「京大化学」個別試験分析(2022年度)

Z会の大学受験担当者が、2022年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化 (理科…1科目90分、2科目180分)

  • 例年、難関大化学入試の中ではトップクラスの難度であり、2022年度も同様であったが、2021年度に比べればやや落ち着いた。引き続き、大問間の難易度差はかなり大きかった。
  • 大問4題構成であるのはこれまでと同じである。ここ2年は、中問に分かれていない大問が半数程度出題されていたが、2022年度はすべての大問が中問に分かれており、数年前の形式に戻った。
  • 問題ページ数は15→20に増加した。すべての大問が中問に分かれていたうえ、2021年度に比べて問題文が長く、時間的な余裕はほとんどなかっただろう。

2022年度入試の特記事項

難度の高い設問は相変わらず多いが、2021年度に比べれば難易度はやや穏やかであった。

  • 長い問題文を読み解き、高校知識をフル活用して考えさせるような、思考力・応用力が必要な出題が見られた。
  • 無機分野の知識を必要とする問題は非常に少なかった。
  • 2021年度に出題があった論述問題は、今年度は出題されなかった。
  • 導出過程を書かせる計算問題が、2020年度以前は毎年数題出題されていたが、2021年度以降は出題されていない。計算問題は立式だけでなく、正しい答までたどりつかないと得点につながらない解答形式である。

Z会の教材が的中!

2022年度の化学問題IV(b)「<有機>糖鎖の分解」は、Z会の通信教育[特講]「直前予想演習シリーズ」の京大化学で扱ったテーマであった。Z会の教材で学習していれば、入試本番で自信をもって取り組めたと考えられる。

合否の分かれ目はここだ!

  • 解答方針が比較的立ちやすい、化学問題Ⅰ(a)、化学問題Ⅱ(b)、化学問題Ⅲ、化学問題Ⅳ(a)あたりは手際よく解答を進めたい。さらに他の中問に含まれる平易な小問は押さえたい。
  • その上で、読解力・思考力が必要な問題でどれだけ正解できたかが合否の分かれ目になったであろう。また、すべての問題を解答するには時間が非常に厳しく、解くべき問題の見極め力もカギを握っていた
  • 化学問題Ⅰ(b)や化学問題Ⅱ(a)のような問題で誘導にうまくのって考えられなかった場合や、化学問題Ⅳ(b)のような問題文の把握の負担が大きい問題は、ある程度のところで割り切りも必要だったかもしれない。
京大化学で対策必須の
「読解力」「思考力」
が身につく講座もご用意



さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 化学問題 I  

(a)<理論・無機> アルカリ土類金属の水酸化物の溶解度、熱分解

  • 問題文で扱われている内容や登場する物質などはいずれも見慣れたものが多い。
  • 一方、やや煩雑な数値計算を繰り返す必要があり、手間がかかる割に設問数が多くない。時間をかけすぎないように注意が必要である。
  • 問3カは、水和物の形成にともなう溶媒の水の減少を考慮する必要がある。

(b)<理論> クロム酸塩の溶液内平衡

  • 化学平衡に関する問題文の誘導に従いながら数式の空欄補充をしていく、という京大化学頻出の形式である。
  • コ以降の空欄補充は、式とグラフを交えた濃度の考察である。空欄をそれぞれ求めるために着目する式を、適切に選べるかどうかがポイントである。

 化学問題 II  

(a)<理論> 弱酸の分配平衡

  • 化学問題Ⅰ(b)に続き、数式の空欄補充が中心の問題である。
  • 空欄ウを正解できるかどうかで、その先の空欄を埋められるかどうかが大きく変わってくるであろう。
  • 問3では、図2の意図をしっかり見極める必要がある。どの式に着目してこのグラフが作成されたのかを考える必要がある問題であった。

(b)<理論> 浸透圧

  • 浸透圧の問題。
  • 見た目はオーソドックスだが、問7は中途半端な理解では正解できず、しっかり考えないと足元をすくわれる。
  • この分野の腕試しとして、京大志望以外の受験生も取り組んでみるとよい問題である。

 化学問題 III  

(a) <有機> アミンと酸ジクロリドの反応

  • 高校化学では扱わない反応だが、アミンとカルボン酸の反応と類似しているため、問題文の把握もそれほど難しくはない。
  • 京大の有機化学としては極めて平易な部類に入るので、ここで失点してしまうと厳しくなる

(b) <有機> アミドの構造決定

  • 中問に分かれているが、題材としては(a)から連続した問題である。
  • 化合物Hを部分的に加水分解して化合物Iが生成するときに、不斉炭素原子が出現することが、構造決定のポイントである。
  • (a)とともに京大の有機化学としては易しく、何としても得点したいところである。

 化学問題 IV  

(a) <有機> 糖類の性質と立体化学

  • 糖類の鎖状構造と環状構造の関係や立体化学、糖類の還元性に関する問題である。
  • 問2では、エンジオール構造を経由することで、グルコースの2位の炭素原子のまわりの立体配置が変化した化合物が生成することを見抜けるかどうかがポイント。
  • 問3は、化合物の数は少なく、構造も選択肢として与えられているが、構造を一つ一つ検討していく必要があるため、意外と手間がかかる

