執筆者:鈴木亮介(Z会進学教室 調布教室長/国語科)
記事更新日:2021年12月3日
【インタビュー企画】教えて!校長先生 ~② 都立立川高校~
Z会の教室による小学6年生の学びを助けるフリーマガジン「親子で始める、中学準備」が、皆さんの憧れる人気校の校長先生にお話を聞くインタビューシリーズ「教えて!校長先生」。連載第二弾は東京都立立川高校を直撃!お話を伺ったのは吉田順一校長先生です。明治34年(1901年)に東京府立第二中学校として開校した立川高校は、OB/OGに数々の著名人を輩出していますが、なんと吉田校長先生もその一人。ご自身も都立立川高校の出身なのです。いったいどんなお話が聞けるのか楽しみですね。
東京都立川市錦町2丁目13番地5
JR中央線・南武線・青梅線 立川駅から徒歩8分
多摩都市モノレール立川南駅から徒歩6分 柴崎体育館駅から徒歩5分
吉田順一校長先生は、どんな小学6年生でしたか?
小学5年生までは地方に住んでました。虫も好きだし本も運動も好きだし、何にでも興味を持つ子でしたね。勉強もできたし、走り高跳びも小学生当時で125cmくらい跳んでましたよ。
親の「正しさ」が子にとって正解とは限らない
――高校選びのポイント、注意点などを教えてください。
吉田校長:子どもにはいろんな可能性があって、それを潰しちゃいけないと思っています。色んな可能性を引き出せる学校を選ぶべきだと思います。親が正しいと思った助言に子どもは何となくそうなんじゃないかと従いますが、実際には違ったと後で後悔しないように、幅広い選択肢を持ってほしいですね。
――中学受験をする友達やご家庭を見て焦るという保護者の方も多いようです。早くから受験勉強をしている子の方が有利なのでしょうか。
吉田校長:私は教員になる前に都心の学習塾に勤めていたのですが、中には「力はあるけどゴムが伸び切っているな」という子もいました。中学受験を否定するわけではありませんが、12歳のときだけでなく、15歳や18歳、それぞれの発達段階において必死になって勉強することって大事だと思うんですよ。
――逆に、現時点では「受験」にまったくイメージが湧かないという人もいるようですが。
吉田校長:そういうお子さんはまず志望校の選択として、その高校の卒業生がどんな大学に進学しているかを見るとよいと思います。総合大学に合格しているというのは大事ですよね。よく生徒にも言うんですが、「決まらなかったら東大受けろよ、東大は歯医者以外なんでもなれるよ」って。
――選択肢を残しておいた方が良いということですね。自分に合う学校をどうやって見つけていったらいいでしょうか?
吉田校長:学校というところは勉強だけではないので、部活や特別活動など自分が興味・関心を持てるところから考えてもよいでしょう。
「40人の科学者を作る」創造理数科を新たに立ち上げ
――立川高校の特色を教えてください。
吉田校長:120年の伝統を持ち、OBOGのつながりやバックアップが大きいこと。そして「自主自律」という校風ですね。はき違えない自由があるということです。中学に上がると色々なところで制約がありますが、立川高校に入れば行事も自分たちで計画できますし部活も自分たちが中心で動いています。
――なぜ「自主自律」が大切なのでしょうか。
吉田校長:課題発見能力が高まりますよね。たとえば行事を自分たちだけで計画すると、どういうことが課題なのか自分たちで見つけられます。それは、これからの社会で必要な力だと思います。
――立川高校は「普通科」に加えて2022年度から「創造理数科」が設置されますが、どんなことが学べるのですか?
吉田校長:幅広い実験ができますし、企業や大学と連携した授業もあります。創造理数科では40人の科学者を作るつもりです。50年後には立川高校出身者からノーベル賞が出るんじゃないかな。残念ながら僕は生きてないと思うけど(笑)
――そんな立川高校に合格するためには、小学生のうちにはどんな準備をしたら良いでしょうか?
