「京大物理」2021年度個別試験分析

Z会の大学受験担当者が、2021年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化(理科…2科目180分)

  • 基本的には穴埋め形式の問題であり、各大問の最後に記述形式の問題がある。
  • 例年、力学、電磁気分野から各1題、その他の分野から1題(2021年度は原子、2020年度は熱力学、2019年度は波動)の計3題の出題。
  • 分量は減少、難易度は易化。2019、2020年度は難易度が高かったが、2021年度は2017年度や2018年度のように比較的取り組みやすい問題であった。

2021年度入試の特記事項

  • 物理問題Ⅱは、微分方程式を用いて回路の問題を考えたことがある人にとっては、見通しが立てやすい内容だった。
  • 近年、物理問題Ⅲは隔年で熱力学と波動が出題されていたが、2021年度は、2015年度以来久々に、原子が出題された。

合否の分かれ目はここだ!

  • 京大物理においては、問題文の情報量の多さ、問うている状況の目新しさやイメージのしにくさ、近似をはじめとする計算量の多さや煩雑さが、難易度を高くしている要因である。いかに問題文をすばやく読み、必要な情報を抽出して整理し、正確かつ迅速に計算ができるかが合否の分かれ目と言えるだろう。
  • 限られた時間で高得点を取る戦略としては、まず全ての問題を概観し、解きやすそうな大問を見つけ、前半部分の基本的な問題を確実に解答することを意識したい。考えが煮詰まったり時間がかかりそうであったりすれば、ひとまず飛ばして別の大問に移るとよい。また、すべての問題を通して、論述問題である「問」形式の問題は難度が高いが、最初の立式やグラフの概形だけでもよいので、自分のわかる限りのことを書き、少しでも得点に結びつけようとする姿勢を持つことが大切である。普段の学習においては、すばやく正確に計算する練習をすることや、答の次元や符号の正負を確認しながら解き進めミスをなくす工夫をすることなどを通して、物理の土台となる力をしっかりと涵養してほしい。
  • 2021年度は、全体で6割強を得点したい試験であった。
各大問のポイント
  • 物理問題Ⅰは、やや計算が煩雑であるものの標準的な難易度である前半の穴埋め形式の問題をすばやくミス無く解き、後半の「」や問1にいかに多くの時間をかけられたかどうかがポイントであった。
  • 物理問題Ⅱは、前半の穴埋め形式の問題と問1までの典型的な問題を、すばやくミス無く解けるかどうかがポイントであった。(3)以降は、計算自体は難しくはないが、問題の現象を正しくイメージできなかった人にとっては難しかっただろう。
  • 物理問題Ⅲは、2015年以来久々の原子分野からの出題で、身構えてしまった人もいるかもしれないが、(2)までは波動の考え方を用いる基本的な出題なので、ミス無く全て正解したい。(3)は見慣れない設定で、考え方がわからなかった人もいただろう。問1・問2は難しくはないものの計算がやや煩雑なので、計算ミスに注意したい。
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さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 物理問題 I  力学[標準]
放物運動する小球とボールの衝突

  • (1)は少し計算が煩雑だが、標準的な問題である。ここはミス無く確実に得点したい。
  • (2)はanとan-1の間に成り立つ関係式を、はね返り係数が1であることから求めればよい。落ち着いて状況を整理して計算や添字のミス等がないように気をつけたい。
  • 問1は(ⅰ)はn回目の衝突直前と衝突直後の間で運動量保存則が成り立つことから考える。単純に考えれば解答できるが、勘違いをして設定を複雑にしてしまい、計算にてこずってしまうと時間のロスになるので注意したい。(ⅱ)は「」で求めた小球が到達する最高高度の式を用いて考えればよい。

 物理問題 II  電磁気[標準]
磁場中の円弧形の導線上を動く導体棒と、コンデンサー、抵抗からなる回路

  • (1)は標準的な問題なので、ミス無く確実に得点したい。角速度が2π/Tではなく、π/Tであることに気をつけたい。
  • (2)も標準的な問題であり、完答したい。「」は、時定数を知っていた人は自信を持って解答できただろう。
  • 問1は、キルヒホッフの第2法則を考えることで時刻t=Tでのグラフの傾きと定常状態になったときの電気量の値−Qcを求め、図1と同様に−Qcに漸近していく形のグラフを描けばよい。
  • (3)は問題の文章の量が多く、見慣れない式が出てきて混乱する人が多かったと考えられるが、落ち着いて計算をして解答したい。
  • 問2は(3)の誘導に乗れれば解答できるが、時間に追われる中で正しく解答できた人は少なかっただろう。