(b) <有機> 糖鎖の分解

  • 糖鎖を分解して、糖の構造を決定していく手法を題材とした問題。
  • 設問に解答するための知識は問題文に与えられているが、それほど頻出とはいえない題材であり、問題文を読み込んで理解する負担が大きい問題であった。
  • とはいえ、京大受験生であればこれまで取り組んだ経験のある人もいただろう。Z会の通信教育[特講]「直前予想演習シリーズ」の京大化学でこのテーマを扱っており、Z会の教材で取り組んでいれば、入試本番で自信をもって取り組めたと考えられる。
  • 問題文の読み込みの負担を考えると、時間内に完全に解き切るのは厳しかったと考えられる。

 攻略のためのアドバイス

2022年度の京大化学は、難度が前年比でやや落ち着いたものの、相変わらず長いリード文を正しく読解し知識を応用させて思考する必要がある、難度の高い設問が目立った。ただ、このような出題はかつての「京大化学」らしい出題であり、思考力・読解力といった力を試す内容であるという根本的な特徴は、今後も変わらないと考えられる。

京大化学を攻略するために、高校化学の内容を完全に理解したうえで、それを応用する問題に意欲的に取り組んでほしい。また、出題範囲の約半分を占める有機化学は重点的に学習し、幅広い知識とその活用力を養成してほしい

京大化学を攻略するには、次の3つの要求を満たすことをめざそう。

●要求1● 思考力

高校で学習する内容をそのまま当てはめるだけの問題も出題はされるが、合否の決め手となるのは、高校範囲の知識を応用させて自分で考えなければならない問題である。このような問題を考える力、またそれに立ち向かおうとする姿勢がない限り、合格を手にすることはできない。

●要求2● 読解力

京大化学の大きな一角を占めるのが、空欄補充形式の問題である。また、受験生が目にすることの少ない題材を取り上げ、それを理解した上で解答する問題も出題される。初見の題材であっても、限られた時間の中で問題文を読みこなし、正確に内容を理解する力が要求される。

要求3● 有機化学分野の幅広い知識と活用力

京大化学では、出題の約半分を有機化学が占める。高校範囲の内容理解はもちろん必須であるが、読解や思考の前提となる幅広い知識と深い理解が必要となる。構造決定問題はとにかく演習をたくさん積んでおきたい。また、天然有機化合物の分野は、基本知識に穴がないように早めに対策をしておくこと

対策の進め方

まずは、高校化学の内容を完全に理解することから始めよう。高校化学の内容で曖昧な部分があると、●要求1●を満たすことはできない。Z会の通信教育で、基本的な各単元の理解を確認しながら学習を進めていこう。

高校化学の内容を理解したら、次に●要求1●を満たすために、Z会の通信教育、Z会の本などで、高校範囲の内容を応用させて考える問題に取り組んでみよう。このタイプの問題は問題文が長いことが多いため、並行して●要求2●を満たしていくこともできる。また、●要求3●を満たすため、有機化学の補強も重点的に行っておきたい。

空欄補充形式の中には数値計算を要するものもあるので、計算力も必要である。そのため、普段の問題演習では、実際に手を動かして計算し、計算自体にしっかり慣れておこう。また、論述対策として、日頃の学習から現象や操作、それらの理由を理解し短い字数でまとめる訓練を積み重ねておこう。

Z会で京大対策をしよう

Z会京大化学担当者からのメッセージ

繰り返しにはなりますが、京大化学は、長いリード文を正しく読解し知識を応用させて思考する必要がある、難度の高い問題が多く出題されます。ただ、難しい問題が多くても、平易な小問は含まれています。これらの小問をミスなく手際よく解き進める得点力も備えている必要があります。

読解力・思考力・有機化学の幅広い知識などといった、京大化学攻略に必須の力は、今後も求められることに変わりはありません。Z会の通信教育[本科]「京大コース」では、対策が遅れがちな天然有機化合物や高分子化合物の範囲も扱いますし、長いリード文をとおして読解力を養う問題も出題しますので、京大化学攻略に必要な力を養うのに最適です。

また、京大は結果重視の採点のため、自己採点ではついつい単なる答え合わせにとどまりがちですが、Z会の通信教育[本科]「京大コース」では添削指導をとおして結論に至る過程のミスも分析し、得点力を高めます。Z会で学習を積み重ね、京大合格を勝ち取りましょう!

合格から逆算した対策ができる
Z会の「京大コース」で着実に力を伸ばそう!

Z会の大学受験生向けコース[本科]「京大コース」は、京大入試の詳細分析を基に設計。入試本番から逆算して、合格に必要な力を段階的に身につけられる学習プログラムをご用意しています。京大受験のプロであるZ会だからこその教材&指導で、京大合格へと導きます。

     

    CVエリア

    「Z会の通信教育」では、京大受験生向けの講座を多数開講中!

    無料の資料請求も受付中!