第36回 「中学受験失敗あるある」~あなたは当てはまってませんか? 5つの質問で危険度チェック!~

執筆者:鈴木亮介(Z会進学教室 調布教室長/国語科)
記事更新日:2022年02月22日

【連載】中学受験でうまくいかなかった君へ ~受験後も学びは続く~
 ⑤「中学受験失敗あるある」
~あなたは当てはまってませんか? 5つの質問で危険度チェック!~

2月上旬から続けているこの連載は「うまくいかなかった君へ」という、少し強い言葉を使っています。広大すぎるネットの海で、あなたに届けたいと思って浮き輪を大きく膨らませすぎたかもしれません。決して傷口に塩を塗るつもりはありません。でも、もしあなたが中学受験(受検)の経験を「失敗」と捉えるなら、それはそれとして、目をそらさずに向き合い、超克してほしいと願っています。

失敗することは悪いことでも損失でもありません。むしろ、その失敗という貴重な経験を、どう捉え、生かすかによって、それは貴重な財産にもなれば、重い桎梏にもなります。失敗を財産にするために。ぜひ、親子でお読みください。


親子で挑戦!あなたは当てはまっていませんか?

初めに、5つ質問をします。YESかNOで答えてください。

Q1.「今回は失敗した」「次はリベンジ」と何度も口にする

Q2.中学受験(受検)のことはトラウマになるから振り返りたくない

Q3.次こそは成功したいから、早めに志望高校を決めるつもりだ(既に決めている)

    Q4.この一年すごく頑張ったから、勉強はお休みしたい(させてあげたい)

    Q5.中受経験があるので、勉強法はわかっているし、勉強してきた貯金がある


    ①その「失敗」はどの部分についての「失敗」ですか?

    さてのっけから「失敗することは悪いことでも損失でもありません」と言いながら早速矛盾したことを言いますが、「失敗失敗」と繰り返し唱えている人は、要注意です!

    中学受験(受検)を「失敗」と一言で総括している人によく出会います。筆者も高校受験に向けて頑張る中学生の受験生や保護者の方と面談をしていて「うちは中受で失敗しているので…」と明かされることがよくあります。そのとき、いつも頭に?マークがよぎります。「失敗って、中学受験(受検)をしたこと自体、その全てをひっくるめて一言で『失敗』と総括しているのかな?」と。それは、非常に危険、かつ間違った考え方です。

    もちろん第一志望の「合格」を目的とし、そこを目指して頑張ったこと自体は尊いことで、誰にも否定できることではありません。しかし、受験(受検)は結果が「第一」であっても「最大」であっても、「全て」ではないように思います。その過程を通じて得たもの、成長したこと、たくさんあるのではないでしょうか。その一年間(或いはそれ以上)の努力全てを簡単に「失敗」という二文字でふたをして、踏みにじらないでほしいと思います。

    と言って、今すぐ切り替えてさあ次の受験だ!と焦る必要もありません。特に保護者の方に気を付けていただきたいのが、励ます意図で「リベンジ」と口癖のように言うことは、受験生(受検生)に「あぁ、今回の中学受験(受検)は失敗だったのだな」という潜在意識が刷り込まれ、自尊心を擦り減らしてしまう危険性があります。

    ②「トラウマ」と口にすれば本当にそうなる。ダメ、ゼッタイ!

    「失敗」と一括りにせず今回の受験(受検)を細かく振り返っていきましょう。まず、この受験(受検)で身についた力、できるようになったことを、思いつく限りたくさん、紙に書き出してみましょう。学習面に限らず生活習慣や物事への捉え方など人間的成長も含まれることでしょう。

    一方、あと一歩届かなかった原因はどこにあるのか。これも「算数」「気合いが足りなかった」など、大雑把な括りや精神論ではなく、なるべく具体化することが大切です。

    するとここで「いや、受験(受検)のつらい経験を思い出したくない」「あのときのことがトラウマになっている」と言う人がいます。つらい、悲しい心情には寄り添ってあげたいですが、いつまでもこの枠に中学受験(受検)経験を閉じ込めていてはいけません。過去と結果は変えられませんが、それをどう捉え、次のステージに進むのかは自分次第でいくらでも好転させることができます。

