第19回 教えて!校長先生 都立八王子東高校篇 ~小学6年生のあなたへ~

執筆者:鈴木亮介(Z会進学教室 調布教室長/国語科)
記事更新日:2021年11月12日

【インタビュー企画】教えて!校長先生 ~①都立八王子東高校~

Z会の教室による小学6年生の学びを助けるフリーマガジン「親子で始める、中学準備」が、皆さんの憧れる人気校の校長先生にお話を聞くインタビューシリーズ「教えて!校長先生」。記念すべき連載第一弾は東京都立八王子東高校を直撃!宮本久也校長先生にお話を伺いました。中学入学、そして高校受験に向けて頑張る皆さんに心がけてほしいことや、高校選びのポイント、八王子東高校に通う生徒が心がけている「良い習慣」など、6年生の皆さんや、保護者の皆様が今知りたいことをたくさん伺いました。ぜひ最後までお読みくださいね。

東京都立八王子東高等学校

東京都八王子市高倉町68-1
JR中央線 豊田駅北口から 八王子駅北口行バスで「大和田坂上」下車 徒歩6分
または平山工業団地循環バスで「旭ヶ丘中央公園」下車 徒歩6分
JR八高線 北八王子駅から徒歩11分

https://www.metro.ed.jp/hachiojihigashi-h/

宮本久也校長先生は、どんな小学6年生でしたか?

僕は歴史がすごく好きでした。お城が好きで、歴史の本を読んだり親にせがんでお城を見に連れて行ってもらったりとか、そういうことに興味を持っていました。それがそのまま大学で歴史を専攻することにつながり、日本史の教員になりました。好きなことは一生懸命やっても苦ではないですよね。子供の時に自分が興味を持っていたものがそのまま高校に行っても大学に行っても仕事につながったので、それはありがたいことですね。

高校選びは選択肢が多いから大変。早めに調べて

――高校選びのポイント、注意点などを教えてください。

宮本校長:中学までと違って高等学校は一校一校特色がはっきりしているところが多いです。メニューがたくさんあるというのが東京に住んでいる人のメリットだと思います。都立高校は学区もありませんので、行こうと思えば色んな選択肢が入るわけです。選択肢があるということは一見良いことでもあり、逆に「どれを選んだらいいかわからない」ともなります。早い段階から調べて実際に足を運ぶ…コロナが収まってくれば足を運べる機会もあると思うので、それぞれの学校の違いを理解しながら、自分が将来何になりたいのか、どういう道に進みたいのか考えながら自分の可能性が生かせる場所を探すことが一番大切だと思います

――小学6年生にとっては「中学」も「高校」も未知の場所です。「高校」ってどんなところですか?

宮本校長:中学の場合は「高校に行く」という同じ目標を持っていますが、高校から先は自分がどんな道に進みたいかによって行き先が違ってきますよね。自分の将来を真剣に考える場所でもあるし、活動自体が中学に比べて部活も行事も規模が大きくなってきますので、その中で自分を磨く、成長させる場所になると思います。

――その中で八王子東高校はどんな特色がありますか?

宮本校長:本校は進学指導重点校で、高い志を目指す子供たちの進路実現を目指すのがミッションです。特に探究学習という取り組みに力を入れています。これからの時代はまさにコロナもそうですが、答えのない課題が次々と降ってくる中で、知恵を出し合いながら新しい問いに対する答えを自分の力で導き出すことが求められます。八王子東高校は探究学習を通じて、自ら問いを立ててその解決策を導き出すという力をつけることができる学校だと思います。「自ら学ぶ 自ら考える 自ら創る」という3つを本校のキャッチフレーズにしていますが、生徒が自分自身で主体的に学び、自分の頭で考え、新しい価値を自分で作る力を育てられる学校だと思っています。

――学習環境の面でも、落ち着いた環境ですよね。

宮本校長:そうですね。目の前が東京都立大学の日野キャンパスで、落ち着いた学校です。生徒もまじめな子供が多く、コツコツ頑張るという生徒が多く、一人で頑張るのはなかなか大変ですが、頑張る仲間がたくさんいるという環境の中で、みんなと一緒だから励ましあって頑張れたといって卒業していく生徒がとても多いですね。人の足を引っ張らないというか、互いのいいところを認め合おうとしているのはすごくいいことだと思いますね。

――「探究」というのは具体的にどういうことができるのですか?

宮本校長:小中学校の調べ学習は答えがあることについて調べてまとめます。それに対して高校の「探究」は答えのないものを調べていきます。

――「答えのないものを調べる」…具体的にはどのように調べるのですか?

宮本校長:八王子東の場合は3つのステップを踏みます。まず一人一人が自分の興味のあるものをテーマに、自分で調べていきます。1学年320人いるのでその問いは様々です。たとえばダンスが好きな人は、踊りを効果的に見せるためにどういう照明がいいかという問いを立てて、YouTubeのダンス動画をいっぱい見ていって、音楽と照明の関連性をまとめています。あるいは高尾山の標高毎にどこまで登ると植物がどう変わっていくのかという問いを立てて、何回も高尾山に登って写真を撮って植生の変化を調べていくという人もいます。あるいはサッカーにおける効果的な戦術は何かというテーマを立てて、Jリーグからヨーロッパのブンデスリーガ、プレミアリーグの試合を見ていく中で「こういう戦術がいいのでは」と編み出していったり…一人一人が自分のテーマを決めて調べていって、それをまとめて発表する。これが第1段階です。大学の先生にも力を借りてまずは探究の仕方を学びます。

――なるほど。実にユニークですね。これでまだステップ1ですか?

