Z会の大学受験担当者が、2022年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。
今年度の入試を概観しよう
分量と難度の変化 (地歴…時間:90分)
- 例年通り大問Ⅰ・Ⅲは300字論述(各20点)、大問Ⅱ・Ⅳは長文下線部・空欄補充(各30点)の大問4題構成。
- 全体的な難易度は例年並みであった。
2022年度入試の特記事項
- 例年同様、大問Ⅰ・Ⅱがアジア史中心、大問Ⅲ・Ⅳが欧米史中心の出題であった。
- 例年は小論述が5問程度出題されていたが、2022年度は、2021年度に引き続き1問出題されたのみであった。
- 2022年度の大問Ⅱ・Ⅳは語句記述問題と小論述のみで構成され、2021年度で見られたような4文正誤問題は出題されなかった。
- 古代から戦後まで、幅広い時代から出題された。
合否の分かれ目はここだ!
90分という制限時間に比してかなり問題量が多いのが特徴である。大問Ⅱ・Ⅳでそれぞれ30問程度の小問が課される上に、大問Ⅰ・Ⅲで300字の論述問題が課されるため、時間配分が重要となる。
- 大問Ⅱ・Ⅳは、2021年度に引き続き小論述の問題数が少なく、取り組みやすい問題が多かったため、失点は最小限に留めたい。大問Ⅱ・Ⅳを手早く処理し、大問Ⅰ・Ⅲに十分に時間をかけることがポイントである。
- 大問Ⅰ・Ⅲの論述問題は、必要となる知識は教科書レベルであったが、問題の条件に沿って書くべき内容をしっかりと見極め、まとまりのある解答に仕上げる工夫が必要であった。
- 一部の問題でやや細かい知識が必要となったものの、苦手な分野や学習が手薄な範囲を残さず、教科書の全範囲を丁寧に対策していれば、高得点を確保することが可能であった。
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大問別のポイント
大問 I
15世紀から16世紀初頭までのマラッカ王国の歴史について説明する論述問題であった。
- 外部勢力との政治的・経済的関係および周辺地域のイスラーム化に与えた影響に言及するという問題の要求に、的確に応える必要があった。
- 必要となる知識は概ね教科書レベルであったものの、学習が手薄になりがちな東南アジア史からの出題であったため、字数を埋めるのに苦労した受験生もいたであろう。
- 外部勢力や周辺地域について、具体的な国名を挙げつつ正確に説明できたかどうかで差がついた。
大問 II
A:歴史的「シリア」の歴史をテーマに、古代から戦間期まで幅広く出題された。
- (12)は学習の盲点になりがちな用語から出題されたものの、概ね基本的な出題であり、手堅く得点したい。
B:中国の歴代王朝の人口をテーマに、近・現代の中国史を中心に出題された。
- (15)と(23)では、やや細かい用語が問われた。
- 空欄dおよび(25)・(26)は戦後史からの出題であったが、どれも平易な問題であった。
大問 III
民主政アテネと共和政ローマについて、国政の中心を担った機関とその構成員の実態について説明する論述問題であった。
- 必要となる知識は教科書レベルの基本的なものであったため、史実誤認や不正確な表現はできる限りなくしたい。
- 問題の要求をしっかり把握したうえで、解答に盛り込むべき事項を取捨選択する必要があった。指定された年代から外れた事項や、主題とは関係のない事項を書いても、得点には結びつかないので注意しよう。
大問 IV
A:ヨーロッパの大学をテーマに、中世から近代までの欧米史から出題された。
- (4)は基本的な用語が問われたものの、設問文中にヒントが少なく、やや難しかった。
- (7)(イ)は2022年度の問題で唯一の小論述問題であった。イングランドにおけるカルヴァン派がピューリタンと呼ばれたことは、多くの受験生が説明できたであろう。そのうえで、設問の要求通り、ピューリタンの宗教的立場を解答に盛り込もう。
B:石炭が近代ヨーロッパの歴史に与えた影響をテーマに、近・現代のヨーロッパ史から出題された。
- 概ね基本的な出題であったため、失点は最小限に抑えたい。
- (19)は冷戦終結後の時代から出題されたため、対策が及んでいなかった受験生もいたかもしれない。
攻略のためのアドバイス
京大世界史を攻略するには,次の3つの要求を満たす必要がある。
●要求1● 教科書全範囲の基礎的知識を網羅する「知識力」
まずは、「知識力」の養成を。遅くとも受験生の夏休み終了までには、全時代の概略と、教科書の太字語句の意味を押さえることを目標にしよう。並行して論述問題にも取り組み、「知識を文章でまとめる」ことにも慣れていきたい。
●要求2● 問題の要求を的確に捉える「読解力」
京大世界史攻略のためには、知識力の養成と並行して論述問題にも取り組み、本番まで定期的に問題演習を行う習慣をつけてほしい。
問題の要求を的確に捉える「読解力」を身につけるためには、問題文を丁寧に読むことが重要である。何となく知っていることを羅列するのではなく、問題文中の時代・地域の指定、「意義」「背景」「経緯」「変化」「特徴」「影響」などといった問いかけに対して、最も適した解答を意識しながら解答を作成しよう。
復習時に自分の解答作成の過程を確認するために、草稿メモをノートに記録しておくことも有効である。
●要求3● 短い時間の中で最大限の結果を出す「処理力」
時間に比して分量の多い京大世界史で確実に得点するためには、時間の使い方も重要である。模試を受験する際に、問題に取り組む順番を工夫するなど、限られた時間内で最大限の成果に結びつける訓練を積むとよい。
共通テスト終了後は、京大入試と同じ分量・構成の問題セットを時間を計って解き、「知識力」・「読解力」を土台とした表現力に磨きをかけつつ、本番での時間配分を想定して、「処理力」を鍛えていこう。
Z会で京大対策をしよう
京都大学の世界史入試は、教科書の流れに沿って用語の内容、因果関係、世界史上の意味・意義などを丁寧に学習していれば、ほぼ対応可能な問題です。出題傾向の変化が少ないので、大問Ⅱ・Ⅳでは取りこぼしを最小限にするように、大問Ⅰ・Ⅲでは問題の要求に的確に応えた解答を書き上げられるように、着実に対策を行っていきましょう。
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