子どものやる気を引き出すコツ

子どものやる気を引き出すコツ

春から1年生になったり、新しい習いごとを始めたり、受験モードに切り替えたりして、生活が一新するお子さまも多いのではないでしょうか。
それに伴ってこの時期は、「もう○年生なんだから、自分で身の回りのことをさせる!」といった決意の言葉が、保護者の方から聞こえます。でも一方で、「去年もおんなじことを言っていたのよね」の声も……。どうしたらお子さま方のやる気を育て、自立につなげることができるのでしょうか。
子どもの自立をうながすコミュニケーションプログラム「ことばキャンプ」を主宰し、「親子コミュニケーション」「ことば力」「自立」をテーマに、全国で講演や研修をされている高取しづかさんにお話をうかがいました。(取材・文 松田 慶子)

※本記事は、2023年2月23日に「Z-SQUARE」上で掲載した記事を一部修正の上、再掲しています。

 

保護者の働きかけがやる気を引き出す 先回りせず、でも手間はかけて

――そもそも、大人の働きかけしだいで、子どものやる気は育つものなのでしょうか。

そうですね。ただわたしはやる気や意思や可能性は、子どものなかにすでにあるものだと考えています。だから育てるというより、子どもから引き出す、子ども自身に気づかせるというほうが適当だと思います。

よく「ダメじゃない」「早くしなさい」など否定や指示の言葉を言っていませんか。「〇〇ができていない」「〇〇しなさい」という言葉は一方的なので、子どものやる気はなかなかでてきません。

――確かに、そうかもしれません。

子どもの評価は保護者の評価であると考えられがちです。子どもの失敗は保護者の失敗……。保護者は大変なプレッシャーを抱えているように思います。わたしもそうでしたが、子どもに失敗させまいと、つい先回りして指示してしまいますし、失敗しそうになると「ダメでしょ」と言ってしまうのです。

――なぜ、先回りするのはダメなのでしょうか。

自分で考える力が育たなくなってしまうからです。「今日は学校に何を持って行くんだっけ」と考える前に、「ほら、プリントを忘れちゃダメでしょ!」と差し出されては、考えて準備する経験ができません。先回りをすることは失敗するチャンスを子どもから奪ってしまうのです。もしかしたら忘れ物をして注意をされるほうが、子どもにとって大切な気づきの機会になるかもしれないのに。

――でも、忘れ物をさせるのは……。

そうですよね。先回りして指示するのではなく、持ち物の準備のしかたを丁寧に教えて習慣になるまでつきあうことが大事なんです。 意外かもしれませんが、私の住んでいたアメリカの地域では中学生まで、学校の持ち物を揃えたか、連絡帳に親がサインしていたんですよ。自立を急がせるのではなくて、ゆっくり身につけさせていこうという考え方でした。

――丁寧に教えるのは、なかなか大変そうです。

たしかに、丁寧に教えたり、できるまで待ったりするのは努力がいりますね。日本に来たオーストラリア人女性が、使ったバスタオルを放ったらかしにしていた子どもに、お母さんがガミガミ言いながらも結局は片づけてあげる様子を見てビックリしていました。

彼女は「あなたが使うものなんだから、自分で片づけるのはあたりまえ」と根気強く伝え、自分でやるまで待つとのこと。自分でやるのがあたりまえになれば習慣化し、結局後でラクになるのです。

 

まずはやるべきことのリストアップから ○年生だから、と枠にはめないこと

――では具体的に、やる気を引き出す方法をお教えください。

家庭ですぐできることとして、①やるべきことの見える化、②できたことをほめる、③しからずに具体的・前向きに伝える、この3つをあげることができます。

それぞれの進め方は後述しますが、3つを実践するうえで心掛けてほしいことがあります。

まず、「もう〇年生なのだからこうあるべき」と枠にはめないこと。子どもの成長は個人差がとても大きいし、何年生であっても、できないことがあるならやり方を教えればいいのです。また、言葉だけで子どもをコントロールしようとしないこと。一緒に手を動かしたり、そばにいて見守ってあげたりしてほしいのです。

