執筆者:渡邊翔(Z会進学教室 御茶ノ水教室/英語科)
記事更新日:2021年11月5日
小学英語からENGLISHへ!
こんにちは。Z会御茶ノ水教室の渡邊翔です。2020年より英語(外国語)が小学5、6年生で必修教科化され、注目を集めています。小学校の英語必修化により、中学に向けた英語学習や、高校入試における英語がどのように変わるのか、不安に思われる方も多いことと思います。今回は「小学英語からENGLISHへ!」というテーマで、今必要な「中学準備」を小学6年生の児童の皆さん、保護者の皆様へお伝えします。
「聴く」「話す」中心の学習から、「読む」「書く」学習が増えていきます。
小学3年生・4年生までの「外国語活動」としての英語では、「聴く」「話す」「音」を中心とした学習です。
小学5年生・6年生になると、英語が成績のつく教科となり、学習目標として『外国語によるコミュ ニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、読むこと、 話すこと、書くことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す』のように「読む」「書く」ことが掲げられています。
これまでの学校の授業を通じて多くの英語にふれているため、6年生の時点では色々な単語を知っていると思います。しかし、「聴く」「話す」ことが中心であったため、知っている単語や文でも「読む」「書く」ことを求めてみると『アレ?』となってしまうお子さんがたくさんいます。この『アレ?』という感覚が、中学生からの英語学習で大きなつまずきになっています。
『アレ?』となるか確認してみましょう!
知っている単語や文でも「読む」「書く」になるとどのようくらいの違いがあるのか、次の問題を解いて体験してみましょう。
【問1】次の英単語の意味を日本語で答えなさい。
(1)banana (2)milk (3)August
【問2】次の日本語を英語にしなさい。
(1)太陽 (2)オーストラリア
【問3】次の英文にあるまちがいを直して、全文を書きなさい。
(1)He likes base ball
いかがでしたか?難しい英語は1つもなく、すべて小学校で学習する内容になっています。しかし、小学校での学習姿勢のままで解くと、中学校から求められる力を伸ばすことができなくなる問題ばかりでした。どのような点が、中学校から求められる学習姿勢なのかを確認していきましょう。
【問1】
(1)banana「バナナ」が正解です。「実芭蕉」という和名もありますが、英単語の中にはカタカナ語として日本語に定着しているものがたくさんあるため、英語の音のまま覚えても問題ないこともあります。
(2)milk「牛乳、ミルク」が正解です。牛乳・ミルクのどちらも正解ですが、覚えるときは「牛乳」を優先的に覚えてほしいです。『どっちでもいいじゃん!』と思う人もいるかと思いますが、newsなどの単語を覚えるときに大切な学習姿勢になります。
newsの中心的な意味は「知らせ、便り」です。個人が伝えるときは「知らせ」となり、テレビ・新聞などが伝えるときに「ニュース;報道」となります。このように英単語のなかには、場面によって日本語が変わるものがあります。「いい話があるんだ!」という英作文で、なぜ I have some good news!となるのか、「news=ニュース」とカタカナ語で覚えてしまうと分からなくなってしまうかもしれません。
(3)August「8月」が正解です。意味は簡単だったかと思いますが、この単語は日本語から英語にするときが一番難しいです。「オーガスト」という発音なのに、アルファベット通りに書くことができないためです。どうしてなのかは、次の【問2】で合わせて解説します。
【問2】
(1)「太陽」はsun、(2)「オーストラリア」はAustraliaが正解になります。どちらの単語も発音できる人は多いですが、書くとなるとsanやOstraliaなどとしてしまう人がいます。このようなミスの原因としては、「アルファベットの音」のみで英単語を書いてしまい、「音とつづりの法則」を意識できていないことが考えられます。
英語には、例えば「はっきりと発音するアはuやoで書くことがある」、「オーと伸ばす音はauで書くことがある」などの「音とつづりの法則」があります。このような法則は「フォニックス」と呼ばれています。
改めてフォニックスを意識してAugustをみてみると、「オーと読むauの法則」「アと読むuの法則」に気づけます。さらにそのルールが、sunやAustraliaにも応用されていることがわかります。
【問3】
(1)にはまちがいが2か所ありました。1つは、base ballの間にスペースが空いています。正しくは間を空けないでbaseballとします。もう1つは、文の終わりにピリオド(.)がありません。このようなミスは口頭では気づけないですが、書いて答えることが中心となる中学校からの英語では必ず注意しなければならないポイントになります。
今後はこのような「英文を書くルール」を完ぺきにすることに加えて、『どうしてlikeにsがつくのだろう』など文法的なルールも意識して必要があります。
「4技能」をバランスよく学習していくことが大切です
英会話においては、その場で相手に伝えたいことが伝わることが最優先事項となります。そのため、単語だけで話しても、文法的にまちがっていたとしても、減点などはありません。しかし、これから受ける定期テストや入試では文法的なミスはもちろん、スペルミスも減点されてしまいます。
これまでの「聴く」「話す」という学習を通じて、英語的な正しい感覚は培われてきたと思います。今後は「読む」「書く」という学習を通じて、この感覚に理屈付けをし、たしかな英語力に磨き上げていくことが大切です。
「書く」となると『めんどくさい・・・』と思ってしまう人が多くいます。しかし、一度「書く」ことが習慣化してしまえば、その後の学習はグッと楽になります。重要な単語や文の作りを中心的に学ぶ小6から中1の間に、ぜひ、「書く」こと積極的に取り入れた英語学習をしていただければと思います。
この記事の著者
渡邊翔(わたなべ・しょう)
Z会進学教室の英語科スタッフ。英語を初めて学ぶ人から、難関高校・大学を目指す人まで指導経験がある。「世界一有名なビーグル」を通じて英語を学んだ経験から、「好きなことで英語を学ぼう!」がモットー。