第20回 正射必中、万事に値する ~小学6年生のあなたへ~

執筆者:篠塚雅之(Z会進学教室 葛西教室/国語科)
記事更新日:2021年11月19日

正射必中、万事に値する

こんにちは。Z会葛西教室で教務スタッフとして皆さんの学習をサポートしている篠塚雅之です。首都圏のZ会進学教室では中1国語の映像授業も担当しています。僕は運動が大好きで、中学校ではサッカー好きのバレーボール部員でしたが、高校ではひょんなきっかけから弓道部に入部しました。初めての射は隣の的付近にぶっ飛んでいくほど「へっったくそ」でしたが、弓を持ったときの”えも言わぬ感覚”に心が惹き込まれた経験は今でも忘れられません。

「勉強」というと机に向かって紙に文字を書いたり、iPadで問題を解くイメージを持つ人も多いと思います。「勉強をする」と言うと、「国語」「算数」といった教科を頭に浮かべる人も多いでしょう。でも、勉強とはそうしたものばかりではなく、日常生活のあらゆる場面で経験できることなのです。部活動もその一つ。今日は弓道から学んだことについて、お話しします。

正射必中とは

弓道で「正射必中(せいしゃひっちゅう)」という言葉があります。「正しい射法であれば必ず中(あた)る」という意味です。弓道を題材とした小説やアニメなどのおかげで、弓道をやっていなくてもこの言葉を聞いたことがある人もいることでしょう。的にあてようと頑張るのでなく、的に自然とあたるということですね。高校時代に弓道部に所属していた頃、未熟ながらも弓が体におさまり、心身が充実していくと、的に矢が吸い込まれ、自然にあたるという感動がありました。

弓道に筋力はいりません。呼吸(息合いと言います)に合わせて、正しい体の使い方ができているかどうかです。筋肉バッキバキの人でも引き分けるのに苦労する弓を、高齢の熟練者はたやすく引き分けてしまうのです。弦を引く右手を馬手(めて)と言いますが、弓というと馬手の力だけで引くイメージを抱くのではないでしょうか。ラジオ体操第一のはじめの深呼吸のように、両手をまっすぐ上にあげ、左右に広げながら下ろしてくる動きと似ていて、どちらかの手だけに意識を向けるということはありません。弓を押すという言葉があることからも、ただ「引く」というだけではないのです。両手は左右に広げ伸ばし、体の縦軸は天地に伸ばす、そして筋の伸ばし具合も呼吸の状態も毎回同じであることが理想です。弓道は難しく、だからこそ僕はのめり込んでいきました。高校時代の弓への思いは三度の飯よりも強いものでした。

「量より質の重要性」を知るきっかけとなる恩師の一言

弓は奥が深いです。指導されたことができて「良い感じかしら」と思っていると、いつのまにか射の型に不自然なクセが出たり、的中率にムラが生じたりと、安定しない状態が定期的にやってくるのです。練習量を増やしても、安定しないどころか下手になっているという状況でした。正しい射の型や呼吸などが身についていないのに数を増やして、正しくない状態で慣れていってしまったのです。

ある日、市営道場で弓道連盟のおじいさま方と一緒に練習をさせていただいていたときのこと。いつも強烈なオーラを放つ連盟の方が、覇気を出しながら発した一言が僕の弓を変えるきっかけとなりました。
「そんなもの弓じゃない、あっちで反省してろ」
がむしゃらになっていた僕には、じっくりと省みるということが欠けていました。

それからのこと、一射した後に、具体的に省みるようにしていきました。両手の筋の感覚、首筋の感覚、息合いなど、足の指先から髪の毛先までの状態を必死で思い出そうという振り返りによって、次の一射では何に注意するかという具体的な改善策が見つかっていきました。少しずつ呼吸に合わせて心身ともに充実した射になり、射が安定していくのが自分でもわかりました。このような練習で、数よりも質という意識になっていき、一日二十射程度まで減らすことを目標にした分、一射を大切にしていきました。

連盟の方からの叱咤による気づきから「一射を大切に」という意識になり「前の射との違いはどんなところか、どうすれば前よりよくなるか」ということを毎回考える時間を設けては一射に臨んでいました。

総体(=全国高等学校総合体育大会、通称インターハイという高校生の大きな大会)の予選では団体の部で県11位という悲しい結果で終わりましたが、嬉しいこともありました。引退間際の5月、指導してくださっていた連盟の方々や、当時の日本一の方なども出場した某神宮の大会で、高校の部、高校・一般の部で総合優勝ができたこと、僕の弓を変える「あっちで反省してろ」と厳しい指導をしてくださった方から「お前は高校生のレベルを超えた」という一言をいただいたことです。未熟ながらもそういった結果を残せたのは、ひとつひとつの動作と徹底的に向き合うという、練習の「質」を大切にすることを教えていただいたからだと思っています。「質」の重要性は弓道だけでなく、学習面でも重要なことだと思っています。

学習だって正射必中の心得

時間をかけてたくさんの問題を解いても、なかなか成績が伸びないという人は、もっと自分にあった学習のやり方があるかもしれません。それを見出すためには、省みること、思考することが必要だと思います。弓道と同じですね。日頃の学習で問題を解く→答え合わせと解説の確認をする、解答までの筋道を理解するために間違えた問題を解き直している人もいるでしょう。

しかし、一度解いた問題は解けるようになっても、初見の問題になると解けないということはありませんか?同じ問題を解き直すことはとても大切ですが、解き直しの際に「なぜその問題を間違えたのか、どこでつまずいたのか、どうすれば正答できたのか」など、解けるようになるために必要なことを導き出すこと、さらに「解答までの流れを言葉にして説明してみよう」ということも、理解につなげていくための大切なことだと思っています。

たくさんの問題を解くだけでなく、ひとつひとつの問題とじっくりと向き合うことを実践してみていただけたら幸いです。

この記事の著者

篠塚雅之(しのづか・まさゆき)

2018年にZ会に入社。葛西教室のスタッフとして、受付・電話対応などをしながら、授業は中1~3、小6などを季節講習で担当していることがあります。オンライン授業では中1国語を担当しています。また、葛西教室に通う高校生に向け、大学入試に向けた学習アドバイスや進路指導をおこない、受講生の皆さんが自ら掲げた目標を達成するためのサポートをしています。2020年度は高1~2の古文講座を担当し、古文読解の土台をつくる指導をいたしました。

葛西駅(江戸川区)の学習塾・進学塾「Z会葛西教室」

 

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