【自由研究にも!】ヨーグルトの力でふっくら!重曹ホットケーキ

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

 

化学反応の力でふっくらホットケーキを作ってみよう

みかんのシロップ漬けやどら焼きなど、この連載でもときどき登場する「重曹」。レシピを試してみようと買ったはいいものの、ほかにどんな料理に使ったらいいかわからないという人もいるのではないでしょうか。

そこでおすすめしたいのが、重曹をベーキングパウダーの代わりに使うこと。 お菓子作りでしばしば用いられるベーキングパウダーは、重曹に酸性の物質を加えたものです。重曹は、どら焼きのようにそれ単体で生地を膨らませることもできますが、酸性の材料を加えると、より膨らみやすく扱いやすくなります。

今回は、酸性の材料としてヨーグルトを使用し、重曹で作るホットケーキのレシピを紹介します。夏休みの自由研究テーマとしてもぜひご活用ください。

 

お菓子などの生地を膨らませる方法はいろいろありますが、中でも手軽なのが化学反応を利用したものです。その基本となるのが重曹。重曹は別名「炭酸水素ナトリウム」で、化学式で書くと「NaHCO3 」となります。これに 熱を加えると下記のような反応が起こり、CO2 、つまり二酸化炭素のガスが発生します。これが細かい気泡となり、生地を膨らませるのです。

ここで問題となるのが、同時に発生する炭酸ナトリウム(Na2CO3)です。この物質には独特の風味や苦味があるので、作るお菓子によっては味や香りの邪魔をすることがあります。また、炭酸ナトリウムは強いアルカリ性で、小麦粉に含まれるフラボノイドを黄色く変色させてしまいます。生地が黄色っぽくなるため、真っ白に仕上げたいお菓子などには不向きです。

なお、お菓子の焼き色に関わるメイラード反応はアルカリ性でよく進みます。したがって、どら焼きなどのお菓子の場合、短い焼き時間でこんがりときれいな焼き色がつくというメリットもあります。

さて、重曹に酸性の物質を加えるとどうなるでしょうか?常温のうちから反応がはじまり、生じる成分も変わります。たとえば、ヨーグルトを重曹に加えると、ヨーグルトに含まれる乳酸(CH3CH(OH)COOH)によって次のような反応が起こります。反応によってできる乳酸ナトリウム(CH3CH(OH)COONa)は中性に近く、味やにおいにも影響が出ません。

また、式を見比べてみると、①の式では重曹2分子に対して二酸化炭素1分子が発生していますが、②では重曹1分子に対して二酸化炭素1分子が発生しています。酸を加えた②の反応では、同じ量の重曹で2倍のガスを発生させることができるというわけです。 乳酸以外の酸でも、同様の反応が起こります。

たとえばベーキングパウダーには酸性の材料(酸性剤)として酒石酸やクエン酸などが用いられています。重曹にこれらの酸性剤を適量配合しておくことで、生地に混ぜ込むだけで効率的にガスを発生させ、生地を膨らませることができるのです。

重曹をベーキングパウダーの代用として使う場合、重曹の使用量はベーキングパウダーの約半分が目安です。ベーキングパウダー6gを使うレシピでは重曹3gで代用し、水や牛乳の一部を、ヨーグルトや酢、レモン汁など酸性の食材で置き換えます。

 

材料(3〜4枚分)

  • A 薄力粉 120g
  • A 重曹 3g
  • B 卵 1個
  • B 砂糖 20g
  • B プレーンヨーグルト(無糖) 100g
  • B 牛乳 60g
  • B サラダ油 大さじ1(12g)
  • バター お好みで
  • はちみつやメープルシロップ お好みで

1.粉をふるう
Aの粉類を合わせてふるっておく。


2.材料を合わせる
ボウルにBの材料を入れて泡立て器で混ぜ合わせる。
1を入れて泡立て器でさっくりと混ぜる(少しダマが残る程度でOK)。

3.フライパンを温める
熱したフライパンに油を薄くひき、キッチンペーパーで拭き取る(テフロン加工の場合は油不要)。
濡れ布巾の上で少し冷ます。


4.焼く
生地をおたま1杯分流し入れ、弱火で3〜4分焼く。
(少し高いところから一点に向かって流し入れると、自然に丸く広がります)
表面にぷつぷつと小さい泡が出てきたら裏返し、蓋をして約3分焼く。
取り出したら3〜4を繰り返して残りの生地を焼く。

お好みでバターをのせ、はちみつやメープルシロップをかけて食べる。

 

重曹と酸性の食材を組み合わせ、ベーキングパウダーと同じような反応を起こしている例はほかにもあります。

たとえば、宮城県や岩手県の郷土料理「がんづき」や鹿児島県の「ふくれ菓子」は、小麦粉や卵などを混ぜて作る蒸しパンのようなお菓子。どちらも重曹とお酢を使って生地を膨らませています。

アイルランド発祥の「ソーダブレッド」は、イーストを使わず重曹(ソーダ)を使って膨らませたパンで、バターミルクを加えて作ります。バターミルクは発酵乳の仲間で、ヨーグルト同様に乳酸を含んでいます。パンケーキやスコーンにも重曹とバターミルクが使われることがあります。バターミルクは日本では手に入りにくいので、ヨーグルトで代用したり、酢と牛乳で代用したりすることもあるようです。

ベーキングパウダーの方が身近で使いやすいため、最近では重曹をベーキングパウダーに置き換えたレシピも増えていますが、重曹を使って昔ながらの作り方に挑戦してみるのもいいですね。


次回は「しゃぶしゃぶをよりおいしく食べるためのコツ」について解説いたします。どうぞお楽しみに!

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)


科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

 

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