 物理問題 III  原子[標準] 
ブラッグ反射、中性子のド・ブロイ波の干渉

  • (1)はブラッグ反射の基本である。原子分野は演習が足りないまま入試を迎えてしまった人もいるかもしれないが、基本問題なので確実に得点したい。
  • (2)も波の干渉の考え方を用いて解けるので、確実に得点したい問題である。θのとり方が光の干渉の問題と違い、法線からの角度ではなく結晶面からの角度なので注意したい。また、位相差による干渉条件の考え方に慣れていなかった人もいるかもしれないが、京大受験生であればマスターしておきたい
  • (3)および問1は「2つの経路に経路差は無いが、中性子がABを進むときの速さと、DCを進むときの速さに違いがあるため、位相差が生じる」という考え方をすんなりと受け入れられたかがポイントである。京大で頻出の近似計算も出てきたが、ミスの無いように慎重に解答したい
  • 問2は問1のggsinαと置き換え、与えられたm2g/h2の値を代入できるように式変形を行うことがポイントであるが、少々計算が面倒なので注意したい。値を代入した後は基本的な計算問題なので、最後まで気を緩めないように注意して解答したい。

 攻略のためのアドバイス

京大物理を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 問題文を読解する力

京大物理は問題文が長く、問題の設定を理解することに時間がかかる場合が多い。設定をきちんと把握するためには、相当の読解力が必要である。問題文にはヒントが含まれていることも多く、この読み取りが合否を分ける

●要求2●正確かつ迅速に計算する力

京大物理では、例年、設問で与えられる記号(物理量)が多く、設問数も計算量も多い。このため、煩雑な計算をミスなく、かつ速く解く必要がある。

要求3● 解くべき問題を見極める力

京大物理は、例年、問題文が長く計算量も多いため、時間内にすべて解くのは厳しい。このため、試験開始直後に問題全体にざっと目を通して解くべき問題を見極め、解答に必要な時間を適切に配分することが、合格点の確保に向けて重要となる。大問の途中で解けない設問があっても、最後の方に独立して解ける設問がある場合が多いので、諦めず全体に目を通し、「解ける設問を確実に解く」姿勢が、合格には必須である。

 

対策の進め方

まずは、●要求2●を意識して、ミスなく要領よく解答できる力をつけよう。次に、基礎力がある程度ついたら、京大レベルの問題に慣れていこう。Z会の通信教育[本科]「京大コース」では、読解力向上や重量級の計算にも対処する力の養成を念頭においた出題を行っている。

また、●要求1●●要求3●は実戦演習の中で培われる力である。京大物理は、早めに基礎を固め、徐々に長い問題文に慣れていかないと、太刀打ちできない。自分の得意不得意、問題の難易度を意識し、試験時間をめいっぱい活用して得点を最大化できるような解き方を身につけてほしい。

Z会で京大対策をしよう

Z会京大物理担当者からのメッセージ

本年度の京大物理は標準的な難易度に落ち着き、2020年度、2019年度に比べれば、取り組みやすい試験でした。しかし、依然として分量や計算量は多く、時間内に全ての問題に解答するのは難しかったでしょう。物理問題Ⅰは、解答の方針は立てやすいものの、やや煩雑な計算を要領よく処理する力が求められました。物理問題Ⅱは、前半は基本的な問題ですが、後半については、見慣れない式が出てきて戸惑ったり、現象を正しく捉えられなかった人もいたでしょう。物理問題Ⅲは久々の原子分野からの出題で、身構えてしまった人も多かったかと思いますが、前半は波動分野の知識で解ける基本的な問題ですので、確実に解答したいところです。

全体を通して、各大問の前半部分は基本〜標準的な問題が多いため、京大物理においては基本〜標準問題をいかにすばやく確実に解答できるかが重要です。また、他の受験生と差がつく「やや難」レベルの問題や、目新しい題材の問題をいかに多く解けるかが、合格の鍵と言えるでしょう。

京大物理の出題をみると、最初は面食らうかもしれませんが、目新しい題材ほど誘導が親切で、解きやすいことが多いです。大切なことは2回書いてくれたり、途中で検算になるヒントを散りばめたりしてくれていますので、ヒントを見落とさず、確信をもって解き進められるようになってほしいです。

Z会の通信教育[本科]「京大コース」では、問題文から状況を正しく読み解き立式する練習を通して、難易度の高い京大物理にも対応できる力を養います。演習を繰り返すことで、京大で頻出の目新しい設定の問題に出会っても、最後まで解ききる力が身につきます。粘り強い演習を積み重ねて、京大合格を勝ち取りましょう!

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