飴色玉ねぎから作るオニオングラタンスープ

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

 

飴色玉ねぎを上手に作るコツ!

オニオングラタンスープは、じっくり炒めた玉ねぎの甘みと香ばしさが魅力。玉ねぎというオーソドックスな素材にひと手間かけることで、特別感のあるごちそうメニューに仕上がります。

「でも、家で作るのはちょっと大変そう…。」そんなイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。たしかに、飴色玉ねぎを作るのには少し時間がかかりますが、つきっきりになる必要はないので、他の作業と並行して作ることもできます。出来上がった飴色玉ねぎは冷凍できるので、まとめて作り置きしてもいいですね。玉ねぎが飴色に色づいたら、あとはコンソメスープを加えて器に盛り付け、オーブンで焼くだけ。

今回は、飴色玉ねぎを作るコツについて、科学的に解説します。クリスマスのディナーに、ほかほかの温かいオニオングラタンスープはいかがですか?

 

玉ねぎをバターで炒め続けると、徐々に褐色に色づいてきます。これは、材料に含まれる糖とアミノ酸またはタンパク質が「メイラード反応」という複雑な反応を経て、褐色の色素とさまざまな風味の成分が生じるためです。メイラード反応は、肉やパン、焼き菓子などが焼けるときの焼き色や香ばしいにおいを生み出す現象としてよく知られています。いわゆる「焦げ」や、砂糖を加熱してプリンのカラメルを作るときの「カラメル化」とは異なる現象です。

玉ねぎを炒めると細胞が壊れ、細胞内に蓄えられていた糖分が水分とともに流出します。これが、玉ねぎ自身やバターに含まれるアミノ酸やタンパク質とメイラード反応を起こし、褐色の色素とともに、複雑で食欲をそそる香りが生まれます。

メイラード反応は温度が高いほどよく進みます。弱火でじっくり炒めると、玉ねぎの温度は比較的低くなるので、焦げにくい反面、メイラード反応もゆっくり進みます。玉ねぎ2個が飴色になるのに1時間ほどかかりますが、頻繁に混ぜなくても焦げにくいので、サラダを作ったり、洗い物をしたり、他の作業をしながら作る余裕があります。むしろ、混ぜすぎると温度が下がって色づきにくくなるので、片手間に作るくらいが丁度良いでしょう。

一方、急いで作りたい場合は、中火〜弱めの中火で炒めましょう。温度が上がりすぎると焦げてしまうので、こまめに混ぜながら炒めます。メイラード反応が進んでしっかり色づくよりも早く、水分が蒸発してチリチリになってくるので、ときどき小さじ1〜2程度の水を足します。ただし、水を足しすぎると温度が下がり、色づきにくくなるので注意が必要です。

 

材料(4人分)
<飴色玉ねぎ>

  • 玉ねぎ 2個
  • ニンニク 1片
  • バター 30g
  • 塩 少々

<スープ>

  • 顆粒コンソメ 小さじ4
  • 水 600ml
  • 塩、胡椒 少々
  • バケットの薄切り 4枚
  • ピザ用チーズ 20g

1.野菜を切る
玉ねぎを薄切りに、ニンニクをみじん切りにする。


2.炒める
鍋に1とバターを入れ、塩少々を振って弱めの中火で炒める。

<じっくり炒める場合>
玉ねぎから水分が出てしんなりしてきたら、弱火にし、ときどき混ぜながら飴色になるまで1時間ほど炒める。

<手早く炒める場合>
焦げないようにこまめに混ぜながら中火で炒める。玉ねぎの水分が飛んでチリチリになってきたら小さじ1程度の水(分量外)を足し、30~40分かけて飴色になるまで炒める。

※作り置きする場合は、手順2まで作り、小分けにして冷凍する。


3.スープにする
2に水600mlと顆粒コンソメを加えて煮立て、塩胡椒で味を調える。

4.オーブンで焼く
3を耐熱容器に注ぎ分け、薄切りのバケットとピザ用チーズをのせる。
200℃のオーブンで10分焼いて、チーズがこんがりとしたらできあがり。

 

飴色玉ねぎをもっと短い加熱時間で作りたい場合には、切った玉ねぎを一度冷凍・解凍してから炒めるという裏技があります。冷凍・解凍することで玉ねぎの細胞が壊れ、細胞内の成分が外に流出しやすくなります。

解凍した玉ねぎを鍋に入れたら、強めの火加減で水分を一気に蒸発させましょう。あとは、通常の作り方と同様に、火加減を調節しながら炒めていくと20分ほどで飴色に変化します。一度冷凍するので、トータルの所要時間はむしろ長くなるのですが、加熱時間は短縮されるので、人によっては負担が少なく感じられると思います。

さらに短時間で飴色にする裏技に「重曹を加えてアルカリ性にする」という方法もあります。メイラード反応はアルカリ性の環境下でより早く進むため、重曹で反応を加速させるというわけです。重曹の量は、玉ねぎ2個に対し小さじ1/8が目安で、10〜15分ほどで飴色に色づきます。重曹の苦味があるので、仕上げにレモン汁少々を加えて中和すると良いでしょう。

この方法で作る飴色玉ねぎは、簡単である一方、他の方法に比べると味が今ひとつなのが難点。カレーのコク出しなど隠し味に使うのがおすすめです。


次回は「台湾料理 シェントウジャン」について、解説いたします。どうぞお楽しみに!

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)


科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

 

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