――さっそく、「やるべきことの見える化」について教えてください。

子どもがやるべきことを、親子で書き出し、子どもにわかるようにしましょう。

子どもは、自分のやるべきことがわかっていないケースがほとんど。親が「どうして片づけないの!?」としかっても、子どもはわかっていないのです。

そこで、朝起きてから寝るまでの間に「しなくてはいけないこと」を、お子さん自身に書き出してもらいましょう。ポイントは、極力口出しをしないこと。書き出せない場合、「学校に行くまで、何をしたらいいんだっけ?」「帰ってきたら、どうする?」などと、ヒントをあげるのはOKです。

――着替え、ご飯を食べる、宿題、家庭学習、明日の準備などという項目でいいのですか。

はい。できれば、ご飯を食べるという行為はお茶碗を流しに下げることまで含まれる、といったことも教えられるといいですね。これは、実際にやりながら身につけていくほうがいいかもしれません。
低学年のうちは、1日の間にやるべきことの項目を書き出すだけでいいでしょう。高学年になったら、「やるべきこと」を1日のスケジュール表に当てはめ、さらに「やりたいこと」も書き出して、スケジュール表に当てはめていく。「やるべきこと」と「やりたいこと」をはっきり認識することでものごとを計画的に進める力がつきます。
書き出したら見えるところに貼っておきましょう。

――やらないときは、どうしたらいいでしょうか。

そこが問題ですよね。しかるのではなく「何をするんだっけ?」などと考えさせてください。子どもだって忘れてしまうことがあるし、やりたくない気分のときもあります。せっかちに指示されると、親にコントロールされていると感じてしまいます。長い目で見ると、自分で考えて行動するように促した方が自立するのです。

促すコツは、穏やかにゆっくりわかりやすい口調で、具体的に伝えること。また「ご飯の時間までに、テーブルの上を片づけてね」などと、行動のタイミングを知らせたり、「このままテーブルにお料理を置くと、どうなっちゃう?」と、子どもに考えさせる質問をしたりすることも、自発性を伸ばすことにつながり、とても大事です。「もうちょっとだね!がんばろう」といった励ましも必要でしょう。

 

ほめることとおだてることは違う できたことを認めるのが上手なほめ方

――「できたことをほめる」にはどうしたらよいでしょうか。

上手なほめ方というのは、実際に子どもができていることをほめるということなんですね。子どものモチベーションがアップします。

ほめ方のコツは、「すごいね」「えらいね」「立派だね」といった言葉を言うよりも、小さな事実を具体的に認め、言葉にすることです。「靴を揃えられたね」「プリントを用意できたね」と、あたりまえに見えることも言葉にします。すると子どもは「見てもらっている」という安心感や達成感が得られ、「またやってみよう」という気持ちになるのです。

――何をほめたらいいかわからない場合には?

今できていることをあたり前と思わずに認めてあげてください。ピアノの練習を30分すべきところ、10分であきてしまっても、その10分のがんばりは認め「10分がんばったのね」と言葉に出す。子どもは見ていてくれたことがうれしく、自分からやろうという気持ちが生まれるでしょう。

――「ほめ」と「おだて」はどう違うのでしょうか。

よく、「いくらほめても言うことを聞かない」という方がいらっしゃいます。ほめ言葉は、「あなたを見ているよ」というメッセージです。それに対して、大人の意図に沿ったことをしたときだけほめ言葉を言うとか、言葉で子どもをコントロールしようとするのは、おだてになります。

子どもは親の意図を敏感に察知するもの。察知した途端、やる気が引っ込んでしまう子もいれば、図に乗ってしまう子もいます。今すでにできている事実を認めている限り、おだてにはなりませんよ。

