第3回 夏休みの読書感想文、書き方テクニック10選 ~小学6年生のあなたへ~

執筆者:鈴木亮介(Z会進学教室 調布教室長/国語科)
記事更新日:2021年7月23日

一味違う、読書感想文を書こう!【後編】

前回の記事「夏休みの読書感想文は「なぜ」と「もしも」で解決!」に引き続き、長年小中学生の論作文指導に携わってきた鈴木亮介が読書感想文についてお伝えします。

前回は本の選び方、そして読み方についてお伝えしましたが、今回はいよいよ「書き方」についてお話しします。

「作文はニガテ。何を書いていいかわからない」「めんどくさい」という6年生の皆さんの声が画面の向こうから聞こえてきそうです。保護者の方からも「あらすじばかり長々書いて、感想は『おもしろかったです』の一言だけ…」という心の嘆きが聞こえます。誰が書いても同じような「金太郎飴作文」は、去年までで卒業しましょう!

あらすじはなるべく短く

どんな内容だったのか読み手に伝えるために、あらすじを書くことは大切。しかしあらすじが長すぎてしまっては、あなた自身の個性が作文に表れず、また読み手も退屈してしまいます。「できるだけ簡潔に要約する」練習は、中学に入ってからの国語の読解力、表現力を上げるためにも大切です。

物語(小説)であれば「中心となる『テーマ』」、「主人公の心情の『変化』」に絞って書くと良いでしょう。ストーリーを紹介する場合は、「起承転結」の「転」までで止めて、最後まで書かないことで読み手の興味を引くのも良いでしょう。

説明的文章の場合は「話題(何について書かれた本か、テーマとも言います)」と「結論(その話題について、筆者はどのように主張しているか)」を軸にまとめましょう。「●●について書かれた本。その中で●●が大切だと書かれている」といった書き方です。

△感想 → ◎意見 を書こう

「読書感想文」とは言っていますが、大切なのは自分の思いを「感想」にとどめず「意見」にしていくことです。

ところで、あなたは「感想」と「意見」の違いを説明できますか。「○○だと思います」と書いたら全部意見になる、というわけでもないのです。例えば次のような文章はどうでしょう。

・今日は気温が高くて、暑いと思います。
・アイスクリームは夏に人気だと思います。

そもそもこれは 「意見/感想」というよりは「事実」に近いですね。「私がそう思った」だけではなく「誰が考えてもそう判断できる」ものは客観的事実となります。気温が5度で雪が降っているときに「今日は暑いと思う」と言ったら個人的意見ですが、気温が30度で多くの人が汗をかきながらうちわであおいでいたら「今日は暑い日です。」と、事実として説明する必要があります。

そして、感想と意見の違いは、「問題提起や主張になっているかどうか」です。具体的な文章で比べてみましょう。

・道端にゴミが落ちていて、良くないなと思いました。 → 感想
・道端にゴミが落ちていて、掃除したいと思いました。
 通行人のマナーを改善せねばなりません。 → 意見

困ったときの展開言葉「なたもと」

さて、意見を書き始めたものの文章が長く続かない、という人もいることでしょう。そんなときにおすすめしたい、魔法の言葉。展開の接続語です。

【な】 なぜなら:意見の理由、根拠を説明してみましょう。前回の記事で「なぜ?」が考える起点になると話しました。「なぜ?」に対して自分なりの答えを考えることも大切です。
【た】 たとえば:作文はまとめず広げていくこと、具体化していくことが大切です。考えたことの具体例を挙げて説明してみましょう。自分自身が体験したことや、身近で起こっている事例、最近のニュースなどにも視野を広げていきましょう。
【も】 もしも:想像の世界は自由。物語だったら「もしも自分が登場人物だったら…」と考えるもよし。説明文だったら「もしもこの課題が解決したら…」と自分の理想とする未来をイメージするもよし。仮説を立てて、実証していくことが大切です。
【と】 ところで:煮詰まったときは話題を変えてしまいましょう。読書感想文に本のことしか書いたらだめ、なんてルールはありません。出てきた言葉から連想した違う話をすることで、意外な関連が発見できるかもしれませんよ。

書き出し千両!

ここまでのアドバイスを参考に、読書感想文を書き終えた皆さん。何か忘れていませんか?そう、「推敲」です。もう一度読み返し、誤字脱字やおかしな表現がないか確認しましょう。…というのは誰でもできる「推敲」なので、ここでは上級編のテクニックをお伝えします。「題名」と「書き出し」を、もう一度考えて書き直してみましょう。

まず題名。「○○を読んで」「○○について」なんてタイトルになっていませんか?題とは読み手が一番初めに目にするところ。第一印象で面白そうな文か、ありきたりな文か、が決まってしまいます。一味違う、オッと目を引くような言葉を選んでみましょう。

書き出しの数行についても同様です。たとえばセリフからいきなり書き出すというのも良いですね。YouTubeやテレビ番組でも、インパクトのあるシーンを最初にちらっと見せて、興味を持たせようと編集していますよね。文章についても書き出しのインパクトが大切です。

実は私もかつて某出版社の作文コンクールの一次審査に何度か関わったことがありますが、数万通の作品に一つ一つ目を通し、おおよそ1割(それでも何百通)に絞るためには、一作品あたりにかけられる時間はせいぜい数十秒。タイトルと書き出しをパッと見て(読むというより見る)、「続きを読むか」「読まずに落とすか」を瞬時に判断していました。そういう現実があることも、皆さんには知っておいてほしいと思います。

「書き方」とは「考え方」

さて、最後まで読んでくださった皆さんはもうお分かりかと思いますが、この記事では「そっくりそのままマネできるような書き方」を一切紹介していません。結局、一番大切なことは何かをコピペして手軽に処理することではなく、自分の頭で悩み、考えることなのです。ただし、どうやって考えたらよいかわからないと、苦痛に感じますよね。よりよく考えるためのヒントをこの記事の中ではお伝えしたつもりです。

ここまで丁寧に読んでくれただけでも、皆さんは普通の小学6年生よりも何倍も素晴らしい読書感想文を書く力を既に身につけています。あとはその装備した技術を、実際に手を動かして使う練習ですね。間違いを恐れず、楽しみながら読書感想文・作文を書いてみてください。

Z会の教室では小学6年生の皆さんのための国語の授業を開講しています。もしよかったら、書いた作文を国語の先生に提出し、添削指導を受けてみてください。Z会の先生たちは皆、あなたの作品を読めることを楽しみに待っていますよ。

【まとめ】読書感想文の書き方テクニック10選
1.物語のあらすじは「テーマ」と「変化」に絞る
2.起承転結の「転」までで止める
3.事実と意見を書き分ける
4.感想より意見を書く
5.「なぜなら」で理由を書く
6.「たとえば」で具体化する
7.「もしも」でイメージを広げる
8.「ところで」で連想する
9.書き終わったら題名を付ける
10.書き出しの数行を推敲して磨き上げる

この記事の著者

鈴木亮介(すずき・りょうすけ)
2013年よりZ会進学教室にて中学生の国語、小6公立一貫校受検コースの文系を担当。立川教室や池袋教室を中心に数多くの6年生の作文指導に携わり、南多摩中、立川国際中、大泉中などの合格者を輩出。2016年よりZ会に入社し、同年より調布教室の教室長を務めるほか、国語科の一員として校正業務、冬期講習単科ゼミ「西の作文」の講座設計・教材作成も担当。肥薩線の三段スイッチバックのごとく「地味にすごい」をモットーに教壇に立つ。

 

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