Z会の大学受験担当者が、2025年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。
Z会物理担当者からのメッセージ
2025年度の京大物理は、きちんと対策してきた受験生にとっては、標準的な難易度の問題でした。時間の割に分量が多いのは例年通りですので、自分の得意不得意分野を考慮して、上手に時間配分して得点を積み上げることが肝要だったと思います。
京大物理では、各大問の前半部分は基本~標準的な問題が多いため、これらをいかにすばやく確実に解答できるかが重要です。また、他の受験生と差がつく「やや難」レベルの問題や、作図問題、目新しい題材の問題について、諦めずにどこまでくらいついていけるかが合否を分けると言えるでしょう。
京大物理は、初めて見たときには面食らうかもしれませんが、目新しい題材ほど誘導が親切で、解きやすいことが少なくありません。大切なことは2回書かれていたり、途中で検算になるヒントを散りばめたりしてくれていますので、ヒントを見落とさず、確信をもって解き進められる状態を目指しましょう。
Z会の通信教育では、問題文から状況を正しく読み解き立式する練習を通して、難易度の高い京大物理にも対応できる力を養います。演習を繰り返すことで、京大で頻出の目新しい設定の問題に出あっても、最後まで解き切る力が身につきます。粘り強い演習を積み重ねて、京大合格を勝ち取りましょう!
今年度の入試を概観しよう
分量と難度の変化(1科目受験:90分、2科目受験:180分)
- 難易度は2024年度から変化なし
- 分量は2024年度から変化なし
2025年度入試の特記事項
- 作図・グラフ描画の出題がなかった。
合否の分かれ目はここだ!
京大物理では、深い考察力(比較的絞られた設定の中で、とことん考察を突き詰める力)が求められる。題材も、高校物理の範囲を超えることがあるため、必要に応じて、高校物理の範囲を超えた式が与えられ、それを使って解くよう指示されることも多い。それゆえ、京大物理は、問題文の情報量が多く、高校生にとって目新しく、現象のイメージが難しい設定となる傾向が強い。また、近似をはじめとする計算量の多さや計算の煩雑さも、特徴の一つである。いかに問題文を素直に読み、必要な情報を的確に捉え、正確かつ迅速に計算できるかが合否の分かれ目と言えるだろう。
限られた時間で高得点を取る戦略としては、まず全ての問題を概観し、解きやすそうな大問を見つけ、前半部分の基本的な問題を確実に解答することを意識したい。考えが煮詰まったり時間がかかりそうであったりすれば、ひとまず飛ばして別の問題に移る方がよい。また、「問」形式の論述問題はやや難度が高いが、最初の立式やグラフの概形だけでもよいので、自分のわかる限りのことを書き、少しでも得点に結びつけようとする姿勢を持つことが大切である。普段の学習においては、すばやく正確に計算する練習をすることや、答の次元や符号の正負を確認しながら解き進め、ミスをなくす工夫をすることなどを通して、物理の土台となる力をしっかりと涵養してほしい。
以下では、2025年度入試について述べる。問題Ⅰは、「ス」までは解き進めたい。問題Ⅰは発展的な設問が少ないので、ここで確実に得点を重ねることが合格点確保には必須である。
問題Ⅱでは、(1)は完答したい。(2)以降は考察が高度になるが、解ける問題を見極めて少しでも得点を積み重ねたい。とくに3択問題や論述問題は、それまでの設問が解けていなくても正解できる可能性があるので、途中でつまずいても挑戦する価値がある。
問題Ⅲでは、(1)は解き切りたい。(2)は途中でつまずいたなら、あとは潔く諦めるのも一案である。その場合も、論述の問2には挑戦したい。実は与えられたグラフだけを見れば正答できる。
以上、2025年度は、全体で6割程度を得点したい内容だった。
さらに詳しく見てみよう
大問別のポイント
物理問題 I
力学 ばね・ひも・棒を取りつけた小球の円運動 [標準]
(1)ではばねに小球1つを取りつけて水平面上で円運動させた場合、(2)では2本のひもと2つの小球を結びつけたものを水平面上で円運動させた場合、(3)では2本の棒と2つの小球を結びつけたものを鉛直面内で円運動させた場合を扱う。(2)の「重心から見たときの2球の円運動」や、(3)の1本の棒が外れたあとの「2球の落下の様子(重心が放物軌道を描きながら、重心まわりに2球が回転する)」は難関大頻出の題材のため、2025年度の中では最も取り組みやすい大問だったといえるだろう。
