第78回 【番外編】Z会の教室、ハラスメント防止研修を実施

執筆者:鈴木亮介(Z会進学教室 調布教室長/国語科)
記事更新日:2023年05月12

【番外編】Z会の教室、ハラスメント防止研修を実施

Z会の教室がお届けするWebマガジン「親子で始める、中学準備」。今回は番外編として社内研修の内容をご報告申し上げます。

パワハラ(パワーハラスメント)、セクハラ(セクシャルハラスメント)などハラスメント=他者に対する迷惑行為が社会問題となっています。Z会進学教室(首都圏および関西圏)では2023年2月下旬、Z会進学教室の教室長など社員を対象にしたハラスメント防止研修を行いました。陸上自衛隊の幹部自衛官向けのハラスメント防止研修を行う株式会社キャリア・ストラテジー代表・吉本惠子氏を講師に招き、教育の現場で求められるハラスメント対策について学びました。

ハラスメント=「いやがらせ、いじめ」 絶対に許してはいけない危険行為

今回の研修ではまず、ハラスメントの定義を学びました。ハラスメントとはいろいろな場面での「いやがらせ、いじめ」であり、絶対に許してはいけない(死に至るまでの)危険行為です。吉本先生によると、ハラスメントは職場の風通しを悪くし、働く人の意欲を失わせ、目標達成を邪魔するものだといいます。塾に通う生徒にとっては「学ぶ意欲を失わせ、目標達成を邪魔する」ということになります。

研修ではその後、グループワークにより知っているハラスメントを挙げていき、どのような行為がハラスメントに当たるかといった基本的な知識・見識を確認していきました。中でも代表的なハラスメントとして挙がるのがパワーハラスメントです。厚労省の定義では、パワハラには「身体的な攻撃」、「精神的な攻撃」、「人間関係からの切り離し(いわゆる仲間外れ)」、「過大な要求(大量の無理な要求を課す)」、「過小な要求(できる人に対して簡単な仕事しか与えないなど)」、「個の侵害(プライバシーの侵害)」の6類型があります。

また、パワーハラスメントについては2019年にパワハラ防止法(正式:改正労働施策総合推進法)が成立し、2020年に大企業で施行され、2022年4月からは中小企業でも施行され、事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発、苦情などに対する相談体制の整備などが義務化されています。

ハラスメント防止研修では、こうした知識の習得に加え、自身の性格や気質、考え方を確認し振り返る「ハラスメント度チェック」や、教育現場における具体的な事例を基にしたケーススタディも行いました。読者の皆さんも、よろしければ以下の「ハラスメントチェック」に挑戦してみてください。(時間をかけず、直感的に回答するのがポイントです!)

吉本惠子先生によるハラスメント度チェック(一部抜粋)
・自分のミスを他者に謝ることはない
・自分はどちらかというと短気で怒りっぽい性格だと思う
・何かあるとすぐ感情的に叱る
・厳しくしないと人は育たないと思う
・仕事ができない部下に仕事を与えないのは仕方がないと思う

こうした項目に自分が一つでも該当する場合は要注意です。教育に携わる人が特に注意したいのは「何かあるとすぐ感情的に叱る」という項目。大人の世界では当然ハラスメントになりますし、たとえ子ども相手だとしても許されるものではありません。また、吉本先生によれば「仕事ができない部下に仕事を与えないのは仕方がない」という考え方も危険だと言います。スポーツ指導の現場では、子どもが上達しないのはコーチの指導法が悪いという考え方が主流で、コーチのスキルアップが要求されます。これは学習においても同様と言えそうです。

「やる気を出せ」と注意は△ →どうすればよかったのか

続いて、ケーススタディでは教育現場の様々な事例について、適切か否かを研修参加者がクイズ形式で回答し、考察しました。ここでも2点ご紹介します。

◆男性のA先生は生徒の女子学生Bさんの学習指導を教室でしました。A先生は部屋のドアをきっちり閉め、指導中は密室にしました。

この対応はハラスメント?そうではない? …判断に迷うところですが、「プライバシーを守るため、面談などの際はドアを閉めるのが適切」というのが一般的な見解とされています。ただし吉本先生によれば「ドアを開けておきましょうか」など心配りをすることが、無用なトラブルを避ける対策となるということです。教育機関によってはドアの常時開放をルール化しているところもあり、一概に「何が正しい、間違い」というよりは双方の意思を確認し、対応を決めることが大切と言えるでしょう。

◆A先生はいつもやる気がなさそうに見える生徒のCさんに「なんだかいつもやる気が見えないね、やるときは全力でやりなさい」と注意しました。

この対応はハラスメント?そうではない? 指導上適切か否かという視点では、当然ながらその生徒の実情や先生との関係性によりケースバイケースと言うことになるでしょうが、ハラスメント防止という観点からは△。声掛けの仕方として「やる気がない」というコメントが先生側の主観と解釈されやすいので、「遅刻が最近多いね」「よく宿題を忘れるね」などの具体例を示すことで、ハラスメントではなく改善指導を促すことができると吉本先生は話します。

当事者への視点だけでなく周辺の第三者への視点も大切

このほか、研修ではパワハラやセクハラについて当事者への視点だけでなく周辺の第三者への視点も持つことが重要であるといった講義が行われました。例えば、職場で気心の知れた同僚を「オネエ」と呼び、本人が嫌がっていなかったとしても、これはセクシャルハラスメントに相当するのみならず、重大な人権問題にもなり得ます。仮に本人が許可していても、それを耳にする周囲の人の中で不快感を持つ人がいる可能性もあります。

Z会進学教室では講師ガイドラインの中で威圧的指導を明確に禁止していますが、授業中に先生が大声で怒鳴ったり、特定の生徒を見せしめのように叱責したりすることは、当事者である生徒はもちろんのこと、同じクラスにいる他の生徒の心も傷つけ、学習意欲を阻害します。今回の研修で改めて学んだ知見も活かし、Z会の教室ではハラスメントの一切ない教室を持続してまいります。

この記事の著者

鈴木亮介(すずき・りょうすけ)
2013年よりZ会進学教室にて中学生の国語、小6公立一貫校受検コースの文系を担当。立川教室や池袋教室を中心に数多くの6年生の作文指導に携わり、南多摩中、立川国際中、大泉中などの合格者を輩出。2016年よりZ会に入社し、同年より調布教室の教室長を務めるほか、国語科の一員として校正業務、冬期講習単科ゼミ「西の作文」の講座設計・教材作成も担当。肥薩線の三段スイッチバックのごとく「地味にすごい」をモットーに教壇に立つ。

 

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