    中受で志望校が不合格になった後、地元公立中などに進学し高校受験を目指す方で、中1、中2の頃は何のことはなくても、中3になると急に「トラウマ」といった言葉を口にし始める方もいます。失敗を極度に恐れ、安全志向になったり、「まだ自信がないから過去問は解かない…」と対策が後手に回る受験生も。そんなときは保護者の方から「中受と高受は別のものだ」とお声がけいただくと良いかと思います。

    ③早めに次の目標設定=諸刃の剣

    「さぁ切り替えて頑張ろう」「〇〇中がダメだったから、次は〇〇中と同じかそれ以上の偏差値の高校が目標だね」と励ますことも多いと思います。中学受験(受検)をしなかった小学6年生に比べて、一度受験を経験していることで様々なイメージが持ちやすいことでしょう。これは大きなアドバンテージと言えますが、一方で注意したいのは高校選びを偏差値の上下だけで決めてしまうことです。そして、ともするとそこには保護者の方の「偏差値の高い学校に入れたい」という思いが独り歩きしていないでしょうか。

    何のために高校に進学し、そこでどんなことをしていくのか。中学受験(受検)の志望校の大半は中高一貫校かと思います。6年間同じ学校に通って学ぶことと、中学3年間で学んだ後違う学び舎に移ることとで、得られる経験も変わってきます。

    受験(受検)を終えた今、改めて自分はどんなことが好きで、何をしたいのか。中学では、高校では、どんなことができるのか。そしてどんな大人になっていくのか。たくさんの時間をかけて親子での対話を深め、様々な見聞・体験を重ねてほしいと思います。

    一般的に「中学受験(受検)」は親子二人三脚で行う最後の受験、と言われます。高校受験では受験生自身の自主性、主体性が求められます。では保護者の方は何もできない(すべきでない)のかというと、そんなことはありません。

    こうして今この記事を読んでいただき、次の受験への情報収集を進めていただいていることも、お子様にとって大切な支援の一つです

    ④学習習慣は「継続」こそが大切。量より質へ転換を

    「この一年すごく頑張ったから、勉強はお休みしたい(させてあげたい)」と思った皆さん。お気持ちはわかります。しかし、敢えて厳しい言い方をさせていただきます。この受験(受検)で皆さんは何を学んだのでしょうか。もしかして、何も学んでいないのではありませんか?

    勉強とは一刻も早く解き放たれるべき苦役なのでしょうか。「頑張ったからお休み」という言葉を聞くたび、毎年胸が痛くなります。むしろ、Z会の教室に通い中学受験(受検)をする多くの6年生はこう言います。「受検が終わって、この教室で勉強できなくなってしまうのが寂しい」「もっとやりたかった」 …勉強とは楽しいもの。勉強自体に楽しみを見出せる教科・単元もたくさんあると思いますし、「頑張ってテストで成果が出た時の喜び」「ライバルに1点負けた悔しさ」などの喜怒哀楽もあります。「勉強は嫌い、つまらない、やりたくない」という発言は、ひょっとすると保護者の方の固定観念に端を発し、日常的な声掛けの中で自然と作られてしまった幻想かもしれません。

    何より、学習習慣をゼロにすることは非常に危険です。「受験(受検)」勉強として日常的な学習以上の学習量、負荷をかけてきたからこそ、それを唐突に0に振り切ってしまうと、反動で勉強再開のリスタートに対して非常に腰が重く感じてしまうようになります。そうして3月になっても、4月になっても机に向かう意欲が湧かないまま中学生活が始まってしまうことで、結果的に受験(受検)をしなかった小学6年生に大きく水をあけられてしまいます。(イメージとしてはマリオカートでスタート時のアクセル踏みが早すぎてエンストしまうような… 一般的に「燃え尽き症候群」と言われるものも、ここに加わっているのかもしれません)

    ですので、ペースや量を落としつつも最低限の学習習慣は維持していきましょう。むしろここからは「量から質へ」の転換が必要です。質を高めるには、前述した「中受の振り返り・分析」と、後述する「正しい学習の仕方」を早期に身につけることです。

    ⑤「中受のアドバンテージがあるから」 その過信が命取りに?!

