第80回 「やる気」の出し方、教えます。 ~小学6年生のあなたへ~

執筆者:鈴木亮介(Z会進学教室 調布教室長/国語科)
記事更新日:2023年08月07

「やる気」の出し方、教えます。

今回はZ会進学教室で国語や作文の授業を担当している鈴木(調布教室長)よりお話しします。まず前提として、私としては「やる気に依存せず仕組みで解決できる方法」を普段の授業や面談ではお伝えしていますので、「やる気を出す」こと自体にそこまで意義を感じていません。

ただ、そうは言ってもやる気がないよりはあった方がうまくいくことも多いと思いますので、今回は「やる気を上げる方法」というテーマでお話しします。

 

「やる気の出し方」を科学的に考える

ハックマンという心理学者が唱える「職務特性論」によれば、人の内発的動機づけ、仕事の質、満足感を高める要因は「多様性」、「完結性」、「有意義性」、「自律性」、「フィードバック」の5点で、特に「自律性」と「フィードバック」のウェイトは大きいと言われています。細かく見ていきましょう。
・「多様性」=多様な技能が求められること
・「完結性」=最初から最後まで関われること
・「有意義性」=結果が組織内外に大きな影響を与えること

これらを勉強に置き換えると、「多様性」=すなわち、単純作業や既に習得したことの連続ではモチベーションは高まりません。こんなことに意味があるのかなと思える勉強は、モチベーションを高めてくれません。

一方、「完結性」=途中で投げ出さざるを得ない膨大・難解なタスクはモチベーションを下げる恐れがあります。

「有意義性」=「○○を暗記する」といったこと自体に意義を感じるのは難しいでしょうから、それを手段と割り切ったうえで、その達成の先にどんな有意義なことが待っているのかを想像すれば良いと思います。

「自律性」=どのようなものであれ、やらされていると思いながら取り組んだり、分量・予定を自分でコントロールできないものはストレスになります。ただ、ここで注意したいのは「コーチ(授業・先生)の言うことは無視して自分でプランニングした方が良い」ということではありません。我流で突き進むがために成績が伸び悩むことも、アンコントロール(制御できない)状態となり、「やる気」は減退の一途でしょう。

「フィードバック」=成長を実感できるものは、周囲の人からの声掛けだったり、模試など客観的指標だったり。テストは常に前に進むための指標であり、過去に縛られるためのものでも他律の道具でもありません。

「やる気はあくびのように伝播する」→集団授業の意義

さてこのように見ていくと、「有意義性」、「フィードバック」の2点では特に、外部環境が果たす役割が大きいことが分かります。素晴らしい師との出会いで新たな視点を獲得することもできますし、集団の中で互いに刺激を受け合い、高め合うこともできます。

一方で、集団というのは掛け合わせの妙により、一人では到達しえないところに辿り着けるというミラクルもあれば、掛け算の失敗により、望まない空気が増長することもあります。よく言われる「割れ窓理論」です。何となく諦めモードが漂っているチームには個々のやる気を下げる低気圧が生まれますし、誰かが椅子のシートをはがしていたら何となく他のシートも誰とはなしにはがされ、ぼろぼろになっていく(心底、やめていただきたい…)

ですから、やる気がある人の近くに身をおくだけでも、やる気を出しやすくするのだと思います。自宅で一人でやる気を出すことが難しいと思ったときには、一生懸命勉強を頑張っている人が周りにいる塾の自習室に足を運び、席に座るだけでも、魔法のようにやる気がわいてくる…かもしれません。(個人差はあります)

「熱い青春」と「ゆるい青春」を傍らに

「自習室には来てみたが、やる気なんて出ないじゃないか」と思ったそこの君へ。ここで大切なことはやはり、「この環境にさえ身を置けばどうにかなるだろう」という他律的な姿勢を改めることでしょう。高校入試とは端的に「いい環境(理想とする環境)に身を置きたい」ということではなく「自分が○○をできる環境を選ぼう」ということで、もっと言うと「その環境を作る一員になろう」と主体的に参加することで、初めて他者・外部環境からのメリットを享受できるのだと思います。

人の生きるモチベーションとは「熱い青春」と「ゆるい青春」だと言われます。困難に挑戦する「熱さ」と、友人とだらだら談笑したりボーっと空を眺めたりする「ゆるさ」の共存。その「熱さ」がひとえに場づくりであり、そうしてできた場には「ゆるさ」も生まれます。「ぬるま湯」が冷めないためには、時々の熱さが必要となります。「やる気スイッチ」というのは言い得て妙だなと思いますが、「熱さ」を求めるとき、自然とスイッチが入るのだろうと思いますし、常にONである必要もない。必要になったときに、意識すれば良いのです。

集団の中に熱さを求めることも、一歩引いた安全な場所にクールダウンできる場所を確保すること、どちらも選ぶことができますし、失敗を恐れて慎重にならず、選んで飛び込んで掻き回されているうちに自然と主体性を手にしていることもありますよ。

この記事の著者

鈴木亮介(すずき・りょうすけ)
2013年よりZ会進学教室にて中学生の国語、小6公立一貫校受検コースの文系を担当。立川教室や池袋教室を中心に数多くの6年生の作文指導に携わり、南多摩中、立川国際中、大泉中などの合格者を輩出。2016年よりZ会に入社し、同年より調布教室の教室長を務めるほか、国語科の一員として校正業務、冬期講習単科ゼミ「西の作文」の講座設計・教材作成も担当。肥薩線の三段スイッチバックのごとく「地味にすごい」をモットーに教壇に立つ。

 

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