執筆者:小林裕人(Z会進学教室 町田教室長/数学科)
記事更新日:2021年9月10日
算数好きですか?
今回は、勉強に対する考え方のお話です。これから中学生になる皆さんにとっては、今だけではなく、中学生になっても高校生になっても是非、意識して欲しいと思っています。
「○○年生までは数学は好きだったのに…」
突然ですが「皆さん、数学(算数)は好きですか?」
この質問を小学校の低学年にすると、8割くらいの子どもが好きと答えるそうです。しかし、年齢を重ねるごとに割合は減り、高校生では3割程度になってしまうそうです。
もちろん、高校生になり他にやりたいことが見つかっていたり、思春期で簡単に好きとは言えなくなっているなど他の要因も考えられますが、ほとんどの子どもが好きと言っていたものが、どうしてそんなに嫌われてしまうのでしょうか。
逆に言えば、嫌いな人が多い教科なのに、小さい頃はみんなが好きな教科だというのは、とても不思議ではないでしょうか。
答えは簡単。人の感じる「好き嫌い」は「できるできない」によって決まるからです。
数学(算数)は、できるという達成感を感じやすい教科です。問題を解けと言われ、それに対して答えは1つ。合っていれば正解、ダメなら不正解と単純明快な構造です。
言わば、クイズやゲームのような感覚で楽しむことができます。ですから、問題の易しい低学年のうちは、たくさん達成感を味わえます。丸がたくさんもらえるクイズですから、それは楽しいはずです。だから、比較的多数が「好き」と答えるのです。
しかし、数学は中学校から(人によっては小学校の高学年くらいから)、どんどん難しくなるのです。だから、達成感が味わえなくなります。いくらクイズだのゲームだの言っても正解できないクイズなど面白いはずがありません。ここで数学は「嫌い」という人が増えるのではないでしょうか。
「嫌い」になる頃には、中学生ですから「定期テスト」があります。嫌いなのに勉強しなくちゃいけない。でもやりたくはない。そうすると定期テストの点数は悪い。やっぱり数学は嫌い。と負のスパイラルに陥ります。
どの教科も同じことが言えるかも知れませんが、数学は最初はできる分、挫折感は強く、「○○年生までは数学は好きだったのに…」なんていう言葉もよく聞きます。
「前向きに考える」ではなく「後ろ向きに考えない」
では、数学を教える立場である私は、数学で挫折することはなかったのでしょうか?
そんなことはありません!挫折しまくりです!
中学1年生の方程式の計算テストでは、計算ミスが多く、クラスでビリを取りましたし、中学2年生の証明問題では、先生の指示を守らず自己流で書き、悲惨な点数になったこともあります。
ただ、不思議なことに数学を嫌いになったことはありませんでした。ですから、先ほど言った負のスパイラルに陥ることはなく、テストがダメでも「次のテストはがんばろう」と、軽く流していました。
ここがポイントです。軽く流していただけで、頑張って数学を勉強しようと思ったわけではないのです。実際に、次回は猛勉強するかと言えばしないのです。「前向きに考える」ではなく「後ろ向きに考えない」だけです。
実は今回、1番言いたかったのは「マイナス思考をやめませんか?」ということなんです。
最初の数学嫌いの話も、「嫌い」というマイナス思考を持っているせいで、無意識に勉強の効率を落としていると思っています。マイナス思考で勉強して身につく訳がないのです。
マイナス思考は今日でやめよう
Z会の生徒さんによくあるのは、「Z会は難しい」と決めつけているマイナス思考です。特に、入ったばかりの人や、1年生、2年生に多いと思います。
確かに、一般的な塾でやっていることより少し難しいかも知れませんし、学校の友達などと比べて、塾で一緒に授業を受ける子はできるかも知れません。ですが、入会している生徒はそこに入会しているのです。皆、同じ条件で同じ塾にいるのに、どうしてマイナス思考が働くのでしょうか。
さあ、今日からマイナス思考はやめてみましょう!
繰り返しますが、何でもポジティブに捉えましょうと言っている訳ではありません。ただ、マイナスに考えない。周りの人ができてもできなくても、テストの点が低くても、宿題がわからなくても、悲観的にならずに取り組むんです。
難しいから点数が取れなくても仕方ない。宿題も難しいから全部できなくても仕方ない。授業もテキストも難しいからわからなくても仕方ない。という風に、マイナス思考は全て言い訳になってしまいます。言い訳をすると、当然、勉強をしなくなります。したとしても身につかなくなります。
そんな勉強は楽しくありません!どうせなら楽しく、身になる勉強をしていきましょう!
病は気から。「勉強も気から」です。
この記事の著者
小林裕人(こばやし・ゆうと)
Z会町田教室の教室長。Z会では公立一貫校受検コース、高校受験を目指す小6コース、中学生の数学を担当。中学受験~大学受験まで幅広い年齢層への算数・数学の指導経験があり、それを生かして次学年へとつながる指導を展開している。