しっかり混ぜないのがいい感じ パイ生地に挑戦

「科学する料理研究家」平松サリーさんが、料理に役立つ知識を科学の視点から解説します。お子さまと一緒に科学への興味を広げていきましょう。

 

サクサク食感のパイ生地を作ってみよう

パリパリサクサクとした食感がおいしいパイ生地。あの食感がどうやって作られているかご存知ですか?作り方は実はとてもシンプルで、小麦粉と水を混ぜた生地と、バターとを重ねて何度も折りたたむだけ。生地を頻繁に休ませるので時間はかかりますが、作業自体は意外と簡単です。合間に本を読んだりおしゃべりしたりしながら、ゆったりと作ってみてください。

今回は、パイ生地を失敗なく作るために重要なポイントについて、バターの性質と小麦粉生地の性質に着目して解説します。

 

材料(作りやすい分量)

  • 薄力粉 50g
  • 強力粉 50g
  • バター(無塩) 80g
  • 塩 2g
  • 水 50+5ml
  • 打ち粉(強力粉)


1.材料を冷やす
薄力粉と強力粉を混ぜてボウルにふるい入れる。
水50mlに塩2gを入れて溶かす。
バターは約1〜2cm角に切る。
粉類、水、バターは30分以上冷蔵庫に入れてよく冷やしておく。


2.材料を混ぜる
粉の中にバターを入れ、ヘラなどで混ぜて全体によくまぶす。
冷やした塩水を加え、粉と水がなじむようにヘラでざっくり混ぜる。
粉気が残る場合は、残りの水5mlを少しずつ足して調節する。
(バターをなるべく潰さないようにすること)


3.生地をまとめる
ラップを広げた上に2を出し、ラップと手の甲でおさえるようにして、生地をまとめる。
だいたいまとまればOKなので、手のひらで押さえたりこねたりしないこと。
ラップに包んで冷蔵庫で30分以上休ませる。

ポイント

パリパリとした薄い層が何枚も重なったパイ生地のことを、フランス式パイ生地や折りパイ生地といいます。小麦粉と水を練ったものと、バターとを重ね、たたんでは伸ばす作業を繰り返すと、小麦粉層とバター層とが交互に薄く重なった生地ができます。これをオーブンで焼くと、バターがとけて小麦粉の層を高温で加熱するため、揚げ物のようにサクサクとした食感になります。また、生地に含まれる水分が気体となって膨張し、層を持ち上げることで生地が膨らみます。

この生地のポイントは、小麦粉生地の層と層が、バターの層できちんと区切られること。そのためには、バターをとかさずに生地を折りたたんでいくことが大切です。冷蔵庫から出したばかりのバターは、力を加えると形が変わる粘土のような状態。これをめん棒などで伸ばしていくと薄く広がり、小麦粉の層同士を区切るバターの層になります。

ところがバターは30℃前後になるととけて液状になり、小麦粉の層と混ざりやすくなります。つまり、暑い部屋に置いておいたり人の体温に長時間触れたりすると、とけて層を区切ることができなくなってしまうわけです。

これを防ぐため、材料や道具は冷蔵庫でよく冷やしておき、夏場は冷房を効かせるなど涼しい部屋で作業をするようにしましょう。また、人の体温に触れる時間が少なくなるよう、生地を混ぜたり伸ばしたりするときは、なるべくヘラやめん棒などの道具を使うようにするとよいでしょう。

 

4.生地を伸ばしてたたむ(1〜2セット目)
台に打ち粉をして生地をのせ、打ち粉を振ってめん棒で伸ばす。

横幅10cm、長さ30cm程度に伸ばしたら、表面の打ち粉を払い、上下から生地をたたんで3つ折りにする。

生地を90°回転させて同様に10x30cmに伸ばし、3つ折りにする。

生地をラップで包んで冷蔵庫で30分休ませる。

(ここまでで3つ折り×2セット)


5.さらにたたむ(3〜6セット目)

4の作業をあと2回繰り返す(3つ折りを合計6セット行う)
できあがった生地をラップに包んで冷蔵庫で30分寝かせたらできあがり。
すぐに使わない場合は、ラップに包んで冷凍しておく。

 

材料(15個分)

  • フィユタージュ・ラピッド 上記分量
  • 板チョコレート 1枚
  • 卵黄 1個分
  • 水 小さじ1


1.生地を伸ばす
パイ生地に打ち粉を振って、綿棒で厚さ3mm程度に伸ばす。
ラップで包んで冷蔵庫で30分休ませる。


2.準備
生地を休ませている間にほかの材料を準備する。
板チョコレートは、15等分に割る。
卵黄1個に水小さじ1を加えて卵液を用意する。
オーブンは200℃に予熱しておく。


3.生地を切り分ける
パイ生地を伸ばして、20x30cmよりひとまわり大きいくらいの長方形にする。
端を切り落とし、4x5cmの長方形30枚に切り分ける。
フォークで1枚につき2箇所刺して、生地に穴を開ける。


4.チョコレートを挟む
パイ生地の半分をオーブンシートの上に並べ、チョコレートを乗せる。
チョコレートの周りに卵液を薄く塗る。
残りのパイ生地を上にのせてチョコレートを挟み、フォークで周りを押さえてとじる。
(作業をしている間に生地が温まってくるので、生地を半分に分けて、作業しない分は冷蔵庫に入れておくとよい)


5.焼く
表面に卵液を薄く塗り、200℃のオーブンで15分焼いたら出来上がり。

生地を練ったり伸ばしたりするたびに、生地を冷蔵庫で休ませるのは、バターを冷やし固めるためだけではありません。これは生地に含まれる「グルテン」を休ませる時間でもあります。

小麦粉に含まれるタンパク質のうち大部分を占めているのが「グルテニン」「グリアジン」の2種類です。グルテニンは細長いバネのような構造を中心としたタンパク質で、小麦粉に水を加えて混ぜるとグルテニン同士が結びついて、弾力のあるバネの束ができます。この間にグリアジンという球状のタンパク質が取り込まれることで伸びが良くなり、粘り気と弾力のあるグルテンが形成されます。

この生地を練ったり伸ばしたりすると、グルテンが引っ張られ、グルテニンのバネが引き延ばされたような状態になります。そのため、生地の弾力が強くなりすぎて、生地が伸ばしにくかったり、無理に伸ばそうとするとグルテンが引きちぎれてしまったりします。

これをしばらく休ませておくと、バネ同士が結びついていた場所が入れ替わったり離れたりして、引き延ばされたバネが元に戻ります。これにより、弾力が落ち着いて生地が伸ばしやすくなるのです。


次回は「なめらかポタージュ」のレシピと科学ポイントについて解説いたします。どうぞお楽しみに!

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)


科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

 

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