お子さまの志望校を考えるにあたって、大学附属校を中心に検討されている方もいらっしゃると思います。ひと口に「大学附属校」といっても、その教育内容や進学状況はさまざまです。今回、ご紹介する附属校の分類から、「こういう附属校を選ぼう」「このタイプの附属校なら考えてみよう」のように、お子さまに合った附属校を検討していただければと思います。
大学附属校の進学状況
大学の附属校といっても、高校から系列の大学へ進学する生徒の割合は、学校によってさまざまです。今回の受験サポートでは、系列大学への内部進学率が7割を超える学校を純粋な附属校、4~6割の学校を半附属校、3割未満の学校を進学校と分類してご紹介します。
附属校なら大学受験がなくそのまま大学に進める、というイメージをもっている方もいらっしゃるかもしれませんが、進学のしくみは学校ごとに異なります。系列大学に進むには優秀な成績が必要だったり、成績によって進学できる学部・学科に制限があったりする学校も少なくありません。また、系列大学への特別な入学枠がない学校も存在します。附属校に行けばエスカレーター式に大学に行けるとは限らないのです。
附属校の受験をお考えであれば、学習カリキュラムなどに加え、上記の附属校のタイプを把握して、系列大学への推薦枠や推薦される要件、また、ほかの大学を受験することになった場合に協力してもらえるか否かなどを確認することが必要です。
内部進学率が7割を超える純粋な附属校
純粋な附属校はほぼ全員が系列の大学に進学します。そのため、大学受験を想定したカリキュラムが組まれていない学校も少なくありません。大学受験がない場合は、主要5教科以外にも校外学習や自由研究など、多彩な学習にゆとりをもって取り組むことができます。
中・高そして大学の長い期間を仲間とともに過ごすことで、友情や先輩後輩の絆を深められるのも、純粋な附属校ならではのメリットです。また、最近は、高大連携が増えるなか、大学の講義が聴講でき、さらにそれが系列大学進学後に大学の単位として認定される、大学生がクラブ活動を指導してくれる、といった学校もあるようです。
純粋な附属校でも他大学を受験できるケースが増えていますが、他大学に出願すると系列大学への推薦はなくなることが多いです。しかし最近では、系列大学にない学部・学科を受ける場合には推薦を保持でき、万が一他大学受験に失敗した場合には系列大学への進学が保証されている学校もあります。純粋な附属校でも、大学進学に関して柔軟に対応する傾向が広まっているのです。
純粋な附属校の例
学校名 | 系列大学名 |
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青山学院大学 |
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慶應義塾大学 |
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日本女子大学 |
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立教大学 |
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中央大学 |
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明治大学 |
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早稲田大学 |
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関西学院大学 |
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同志社大学・ 同志社女子大学 |
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立命館大学・ 立命館アジア太平洋大学 |
注 系列大学は四年制大学のみを掲載しています。
※ 慶應義塾の普通部・中等部は、系列の各高校を経て慶應義塾大学に進学します。
※※ 早稲田大学高等学院中学部は早稲田大学の附属校、早稲田実業学校中等部は早稲田大学の系属校です。
系列大学にも他大学にも進学できる半附属校
半附属校は、内部進学する生徒も多くいながら、他大学進学にも力を入れている学校です。進路の多様性を求める声が高まっているため、進学校的な要素を取り入れる学校が増えてきたのです。附属校のゆとりある校風のなか、他大学進学も見すえた確たる学力もつけられる特徴があります。
純粋な附属校との大きな違いはカリキュラムと進路選択です。カリキュラムが受験も考慮して立てられているので、中高6年間のなかでお子さま・ご家庭の意向が変わって他大学を考えたときにも、十分対応できるメリットがあります。ただ、進学実績では他大学進学者が多くても、実際の雰囲気は内部進学の意識が強く、他大学志望者は各自で努力している場合もあります。また他大学を受験する際は、系列大学への推薦を辞退しなくてはならない学校もあります。そのため、進路の実績だけでなく、どのような進路指導がなされているかなどを調べておく必要があります。
従来の附属校が進路の多様性に対応していくのに加え、大学が特定の中高一貫校と提携するケースもあり、今後半附属校に属する学校が増えて行くことが予想されます。
半附属校の例
学校名 | 系列大学名 | 内部進学率 (2024年度 ※) |
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学習院大学・学習院女子大学 | 約54% |
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学習院大学 | 約60% |
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立教大学 | 約59% |
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早稲田大学 | 約48% |
注1 系列大学は四年制大学のみを掲載しています。
注2 内部進学率は各学校の公式Webサイトによります。
※ 2025年3月の卒業生。
※※ 早稲田中学校は早稲田大学の系属校です。
他大学進学実績が高い進学校
今回、附属校のなかで進学校と分類したのは、系列の大学がありながら内部進学者があまり(学校によってはほとんど)おらず、大多数の生徒が他大学を受験する学校です。そもそも、系列大学への推薦の数があまりない学校や、全くない学校もあります。附属でない学校とほとんど変わらず、大学受験を前提としたカリキュラムを組んでおり、主要5教科を中心に教科学習に力を入れている学校が多いのが特徴です。一方で、大学の教員・学生との交流がある、大学の施設を使えるといった附属校としてのメリットも残しています。
ほとんどの学校では、一般の進学校と同じく、学年が進むにつれて進路別のコースや授業を用意して受験に備えますが、なかには他大学進学者が多いにもかかわらず受験対応をとらずにゆとりある教育を行い、生徒が各自で受験準備を進めていく学校もあります。
進学校の例
学校名 | 系列大学名 |
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大妻女子大学 |
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神奈川大学 |
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共立女子大学 |
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東邦大学 |
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芝浦工業大学 |
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淑徳大学 |
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東洋英和女学院大学 |
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白百合女子大学 |
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武蔵大学 |
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フェリス女学院大学 |
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東海学園大学 |
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神戸海星女子学院大学 |
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四天王寺大学 |
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久留米大学 |
注 系列大学は四年制大学のみを掲載しています。
※ 湘南白百合学園中学校は白百合学園の姉妹校です。
ご紹介してきたように、附属校といっても系列大学への進学のしくみや進学率、また他大学進学への対応は、学校によりさまざまです。「附属校」というイメージでくくってしまわず、個々の学校のカリキュラムや教育制度、進学実績を確認することで、よりお子さま・ご家庭に合う学校を見つける一助としてください。
次回「受験サポート」は10月9日(木)更新予定です。