宮本校長:その後、プロの方にも入っていただいて、グループで課題解決プロジェクトに取り組みます。たとえば「なぜ人間の指は5本なのか?4本や6本じゃだめなのか」ということを大学院の先生と一緒に調べていきます。あるいは「八王子を若者にとってもっと魅力的な街にするにはどうすればいいか」ということを、八王子市役所の都市計画課の人や京王電鉄の人と一緒に、生徒は色んなアイデアを出して政策提言をしていくというプロジェクトだったり。あるいは学校の近くにオリンパスという光学機器のメーカーがありますが、内視鏡の仕組みを教えていただき、今後の医療に役立つ新しい機械はどうすれば作れるかを考えたり…およそ10のプロジェクトがあって、半年かけてグループで取り組みます。最後は個人研究に戻って、一人一人がテーマを決めた後、似たようなテーマを持つグループを作って一緒に探究を行います。こうした探究活動は2年がかりで行い、もっとやりたいという人は3年生でも行います。

八王子東に合格するための中学準備 ~高校までに心がけてほしい4つのこと~

――そんな八王子東高校に入りたい!という人は、小学生のうちからどんな準備をしたらよいですか?宮本校長:特別なことをするというよりは、学校の勉強をとにかくしっかりやることです。毎日毎日の授業を大事にして、小中学校で教わることを自分の力にしていくことがベースだと思います。それにプラスして、高校までに4つのことをしてください。一つは、いろんな体験をすること。直接のいろいろな体験、特に本気で取り組んだという体験を持つ生徒は強いです。それから二つ目は得意分野を持つということ。勉強だけでなくほかのことでもいいですが「自分はこの分野は人に負けない」という人は強いです。スポーツでも趣味でも、何かここだけは絶対負けないというものが一つあるとこれからの時代は大人になってもそれが武器になります。三つめはじっくりと物事を考えること。自分の考えを持つことが大事です。

――「じっくり物事を考える」力を育てるために、保護者はどのように子どもと接すれば良いのでしょうか?

宮本校長:「先回りしないこと。子どもに考えさせてください」といつもお願いしています。今はどうしても心配なあまり、過保護になってしまう保護者の方が多いように思います。子どもを失敗させたくないから先回り先回りしてしまうのですが、それでは子ども自身が自分でちょっとした失敗をして、それを乗り越えるという経験ができません。あるいは、ちょっとうまくいかなくなるとすぐにだめだと落ち込んでしまうケースもあります。子どもが考える前に親が「○○ちゃんこれがいいわよね」って親が答えを出してしまうと、子どもはそのレールの上に乗るしかなくなり、自分の考えを持てなくなってしまいます。

――確かに、心配なあまりつい指示をしてしまいますよね。

宮本校長:勉強面に限らず、普段の生活から、何でもいいから子どもに決めさせてください。食べるものでもいいんですよ。ラーメンかカレーかハンバーグか。「何食べたいの?」って。で、何を食べたいか聞いたらそこで終わるんじゃなくて、「どうしてそれ食べたいの?」って聞いてあげてください。「ぼくは麺類が好きだから」って言ってラーメンを食べても構わないし。なぜそれを選択したのかを自分の言葉で言えるような習慣を普段の生活の中でつけていくと、ちゃんと自分の意見が言えるようになります。そして4つのうち最後は、社会に関心を持ってほしい。自分の身の回りのことだけでなく世の中で起こっていることに関心を持つ子供になってほしい。これも親御さんの意識が大事だと思います。ニュースを子供と一緒に見て、その内容について食卓で話してみるのもいいですね。そのほかにも、色んな本を読んで、知識・教養を深めていくことも大事だと思います。

――親子の対話は大切ですよね。

宮本校長:小学生のうちは特におうちのかたから受ける影響は大きいので。これから子供が独立・自立していくための素地は小学生の時代に保護者の方が作っていくというか、関わっていくことが大切だと思います。先回りせずにどんどん失敗させてください。どんどんやらせる環境を作ることが保護者の方の役割だと思います。中学に行けばもっともっと忙しく成って、あるいは高校受験が近づくとそうした体験をする時間もなくなっていくので、小学生の時代であればそのようなことができると思います。

小学6年生のあなたへ メッセージ

自分が将来何になりたいのかということを今の時期からしっかり考えましょう。そして、好奇心や疑問を大切に。好奇心や疑問が人を成長させ、学力を伸ばす根源だと思います。なんでこれってこうなってるのかな?という思いが強い子はすごく伸びていきます。


宮本校長が提唱!高校までに取り組んでほしい4つのこと ~学校の授業を大切に~

1.本気で取り組む体験をしよう

2.誰にも負けない得意分野を持とう

3.じっくり考えよう

4.社会に関心を持とう

 

この記事の著者

鈴木亮介(すずき・りょうすけ)
2013年よりZ会進学教室にて中学生の国語、小6公立一貫校受検コースの文系を担当。立川教室や池袋教室を中心に数多くの6年生の作文指導に携わり、南多摩中、立川国際中、大泉中などの合格者を輩出。2016年よりZ会に入社し、同年より調布教室の教室長を務めるほか、国語科の一員として校正業務、冬期講習単科ゼミ「西の作文」の講座設計・教材作成も担当。肥薩線の三段スイッチバックのごとく「地味にすごい」をモットーに教壇に立つ。

 

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