吉田校長:本を読んでほしいです。とにかく本を読んでいるか読んでいないかは大きな違いですよ。6年生というよりは本当は小学校低学年のうちからですが、世界名作文学全集などに触れてほしいですね。それから宿題をやるという習慣をつけてほしい。研究には「いつまでに何をしなければいけない」という期限があるから、それができないと一流の科学者にはなれません。やるべきことをきちんとやるという習慣、「タイムシェア」を今から身につけてください。
――「タイムシェア」とは具体的にどのようにすれば良いのでしょうか。
吉田校長:自分の中で何がメインでやらないといけないか、を自分で見つけることが大事です。よく先生方が「授業の復習をしなさい」と言いますが、実際には1日6時間の授業を受けたとして、1教科30分ずつだとしても全教科を復習するのに3時間かかります。そんなことは実際には無理なので、取捨選択していきます。今テレビを見るべきか、勉強すべきか、寝るべきか。自分の中で今何がポイントかを考えてタイムシェアする力が必要です。規則正しい生活を送ることも大切ですね。
――「本を読んでいるか読んでいないかは大きな違い」ということですが、どう違うのですか?
吉田校長:まず自己表現力が違いますし、論理性も高まります。そして雑学に秀でます。この「雑学」というのは教養を身につけるうえで非常に大切ですよね。
自分で「挫折だ」と決めつけないで。雨の次には必ず晴れるよ
――立高生を見ていて「良い習慣だな」とお感じになるのはどんな点ですか?
吉田校長:立高生の良いところは、先ほど話したゴムが伸び切っていないところですね。習慣という点では規則正しい生活を送っている点です。そして、自分を高めてくれるような良い友達を見つけているところですね。立高生は卒業後も良い関係性を続けていることが多いように思います。あと、立高などトップの高校に進学する子たちは中学生時代に「テスト前にそんなに真剣に試験勉強をした」という経験はそんなにないんじゃないかなと思います。
――そうなんですか?
吉田校長:(試験前だけに慌てて勉強をするのではなく)普段から授業をしっかり聞いて復習をする習慣がついていれば、きちんと得点が取れていると思います。小学生の皆さんにとって定期試験はまだイメージが持ちづらいと思いますが、「試験勉強=一夜漬け」のようなイメージを持たずに、とにかく普段の授業と復習を大切にしてほしいですね。
――受験に限らず、何事にも打たれ弱かったり、自信が持てないという子どもたちも最近は多いように思います。
吉田校長:いつも晴れじゃないし、いつも雨じゃないから。雨の後には晴れると思って頑張るしかないよね。私は立川高校の出身だとあちこちで言ってますが、実は第一志望の高校は落ちてるんですよ。中学時代、模試で何度も全国1位を取って、本当は教育大駒場(現在の筑波大附属駒場高校)に行きたかったんだけど、落ちちゃって。その後高校時代に演劇の道を志したり、医者になりたいと思っていたけど、どっちもダメで。それから選んだ教員という道も、採用試験には一発合格できなくて、どちらかというと挫折の連続。それでも自分の人生を今振り返って失敗か成功かと言ったら、失敗ではないと思うよ。自分で「挫折だ」と決めてしまわずに、一生懸命今を頑張る。毎日一生懸命生きる。そうすると、雨の次には必ず晴れるよ、って思ってます。
小学6年生のあなたへ メッセージ
夢を持ってほしい。そしてそれを語ってほしい。10年後、20年後の社会はどうなっているかわかりませんが、自分が一生懸命頑張っていれば必ず報われるので、一生懸命頑張るという気持ちを忘れないでほしいです。いろんな経験をしましょう。親孝行もしてくださいね。それと、現状に満足せず、自分を高める環境を目指し続けることです。志望校を決めるときに「安全パイ」(=現状の成績で確実に合格する学校)という考え方をする人もいますが、そうじゃなくて、今の自分を高めてくれるところはどこかっていう物差しで第一志望を決めるべきです。今の自分じゃなくて、自分が頑張って行けるところを目指してほしいと思います。
この記事の著者
鈴木亮介(すずき・りょうすけ)
2013年よりZ会進学教室にて中学生の国語、小6公立一貫校受検コースの文系を担当。立川教室や池袋教室を中心に数多くの6年生の作文指導に携わり、南多摩中、立川国際中、大泉中などの合格者を輩出。2016年よりZ会に入社し、同年より調布教室の教室長を務めるほか、国語科の一員として校正業務、冬期講習単科ゼミ「西の作文」の講座設計・教材作成も担当。肥薩線の三段スイッチバックのごとく「地味にすごい」をモットーに教壇に立つ。