力が必要な問題へと変わったからです。高校入試でもその流れは強くなる一方で、「思考力を問う問題」を課す学校の数は、近年、難関校を中心に急激に増加しています。教育界の流れは、「詰込み型教育」への反省から「ゆとり教育」にすすみ、今は、さらにその反省を踏まえて「思考力を重視する教育」へと進んでいます。この流れはしばらく続き、入試はどんどん変わっていくでしょう。

一般常識のある人間になって欲しい

今や、SNSを通じて誰もが発信者になれるため、世界は真偽の定かでない情報で溢れかえっています。特に問題だと感じるのは、科学の知識や思考力の不足に付け込んだ詐欺やデマが、社会問題を引き起こしていることです。特に環境や健康に関するものは深刻な問題を引き起こしかねません。中学レベルの理科で真偽が分かる詐欺やデマも少なくありませんが、そのようなものでさえ横行している現状があります。受験に必要であることはもちろんですが、それ以上に、将来、自分の意志で正しい判断、選択が出来るように、中学校の理科を正しい姿勢でしっかり学んで欲しいと思うのです。


解答 問1

問2 ①90cm(身長の半分) ②D

この記事の著者

坂巻健二(さかまき・けんじ)

千葉県生まれ、千葉県育ち。公立高校で18年間教員をしていました。現在は川越教室で理科を担当しながら個別指導の業務に携わっています。理科の授業を通して、入試にも将来に生きる思考力を育みたいと思っています。公立高校勤務の経験を活かし、入試や高校のリアルを伝えていきたいです。

川越市の学習塾・個別指導塾「Z会川越教室」

 

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