やってみる力を育てよう:洞窟探検迷路

さんすう力を高めるにはどうしたらいいの? まあ、そんなに難しく考えないで、まずはお子さまと一緒に問題に取り組んでみましょうよ。
(執筆:小田敏弘先生/数理学習研究所所長)


こんにちは、最近プリンタとスキャナを買い替えた小田です。プリンタは5年、スキャナに至っては10年使っていたのですが、それぞれさすがにそろそろ調子が悪いということで、新しいものを買いました。いずれも、今まで使っていた機種の後継のものです。気に入って使っていたものが、きちんと引き続き作られ続けているのは、なんだか嬉しくなりますね。

さて今回は、迷路の問題です。いくつか条件があるので少し難しいかもしれませんが、大事なことはやはり「いろいろやってみる」ことです。まずは気軽にチャレンジしてみてください。

それではさっそく行ってみましょう。

 

 

Stage73:やってみる力を育てよう

図のような迷路があります。次のルールにしたがって、スタートからゴールまで進んでください。
ルール1:数字の書かれている部屋は、その順番で通ります。たとえば、1の部屋より先に2の部屋を通ったりしてはいけません。
ルール2:すべての部屋を必ず1回ずつ通ります。通らない部屋があったり、同じ部屋を2回以上通ったりしてはいけません。

まずは、お子さまが問題の意味を理解しているかどうか、確認してあげましょう。迷路なので、スタートからゴールまで進みます。その過程で、「まず1の部屋に行って、その次に2の部屋に行って、さらに3の部屋を通ってからゴールする」ことを最初に伝えてあげてください。それが理解できた様子であれば、次にルール2も確認します。通っていないところがあれば「全部の部屋を通るんだよ」、2回以上通っているところがあれば「同じところは1回しか通れないよ」と伝えましょう。

お子さまがゴールまでたどりついたら、まずはルール1、数字の順番通りに進んでいるかを見てあげてください。順番が前後している場合は、「こっちの部屋より先にこっちの部屋を通るんだよ」と伝えます。ルール1がOKなら、ルール2の確認です。通っていない部屋があったり、同じ部屋を2回通っていたりした場合は、先ほどと同じように伝えます。ルール2もクリアできていれば、この問題は正解です。

部屋の数が増えたりルートが複雑になったりすると、結構難しくなるのですが、まずはお子さまが試行錯誤する様子を、温かく見守ってあげてください。


難度別に3段階の問題を掲載しています。ぜひ、親子で挑戦してみてくださいね。


▲画像クリックで拡大します(PDFファイル)


解答はこちら 


「解けるようになること」ではなく、「やってみる姿勢」を大切に

年度も改まり、はじめましての方も多くいらっしゃるかもしれません。このコーナーでは、私がふだん子どもたちに取り組んでもらっている問題を紹介しつつ、なぜそういった問題に取り組んでもらうか、その意図などを解説していきます。お子さまと一緒に、ぜひ楽しみながら読んでいただけると嬉しいです。

さて、ここで改めてひとつ、強調しておきたいポイントがあります。それは、ご紹介していく問題は、別に「解けるようになってほしいわけではない」ということです。前回Stage72でもお伝えしたことではあるのですが、今回から読み始めた方もいらっしゃると思うので、改めてその話をしていきたいと思います。

「算数の学習」というと、「問題の解き方を覚える」というイメージが強い方も多いかもしれません。そういった視点に立つと、「確かに出された問題は、最終的には解けるようにならなければいけない」と考えてしまうことでしょう。しかし実際のところ、「問題を解けるようになる」こと自体は、「算数の学習」の本質ではありません。算数の学習とは、算数的な概念を理解したり、技術を習得したりしていくことです。「問題が解ける」というのは、そうした理解や技術を習得した “結果”として現れるものでしかないのです。

算数の学習の中で「問題を解く」とき、「その問題が解けるようになること」をゴールに持ってきてしまうと、本来の目的からはズレてしまいます。大事なことは、「その問題に取り組む中で、何を得るか」です。その意味では、たとえその問題を解けなかったとしても、取り組む中でいろいろな経験を積み、算数的な概念への理解が深まったり、技術の練習を重ねたりすることができれば、それは十分価値のある学習になる、ということなのです。
 
今回の問題は、言ってしまえば単なる迷路ですね。おそらく「算数のテスト」で出てくることはありませんし、「解き方」を覚えたところで役に立つ場面はあまりないでしょう。それでもこの問題を子どもたちに解いてもらうのは、「試行錯誤する経験を積んでほしい」からです。算数の学習において、「まずはやってみる」という姿勢はとても大事です。実際にやってみる中で、何かの法則に気づいたり、扱っているもののイメージが豊かになったりすることがあります。そうした経験の積み重ねの中で、さまざまなものを得ていくのが算数の学習なのです。その基本となる「やってみる姿勢」を身につけていってほしい、というのが、今回の問題の狙いです。
 
今回の問題に限らず、このコーナーでさまざまな問題を紹介していくのは、その問題を解けるようになってほしいからではなく、その問題に取り組むことそのもので得てほしいものがあるからです。それらの問題の中には、難しい問題も多々あるでしょう。なかなか問題が解けない様子を見て歯痒く感じる場面もあるかと思いますが、その中でお子さまがさまざまなものを得ていることを信じて、ぜひ温かく見守ってあげてください。

 


いかがでしょうか。
 
そんなこんなで、新しい年度を迎えましたね。年を経るごとに、1年が過ぎるのが早くなってきている気がしないでもないですが、ただ時の流れに流されるだけでなく、その都度決意を新たにして、少しずつ前向きに生きていければいいな、と思います。また1年間、よろしくお願いいたします!
 
それではまた来月!

 

文:小田 敏弘(おだ・としひろ)

数理学習研究所所長。灘中学・高等学校、東京大学教育学部総合教育科学科卒。子どものころから算数・数学が得意で、算数オリンピックなどで活躍。現在は、「多様な算数・数学の学習ニーズの奥に共通している“本質的な数理学習”」を追究し、それを提供すべく、幅広い活動を展開している(小学生から大人までを対象にした算数・数学指導、執筆活動、教材開発、問題作成など)。

公式サイト:http://kurotake.net/

主な著書


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