    さて、冒頭5つの質問の最後に「中受経験があるので、勉強法はわかっているし、勉強してきた貯金がある」という項目を立てました。これは、当てはまる人もそうでない人も、共通して自身の勉強を振り返ってほしいと思います。

    まず「貯金」ということですが、これは運動や芸事にも共通して言えることなので、中学生になる皆さん自身が実感できるのではないでしょうか。「ある一定期間まとめて努力しておけば、向こう数年間は一切努力をしなくても成功し続けられる」など幻想だということに。

    たとえば算数が得意な君へ。中学入学後、当初の授業は物凄く簡単に感じることでしょう。「周りの連中、こんなこともできないのかよ」と高を括るかもしれません。でも、そのスタンスそのままに英語の授業に向かってしまってはだめですよ。

    「文頭は大文字で」「単語と単語の間にスペース」「ピリオドを必ず打つ」など、慣れないルールに戸惑いながら、英文を書く宿題をこなしていきます。授業中、耳だけ傾けて「まぁこんなもんかな」と分かったつもりで、いざ定期試験、目の前の真っ白な解答用紙に頭の中を転写しようとしても、なぜか手が動かない、ぼんやりとはわかるけど、うまく思い出せない…そして、点数は89点。「ま、そこそこやって9割だから、勉強もこの程度で十分かな」。しかし、5段階評価の成績は「4」。そこで初めて現実を突きつけられます。周りの真面目な中学生たちはみな98点や97点で悔しがっているのです。

    完璧を目指し、謙虚な姿勢で「全文をきっちり書く」「音読をする」といった基本をおろそかにしてはいけません。中受の勉強と中学校の勉強とは別物、といったんリセットし、まずは基本の型をきっちり習得していきましょう(これを学校でぶっつけ本番チャレンジするのは不安…という人のために、Z会の教室では2,3月に「中学準備講座」「中学スタート講座」を開講します)。

    その他、例年よくある「中受経験者が陥りがちな悪習慣」を、毎年たくさんの受験生を指導しているZ会進学教室の首都圏各教室長にヒアリングしたところ、以下がよくある傾向として挙がりました。当てはまっていたら要注意!
    ・丸暗記とスピードにいつまでも頼っている
    ・学習を「質より量」と捉えている
    ・中1からあれもこれも詰め込みすぎる(過度に先取りを求める)
    ・理解したつもりで、きちんと授業を聞かない
    ・塾慣れしていて、手の抜き方が染みついている
    ・答えが出れば何でもいいと思っている
    (例:中1で学習する方程式の文章題を、方程式を立式せずに、算数の特殊算で解いてしまう)
    ・自分で考えずにすぐ答えを知りたがる
    ・間違うことを恐れて、常に「どちらが正しいか」を人に尋ねる


    もっとも、勉強だけがすべてではありません。もしもあなたが勉強以外に、勉強よりも熱中できることがあって、勉強は優先順位を下げたいなと思ったときには、ぜひもう一度この記事を振り返ってみてください。勉強はあなたの夢を叶える手段。量より質を追求し、せっかくの努力が成功する方向に進むことを願っています。

    この記事の著者

    鈴木亮介(すずき・りょうすけ)
    2013年よりZ会進学教室にて中学生の国語、小6公立一貫校受検コースの文系を担当。立川教室や池袋教室を中心に数多くの6年生の作文指導に携わり、南多摩中、立川国際中、大泉中などの合格者を輩出。2016年よりZ会に入社し、同年より調布教室の教室長を務めるほか、国語科の一員として校正業務、冬期講習単科ゼミ「西の作文」の講座設計・教材作成も担当。肥薩線の三段スイッチバックのごとく「地味にすごい」をモットーに教壇に立つ。

     

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