物理問題 II
電磁気 ソレノイドのエネルギー収支や電流が作り出す圧力 [やや難]
(1)はソレノイドに関する標準的な問題である。外部電源がした仕事については、コイルのエネルギー増分として検算が可能になっている。(2)以降はバルーンアート用の風船のような細長い円筒状の膜に導線を巻きつけたソレノイドについて、半径方向に膨張させたり、円筒軸方向に膨張させたりする場合について考察する。京大物理らしく近似式を多用して微小変化についての考察を進める必要がある。「電流が作り出す圧力(同じ方向に流れる電流間には引力が、反対の方向に流れる電流間には斥力が働く)」と「気体の圧力差」のつり合いという馴染みが薄い概念が登場し、また扱う物理量の数も多いため、高度な状況把握力・計算処理力が必要だった。
物理問題 III
熱力学 理想気体の断熱変化、理想気体ではない気体の状態変化 [やや難]
(1)では鉛直方向に立てて上から可動な蓋をした断熱容器について、蓋に細分化できるおもりを載せ、その細かなおもりを1つずつ取り除く状況を考えることで、断熱変化の関係式を導出する。(2)では「理想気体とは異なる状態方程式や内部エネルギーの式に従う気体」を考えるという突飛な設定に面食らった人も多いだろう。何の式が従来通り使えるのかを考えながら立式する必要があり、本問の状況に即した高度な思考力が試された。なお、ここで考えているのは光子気体(光子の集まりを気体とみなした状況)であり、その熱力学的ふるまいからシュテファン・ボルツマンの法則(黒体放射のエネルギーが温度の4乗に比例する)と同等な式を導出させるのが本問のテーマだと考えられる。等温変化で圧力が一定なのに驚いた人もいるかもしれないが、これは、容器の壁が光子を放出したり吸収したりするため、容器の中の光子数が一定でないことに起因する。
攻略のためのアドバイス
京大物理を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。
●要求1● 問題文を読解する力
京大物理は、問題文が長く、設定が高度なこともあり、問題の設定を理解することに時間がかかる場合が多い。設定をきちんと把握するためには、相当の読解力が必要である。問題文にはヒントが含まれていることも多く、この読み取りが合否を分ける。
●要求2● 正確かつ迅速に計算する力
京大物理では、例年、設問で与えられる記号(物理量)が多く、設問数も計算量も多い。このため、煩雑な計算をミスなく、かつ速く行う必要がある。
●要求3● 解くべき問題を見極める力
京大物理は、例年、問題文が長く計算量も多いため、時間内にすべて解くのは厳しい。このため、試験開始直後に問題全体にざっと目を通して解くべき問題を見極め、解答に必要な時間を適切に配分することが、合格点の確保に向けて重要となる。大問の途中で解けない設問があっても、最後の方に独立して解ける設問がある場合が多いので、諦めず全体に目を通し、「解ける設問を確実に解く」姿勢が、合格には必須である。
対策アドバイス
基礎力の完成
まずは、要求②を意識して、基本的な問題をミスなく要領よく解く力をつけよう。また、単に計算結果が合っているだけで満足することなく、問題の物理現象をしっかりと頭の中でイメージできるように心がけたい。設問で問われてなくても、得られた結論をグラフで表す訓練をしておくと、理解の助けになるだろう。
レベルUP
基礎力がある程度ついたら、京大レベルの問題に慣れていこう。Z会の通信教育では、読解力や重量級の計算力を養う出題を行っている。
京大レベルの演習
要求①や要求③は実戦演習の中で培われる力である。京大物理は、早めに基礎を固め、徐々に長い問題文に慣れていかないと、太刀打ちできない。自分の得意不得意を見極めつつ、試験時間をめいっぱい活用して得点を最大化できるような解き方を身につけてほしい。
Z会でできる京大対策・ご案内
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