Z会の大学受験担当者が、2025年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。
Z会化学担当者からのメッセージ
京大化学は、長いリード文を正しく読解し知識を応用させて思考する必要がある、難度の高い問題が出題されます。ただ、難しい問題のみで構成されているわけではなく、平易な小問も含まれています。これらの小問をミスなく手際よく解き進める得点力も備えている必要があります。
読解力・思考力・有機化学の幅広い知識などといった、京大化学攻略に必須の力は、今後も求められることに変わりはありません。Z会の通信教育・京大講座では、対策が遅れがちな天然有機化合物や高分子化合物の範囲も扱いますし、長いリード文をとおして読解力を養う問題も出題しますので、京大化学攻略に必要な力を養うのに最適です。また、京大は結果重視の採点であることが多いため、自己採点ではついつい単なる答え合わせにとどまりがちですが、京大講座では添削指導をとおして結論に至る過程のミスも分析し、得点力を高めます。結果として、途中過程を問う問題が出題された場合に対応できる実力も養成できます。京大講座で学習を積み重ね、京大合格を勝ち取りましょう!
今年度の入試を概観しよう
分量と難度の変化 (理科…1科目90分、2科目180分)
- 難易度は2024年度からやや易化
- 分量は2024年度からやや減少
2025年度入試の特記事項
- 例年どおりすべて記述形式で、解答用紙には各問いに対応する解答欄があった。
- 例年どおり、大問として理論・無機2題、有機2題(うち1題は天然高分子化合物の分野)が出題された。2024年度は化学問題Ⅰ、Ⅲ、Ⅳが中問に分かれていたが、2025年度は化学問題Ⅱ、Ⅳが中問に分かれていた。
- 例年、長い問題文を読み解き、高校化学の知識をフル活用して考えさせるような、思考力・応用力が必要な設問が出題されている。2025年度でもそのような設問はところどころにみられた一方、著しく解答の糸口が見つけにくい問題はみられなかった。
- 問題ページ数は18 → 17と、2024年度と同程度であった。しかし、中問に分かれた大問数も3 → 2と減少したうえ、計算の量も減少したため、2024年度に比べて負担感は軽減された。
- 近年出題されなかった、導出過程を書かせる計算問題や、字数制限のある論述問題が復活した。
合否の分かれ目はここだ!
- 解答方針が比較的立ちやすい化学問題Ⅲは、手際よく解答を進めたい。さらに他の大問に含まれる平易な設問は押さえたい。そのうえで、読解力・思考力が必要な化学問題Ⅱ(a)や、各大問に含まれる論述問題や途中過程を答える問題で、どれだけ正解できたかが合否の分かれ目になったであろう。
さらに詳しく見てみよう
大問別のポイント
化学問題 I
理論・無機 環境水や排水中の汚濁物質の定量や除去、金属イオンの分離 [標準]
環境水や排水中の汚濁物質の定量や除去を題材に、酸化還元反応の量的関係を問う問題を中心に出題された。
- 問1は化学的酸素要求量に関する問題で、酸化還元反応の量的関係の計算と、酸化剤の量の換算など、大学入試で頻出の内容であった。
- 問2は塩素のオキソ酸に関する問題である。ここまでは基本的なので、取りこぼさずに得点したい。
- 問3〜問4は電子を含むイオン反応式から化学反応式をつくる問題だが、反応物に酸性塩が含まれるため、イオン反応式から化学反応式をつくる段階でやや苦労した受験生もいたかもしれない。
- 問5は溶解度積と絡めた、化学反応の量的関係に関する問題で、計算過程が問われた。反応後の溶液を部分的に取り分けている点や、反応時の溶液の体積が90mLではなく100mLである点など、細かい部分の見落としがないように注意したい。
- 問6は、金属イオンの硫化物沈殿の生成とpHの関係を押さえておく必要があり、詳細な知識が要求された。
化学問題 II
(a):理論 ラウールの法則、蒸気圧降下 [標準]
ラウールの法則、蒸気圧降下に関する問題。中問を通して、溶液中に存在する溶質粒子や、オイルの液面差hの原因について各操作ごとに把握できるかが問われた。とくに、操作3はNa+、Cl−に起因する蒸気圧降下の影響を除いて考えるための操作であることを理解するのがやや難しく、問3の(ii)は差がついたものと考えられる。
(b):理論 電離平衡、中和滴定 [標準]
電離平衡の問題。問5は電気的中性条件の式、物質収支の式を立てる設問で、難関大では時折見かけるものであり、演習経験の有無で取り組みやすさに差がついただろう。問6では字数制限のある論述が出題されたが、考察すべき内容は標準的な内容である。問7は途中過程を記述する問題で、題材は二段階滴定に関する見慣れたものだが、計算がやや煩雑であるため、答にたどり着くには手間がかかる。
