執筆者:高畠尚弘(Z会の教室 代表/国語科)
記事更新日:2021年7月30日
変わる大学入試
2021年1月、初めての「大学入学共通テスト」が実施されました。「大学入試が大きく変わる」というニュースはよく見るけれど、どのように変わっているの?小学生・中学生のときにどのようなことに気をつけて学習すればいいの?という皆さんの疑問に、長年、受験指導に関わってきたZ会の教室・代表の高畠がお答えします。
変わる大学入試
今、大学入試は大きく変化しています。この変化を3つにまとめてみましょう。
1,「大学入学共通テスト」実施
今までのセンター試験に代わり2021年1月に初めて実施されました。今までよりも思考力を問うものが多く、資料を見て考える問題、身近な話題と関連付けて考える問題など、傾向が大きく変わっています。難易度は予想より上がりませんでしたが、全体的に得点差がついていました。
2,「人物評価型入試」の増加
以前から「推薦入試・AO入試」と呼ばれてきた、学力だけではなくこれまで学んで来たことや、大学で学ぶ意欲を見る入試が広がってきています。東大・京大など最難関大学でも実施されており、今後、定員が増加する可能性があります。
3,「英語4技能」の導入
英検など英語民間検定の成績を入試で活用する大学が増えています。「読む」・「書く」だけではなく、「聞く」・「話す」力も必要になり、今までよりも実用的な英語の力が求められています。英作文で「自分の考えをまとめる」自由英作文が増えていることにも注意が必要です。
さらに、入試問題では記述問題が増えており、以前より「思考力」と「表現力」が必要になっています。このような力は短期間に身につくものではなく、小学生・中学生のうちから、意識して指導することが私たち指導者にも求められています。
「なぜ、そうなるのか」を考えよう。
このように変わる大学入試に向けて、小学生・中学生の皆さんにお伝えしたいのは「なぜ、そうなるのかを考えて学習しよう」ということです。AIなど技術がますます進んで行く中で、これからの社会を担うみなさんに求められているのは、「与えられた知識を使って課題を解決する力」です。ただ知識を覚えるだけではなく、「なぜ、そうなるのか」ということを常に考えて理解しながら学習するようにしてほしいと、Z会の教室では生徒の皆さんに伝えています。そのように考える習慣をつけておくことが、中学生・高校生になって難しい問題を解く際に、必ず生きてきます。
5教科バランス良く学習しよう。
中学校では、英語・数学・国語・理科・社会と多くの教科の学習が必要になるため、得意な教科・不得意な教科にどうしても分かれてしまいます。しかし、今の大学入試では、教科を超えた総合問題が出題されるケースも増えており、バランスの良い学力が求められるようになっています。国語や英語の読解問題で理科・社会の知識が生きてくるように、それぞれの教科はつながっており、早い時期に苦手な科目を作ってしまうと、他の教科にも影響をおよぼしてしまいます。
すべての教科を得意にすることは難しいですが、極端な苦手教科を作らないように、どの教科でも楽しんで学習することが理想です。小学生の内容で不安のある方は、6年生のうちに復習しておくと良いですね。
今の学習が大学入試につながっている!
このような話を聞くと「たいへんだなあ」と思う方も多いと思います。しかし、心配する必要はありません。みなさんは、まずは学校の勉強を基本に、目の前の学習をしっかりと進めれば大丈夫です。このような入試の変化と学習指導要領の改訂を受けて、今、中学・高校の授業も大きく変わっています。小学校の授業で「調べて発表する学習」はありませんでしたか?英語に取り組む時間もありましたよね。みなさんが今、受けている授業の中にも、新しい学力観が反映されていて、それは高校入試、大学入試につながっているのです。
また、高校入試を受験する方は、高校入試と大学入試がつながっていると考えてください。今まで述べてきた「思考力」「記述力」「バランスのよい学力」は、すべて難関高校入試で問われる力と同じで、高校入試の問題もここ数年で大きく変わってきました。だから、ふだんの学習を大切にすれば大丈夫です。
最後に。ふだんから積極的に文章を書いてみることをお勧めします。自分の考えをまとめて、論理的に他人に説明する力は、大学入試でも重視されていますし、その後、大学に行ってから、社会に出てからも必要な力です。知的好奇心を持ってさまざまなことに関心を持ち、それをアウトプットする機会を積極的に作りましょう。
この記事の著者
高畠尚弘(たかばたけ・なおひろ)
Z会の教室代表。Z会の教室で28年間、国語の教科指導と受験指導を担当している。大学受験・高校受験・中学受験のすべてで指導経験が有り、小中高一貫した指導で生徒を人間的に成長させていくZ会の教室の指導を、より多くの子供たちに広げていくことが目標。スタジアムで好きなチームを大声で飛び跳ねながら応援するのが趣味で、早くそんな日々が再び訪れることを願っている。