――とはいえ、子どもにはやるべきことをやってほしいものです。

そうですね。だからこそ①のリストアップを先にしておくことが大事です。「これは自分がすること。しないと困るのは自分」と子どもが理解しているかどうかがキモです。

宿題をさせたくても、いきなり否定したり命令したりするのはNG。少しでもできている事実ややろうとする姿勢を見つけて、言葉にしてみてください。たとえば「字がきれいだね」「やろうと思って、ノートを出してるんだ」などと、いいところを探して言ってみると、やる気が出てきますよ。いかに自発的に行動するように促すか、工夫が必要なのです。

――ほめ方は子どもによって変えたほうがよいのでしょうか。

言葉のかけ方は、子どもの個性に応じるといいですね。人の役に立ちたいと思っているような子どもには、「ありがとう、助かった!」という言葉が響きます。ほめられると照れてしまう子どもには、短く事実を認めるだけのほうが有効かもしれません。親に対して素直になれない思春期の子どもなら、「○○さんが喜んでいたよ」という、間接的な表現がいいときもあります。

学習習慣を身につけさせたいときなどは、言葉で認めるだけでなく、カレンダーにシールを貼ったり、「○日続いたら、△△に遊びに行こうか」などと目標を立てたりするのもいいと思います。親子で楽しみながら取り組める工夫をしましょう。

 

前向きな声かけが子どもを伸ばす ときには親子で悩む経験も大事

――「しからずに具体的・前向きに伝える」とは?

まず、子どもの人格を否定することはNGです! しからなくてはいけないときには、具体的に伝えることが大事です。また否定的な言葉を使わずに、前向きな表現に置き換えるといいでしょう。

たとえば子どもが靴を脱ぎっぱなしにしているとき。「脱ぎっぱなしはダメじゃない!」としかるのではなく、「揃えてくれると玄関がスッキリする」に置き換えるのです。

――少し具体例を教えてください。たとえば、いちばん言ってしまいがちな言葉に「早くしなさい!」があります。これはどう言い換えればいいのでしょうか。

「早くしなさい」ではなく、具体的に伝えるにはタイミングを知らせるのがいいですね。「もうすぐ8時だよ。○○ちゃんが迎えに来る前に準備できるといいね」「夕飯の前に宿題を終えられると気分がいいね」など。ときには「7時から夕食にするけれど、宿題はどうする?」と考えさせることも大切です。「早く片づけて早くおやつ食べようね」と、モチベーションをアップさせる作戦もいいでしょう。

――「宿題をまだやっていないの?」「Z会はやったの?」と、ついきつい口調で言ってしまいそうなときは?

子どもが宿題をやるべきものだとわかっているのかどうかを、まず確認してくださいね。低学年だと、毎日するものだとわかっていないことがあります。その場合は先ほどのリストアップを確認してみましょう。

わかっていてもやらない場合は、「宿題をしておくと、授業についていけるね」と声をかけてもいいし、高学年の子には「寝るまでの○時間で終えないといけないから、考えてやってね」と任せてもいいでしょう。

――中学受験をする子の場合、受験勉強のモチベーションを維持させたいときはどうしたらいいでしょう。思うように成績が伸びないと子どものやる気も削がれるし、親も費用と労力をかけている分、子どもに任せてはいられないものです。

受験生をもつ保護者の方は大変ですね。わたしも「勉強しろ」と口には出さなくても、眉間にしわが寄っていたりして(笑)。
これは、親子で一緒にがんばる経験をする機会だと割り切るしかないと思います。「大変だね。一緒にがんばろうね」と応援するスタンスです。まちがっても「このままだと落ちるよ」など、ネガティブな言葉をかけないで!長い目で見て、良い結果にならないからです。どうしてもそんな言葉が口をついて出そうなときは、その場を離れて深呼吸したり、おうちの他の人にバトンタッチしたりしましょう。

中学受験でがんばった経験は、成否に関わらず子どもの財産になります。親子で貴重な経験をしていると考えてほしいものです。

受験期に限らず、きちんとした子育てをしようと思うこと自体、きちんとした保護者であることの印です。子どもには自分で伸びていく力があります。社会の中で育ててもらえます。だからあまり1人でがんばろうと考えず、大らかに見守っていきましょう。

 

あなたの子どもはどのタイプ?