化学問題 III
有機 環構造をもつ有機化合物、ラクトンの構造決定 [やや易]
環構造をもつ有機化合物を題材にした問題。大問全体として、京大の有機化学の問題としてはかなり取り組みやすかったので、ここで十分に得点しておきたい。
- 問1〜問3は環構造のひずみに関する問題で、問3は、三員環、四員環がともに解消されるような化合物が得られやすいことがポイントであった。
- 問5の構造決定は、問題文内に与えられた情報が平易であるので、取り組みやすかったと思われる。
- 問7は字数制限のある論述で、考察すべき内容は難しくないが、字数制限の中で文章のみで説明するのは少し難しかったかもしれない。
化学問題 IV
(a):糖類の酸化的分解、アミロペクチンの分岐数の考察 有機 [標準]
酸化的分解により、アミロースやアミロペクチンの構造について考察する問題。2022年度にも類似の題材が出題されているので、過去問演習を行っていた受験生は取り組みやすかっただろう。
- 問2はやや立式の方針に迷うかもしれないが、反応物と生成物の物質量は変わらないことがカギである。
- 問3はアミロペクチンの分岐数を求める問題。分岐数と、非還元末端の数・還元末端の数、生じるギ酸の分子数の関係に気付けるかがポイントで、思考力が要求された。
(b):有機 シクロデキストリン、ペプチドの決定 [標準]
シクロデキストリンおよびそのアミノ化を題材とした問題。
- 問4では、イオン交換樹脂に関する理解が問われた。
- 問5は、条件を満たすアミノ化シクロデキストリンを決定する問題。候補は高々3種類であり、それぞれに対して加水分解生成物の種類を数え上げればよいが、その際には抜け漏れや重複がないように注意したい。
- 問6はシクロデキストリンのグルコース単位数を求める問題。
- 問7はペプチドの配列を決定する問題で、2024年度に引き続き出題された。アミノ酸の候補は多いが、与えられた条件は使い方がわかりやすいうえ、条件(う)、(え)だけでアミノ酸とその配列はかなり絞られるので、難易度はあまり高くない。
攻略のためのアドバイス
京大化学を攻略するために、高校化学の内容を完全に理解したうえで、それを応用する問題に意欲的に取り組んでほしい。また、出題範囲の約半分を占める有機化学は重点的に学習し、幅広い知識とその活用力を養成してほしい。
京大化学を攻略するには、次の3つの要求を満たすことをめざそう。
●要求1● 思考力
高校で学習する内容をそのまま当てはめるだけの問題も出題はされるが、合否の決め手となるのは、高校範囲の知識を応用させて自分で考えなければならない問題である。このような問題を考える力、またそれに立ち向かおうとする姿勢がない限り、合格を手にすることはできない。
●要求2● 読解力
京大化学の大きな一角を占めるのが、空欄補充形式の問題である。また、受験生が目にすることの少ない題材を取り上げ、それを理解した上で解答する問題も出題される。初見の題材であっても、限られた時間の中で問題文を読みこなし、正確に内容を理解する力が要求される。
●要求3● 有機化学分野の幅広い知識と活用力
京大化学では、出題の約半分を有機化学が占める。高校範囲の内容理解はもちろん必須であるが、読解や思考の前提となる幅広い知識と深い理解が必要となる。構造決定や立体配置の問題はとにかく演習をたくさん積んでおきたい。また、天然有機化合物の分野は、基本知識に穴がないように早めに対策をしておくこと。
対策の進め方
高校化学の完成
まずは、高校化学の内容を完全に理解することから始めよう。高校化学の内容で曖昧な部分があると、要求①を満たすことはできない。Z会の通信教育、Z会の教室などで、基本的な各単元の理解を確認しながら学習を進めていこう。
本番形式での演習と有機化学の補強
高校化学の内容を理解したら、次に要求①を満たすために、Z会の通信教育、Z会の本などで、高校範囲の内容を応用させて考える問題に取り組んでみよう。これらの問題は問題文が長いことが多いため、並行して要求②を満たしていくこともできる。また、要求③を満たすため、有機化学の補強も重点的に行っておきたい。
計算力の強化
煩雑な数値計算を要するものもあるので、計算力も必要である。そのため、普段の問題演習では、実際に手を動かして計算し、計算自体にしっかり慣れておこう。
Z会でできる京大対策
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