仕上がりに差が出る! ポテトサラダのコツ

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

 

少しの工夫でポテトサラダをもっとおいしく!

夕飯の副菜に、晩酌のおつまみに、大人から子どもまでみんなが大好きなポテトサラダ。メインにはならないけれど、あると嬉しい名脇役です。具材や味付けは家ごと、店ごとに違いますが、どんなレシピでも「好みの具合にじゃがいもをつぶし、マヨネーズで和える」はおおむね共通しているのではないでしょうか。実はこの「つぶす」「和える」のタイミングに、おいしく作るためのコツがあります。

野菜の下ごしらえも大切です。それぞれの具を加熱したり塩もみしたりするのは面倒ですが、仕上がりに影響するひと手間です。なるべく労力を少なくする工夫をしつつ、要点を押さえて下ごしらえをしたいですね。

 

じゃがいもはたくさんの細胞が集まってできていて、細胞と細胞がペクチンという成分で接着されています。 これを加熱すると、ペクチンが分解されて水に溶け、細胞同士がはがれやすくなります。 じゃがいもをゆでるとやわらかくなるのはこのためです。

ゆでたての熱いうちはペクチンによる接着がゆるく、マッシャーやヘラで押すだけで簡単に潰れるのですが、冷めると徐々にかたくなり、熱々のときに比べると細胞同士がはがれにくくなります。これを無理に潰そうとすると、細胞の膜が破れ、中身が流れ出してしまいます。じゃがいもの細胞内にはデンプンが貯め込まれていて、これが細胞外に出てくるため、糊のようにベタベタとした食感になってしまうのです。熱いうちに潰せば、少ない力で簡単に潰れ、デンプンの流出が抑えられるため、さらりとした食感に仕上がります。

じゃがいもを熱いうちに潰したら、人肌程度まで粗熱をとってからマヨネーズを加えましょう。マヨネーズの主な材料である酢と油は本来混じり合いません。これを卵黄に含まれる成分が取り持つことで、酢と油が混じり合ったような状態になっています。これを乳化と言います。温度が高いと、この乳化状態が崩れて油が分離しやすくなるため、仕上がりが油っこくなってしまうのです。

 

材料(2〜3人分)

  • じゃがいも(中) 2〜3個(350g程度)
  • 玉ねぎ 1/8個(25g程度)
  • きゅうり 1/2本(50g程度)
  • にんじん 1/4本(40g程度)
  • ハム 2枚
  • 卵 1個
  • レモン汁 小さじ1/2
    (なければお酢で代用してもOK)
  • マヨネーズ 大さじ3(36g)
  • 塩、胡椒

1.じゃがいもをゆでる

じゃがいもは皮をむき、2cm厚さの半月切りまたはいちょう切りにして5分程度水にさらす。水気を切って鍋に入れ、かぶるくらいの水を加える。水の1%量の塩(水500mlに対して塩小さじ1程度)を加えて火にかける。沸騰したら弱火にして、串がスッと通るくらいにやわらかくなるまでゆでる。
ゆであがったらゆで汁を捨てて再び火にかけ、ときどき揺すりながら、粉ふき芋の要領で水気を飛ばす(焦がさないように注意する)。水気が飛んで粉がふいたら、熱いうちに好みの粗さにつぶし、冷ましておく。


2.具の下ごしらえをする

<卵>
卵はかたゆでにする(水からゆでて沸騰後10分ゆでる または 沸騰した湯に入れて12分ゆでる)。ゆであがったらすぐに流水で冷やし、殻を剥いたら7mm角に切る。

<にんじん>
薄い半月切りまたはいちょう切りにして電子レンジ加熱可能な容器に入れる。水大さじ1(分量外)を加え、全体に水をなじませたらラップをして電子レンジ600Wで1分半加熱する。<玉ねぎ>
みじん切りにして電子レンジ加熱可能な容器に入れる。ラップをして電子レンジ600Wで1分間加熱する。

<きゅうり>
薄切りにして塩をひとつまみ加え、軽く混ぜてなじませる。5分ほど経って水気が出てきたらよく絞る。
または、沸騰した湯で2分間ゆで、水にとって粗熱をとる。薄切りにしてよく絞る。<ハム>
5mm幅の短冊切りにする。


3.和える

じゃがいもの粗熱が取れたら、2の具材の水気を切って加える。マヨネーズ、レモン汁、塩と胡椒少々を加えてざっくりと混ぜ合わせる。

 

じゃがいも以外の野菜も、あらかじめ加熱するか塩もみをしてから加えると良いでしょう。生の野菜が塩分に触れると、浸透圧によって水分が出てきます。そのため、塩分を含む調味料で生野菜を和えて置いておくと、出てきた水分で仕上がりが水っぽくなってしまうのです。ポテトサラダのように、調味料で野菜を和えてなじませる料理では、塩もみで水分を抜いておくか、加熱して浸透圧がはたらかないようにしておくと、時間が経ってもおいしく食べられます。

例えばにんじんは、さっとゆでるか電子レンジ加熱をしておきます。にんじんのように水分の少ない野菜は、電子レンジ加熱で端が焦げやすいので、少量の水を加えておくと上手に加熱することができます。玉ねぎは、風味を活かすなら塩もみが良いですが、辛味が気になる場合は電子レンジで加熱すると甘くなり食べやすくなります。

きゅうりは塩もみをするのが一般的ですが、ゆでてから薄切りにするという方法もあります。じゃがいもをゆでている鍋に半分に切ったきゅうりを入れて2分程度ゆでてみてください。水にとって粗熱を取り、薄切りにして手でぎゅっと絞ってから使います。


次回は「ヨーグルトと重曹を使ったパンケーキ」について、科学的な要素に焦点を絞って解説いたします。どうぞお楽しみに!

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)


科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

 

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