同じようにほめても、人によって感じ方は違います。「うれしい」と思う子と、そうでもない子。 どんなほめ方が、心に届くか、その子に合わせたほめ方を知っておきましょう。

やり方

それぞれのA~Dで、あてはまる項目をチェックしましょう。
チェックした項目が一番多いのが、その子のタイプ。どんなほめ方がいいのでしょうか?

A

  • 面倒見のいい大将的な性格
  • おおらか
  • 頼ってこられると、イヤと言えない
  • 自分の弱みを見せることが苦手
  • 無理してがんばることもある

B

  • 自分で納得しないと動かない
  • マイペース
  • いつも冷静だ
  • こだわっていることには情熱的
  • 協調性はあまりない

C

  • アイディアが豊富
  • 明るくサービス精神旺盛
  • あきっぽく、計画を立てて
  • コツコツ努力するのが苦手
  • 好奇心いっぱい
  • 新しいもの好き

D

  • 気配り上手
  • 人をサポートするほうが向いている
  • 人の役に立ちたいと思っている
  • やさしい
  • イヤとはっきり言えない

 

Aが多い子は…

世話焼きタイプ

友だちのなかでもまとめ役になることが多く、頼りにされるタイプです。
ほめるときは、「さすが!」「たいしたもんだ!」と素直に、短くほめると効果的です。
何かかができたときは見逃さず、タイミングよく声をかけてみてください。

Bが多い子は…

クールタイプ

ガンコでちょっとリクツっぽいところがありますが、いったんやると決めると、どんどん突き進んでいくタイプです。
ほめるには、ただ「すごい!」と言っただけでは本気にしないので、理由を言ってほめるようにしましょう。なるべく具体的にほめるのがポイントです。

Cが多い子は…

ノリノリタイプ

クラスの人気者、といった存在で、とても明るい、元気なタイプです。ノリがいいので、「すごい!すごい!」とほめ倒すと、さらにやる気を起こすでしょう。
このタイプには、どんなほめ言葉もOK。
いいところをみつけて毎日ほめてみましょう。

Dが多い子は…

ほんわかタイプ

おとなしいけれど、とても気持ちのやさしい子です。
人からほめられたい、人の役に立ちたい気持ちが強いので、「~してくれて、ありがとう!とても役に立った」というほめ言葉が心に響くはずです。

 

『わかっちゃいるけどほめられない!脳を育てる「ほめる表現力」』より抜粋
著者:NPO法人JAMネットワーク代表 高取しづか 宝島社

 

高取 しづか

NPO法人JAMネットワーク代表・「ことばキャンプ」主宰
高取 しづか (たかとり・しづか)


消費者問題・子育て雑誌の記者として活躍後、米国に渡る。現地で出会った仲間とJAMネットワークを立ち上げ「日本の子どもと親のコミュニケーション力育成活動」を20年行っている。話す力聞く力のトレーニングプログラム「ことばキャンプ」を作りインストラクターを養成し全国で展開している。
書籍の出版、新聞・雑誌・LINE配信でコラムを執筆。「ことば力」「自立」「自己肯定感」をテーマに、全国で1万人以上に講演・研修。オンラインで『自己肯定感を育てる親講座』『親子関係が激変する「子ホメ」レッスン』を開催。
著書に、『ことば力のある子は必ず伸びる!』(青春出版社)『イラスト版気持ちの伝え方コミュニケーションに自信がつく44のトレーニング』(合同出版)「子どもが本当に待っているお母さんのほめ言葉」(PHP研究所)他多数。神奈川県子ども・子育てアドバイザー、神奈川県青少年問題協議会委員を歴任。令和2年度内閣府「子供と若者・若者応援団表彰」の内閣総理大臣賞受賞。

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