第40回 こうすると失敗する! 小学生がやりがちな「誤った漢字学習法」4選 ~小学6年生のあなたへ~

執筆者:鈴木亮介(Z会国語科/調布教室長)
記事更新日:2022年03月08日

こうすると失敗する! 小学生がやりがちな「誤った漢字学習法」4選

「今度の計画が成功するコウサンは大きい」。はい、傍線部を漢字で書いてください。正しく書けますか?わからない?ひょっとしてもう”降参”ですか?

…読者の皆さんも、これまで一度はこんな場面に出くわしたことがあるのではないでしょうか。そんなとき、どうしますか?今回はZ会調布教室で教室長を務める私・鈴木亮介(Z会進学教室 国語科)が、漢字について好ましい学習方法をお伝えします。

 

ダメな学習法1:「辞書を使わないこと」

さて、冒頭の「コウサン」ですが、もう答えは出たでしょうか。「あきらめる!」おいおい…「先生に聞く!」学校の先生は評価してくれるかもしれませんが、四六時中聞くわけにもいかないですね。「スマホで検索」…便利ですが、「コウサン」って打ったら候補はいっぱい出てきませんか?「鉱産、高三、江さん…」どれが正しいのか、比較し考えるための材料が必要です。

そこで君を助けてくれるのが、国語辞典だ。そもそも「辞書」ということばは辞書でどういう意味で説明されているのか、調べたことはありますか?新明解国語辞典(三省堂)で調べてみると、こう書いてあります。

――ある観点に基づいて選ばれた単語を、一般の人が検索しやすい順序に並べて、その発音・表記・意義・用法などを書いた本。

君の予想した通りだったかな。「一般の人が検索しやすい順序に並べ」…たのは誰? 「書いた本」とありますね。辞書は本なんです。書いた人がいる。言葉のプロにより編纂(「へんさん」と読みます。読めなかった人は辞書で意味を調べておこう)された、比較し考える材料をくれるものが、辞書なのです。

ダメな学習法2:「意味も分からず文字をひたすら書きなぐる」

漢字のテストにそなえて、「計測計測計測計測計…」とひたすら文字をノートに並べるような勉強の仕方をしていませんか?これでは「パスワードの暗記」と同じで、テスト後に何も残らない勉強法です。「身体ケイソクをする」…そういや「ケイソク」ってどういう意味なんだろう?気になったら辞書で引く習慣を付けましょう。

このとき大切なのが「漢和辞典(漢字辞書)を使う」ということ。漢和辞典で一文字一文字の漢字をバラバラに調べると、その漢字の意味や他の読み方、その漢字を用いた熟語の例が載っているので、「知識」として、意味とセットの漢字学習ができます。これにより、点と点、バラバラの暗記が線になり、応用力を身に付けられます。

ダメな学習法3:「読みについては目で追うだけ」

ふだん、中学生の授業開始少し前に教室に入り、漢字テストにそなえた勉強をしている様子を見ていて、気になることがあります。漢字のテストだというのに、鉛筆をもたずに本をじーっと眺めているだけなのです。

聞くと「漢字の読みの最終確認をしていた」というのですが、読みは平仮名で書くからと言って、練習時に「書く」作業を怠るのはダメですよ。目で見て、脳内で音を再生するだけの覚え方だと、あいまいに覚えてしまいます。

たとえば「堅固」→声に出し、文字に書いていれば「けんご、けんご」と【ご】をきっちり覚えていられるはずなのですが、何となく目で見ているだけだと、視覚情報から小さな濁点が抜け落ち「けんこ」になってしまいます。(ちなみに私は中学生のとき、友人の名前になぞらえて「堅固ケンゴくんと強固キョウコちゃん」と覚えてました)

また、これは2019年の都立八王子東高校で実際に出題された問題ですが「作品は出色の出来栄え」の「出色」の読みを問うもの。当時、正答率が5割ほどとこの年の問題の中では最も低く、高校側の分析では「しゅつしょく」という間違いが多かったとのことですが、私はこれに疑問を抱いています。

確かに実際「しゅつしょく」と読んでしまった受験生もいたかもしれませんが、中には字が雑で「つ」と「っ」を区別して書けずに×を食らってしまった受験生もいたのではないかと思います。笑い話のような笑えない話ですが、「ひらがながちゃんと書けない受験生」も、中学生の授業をしていると案外多いと感じます。日頃からマス目を意識して平仮名も書く習慣をつけることが大切ですね。

ダメな学習法4:「『うーん』と悩み考えずに、すぐ答えを出そうとする」

ところで、「辞書」のことを「字引き」と言う人もいますが、これは正確じゃないかもしれませんね。検索して○か×か、穴埋め的に、クイズのように知ったつもりになっても、それは場当たり的な短期記憶としてすぐに消え去ります。「これはどうやって説明したらいいのかな」「どのような使い方をするのかな」「似たような言葉はないかな」…辞書を手にするとき、君はきっと悩んでいるはず。この「うーん」と頭を悩ませる瞬間に、人は成長し、その瞬間をしっかりと長期記憶することができます。

この「うーん」を「思考力・判断力」と言いますが、高校入試ではこれらの力を、書いて表現することが求められます。何となく分かったつもりではなく、しっかりと理解することで表現できます。表現するためには語彙力が必要。語彙力とは、言葉を束ね連想する力。辞書はそうした力を着実につけてくれます。

ちなみに、冒頭に挙げた「コウサン」の答えは「公算」。これは2017年の都立新宿高校で実際に出題された問題です。「公」も「算」も小学校低学年で習う漢字。「公園」「算数」と書けと言われたら中学生なら誰でも書けますね。でも「コウサン」と問われたら? 単なる暗記ではない、本質的な力を問うように、入試は変わりつつあります。君も、一緒に変えていこう。良い勉強の仕方を、国語辞典とともに。最後に君たちに問います。高校受験とその先の進路…成功の公算はありますか?


オマケ:Z会の先生がオススメする辞書の選び方
1.本屋さんで実際に手に取ってみる
2.同じ単語を複数の辞書で引いて比べてみる ※例文が多いものがオススメ
3.頭から終わりまでぱらぱらとめくってみる ※見やすさやコラムの充実度で選ぼう
4.迷ったら国語の先生に相談してみよう

辞書の選び方などはこちらの↓動画でも解説しています!

この記事の著者

鈴木亮介(すずき・りょうすけ)
2013年よりZ会進学教室にて中学生の国語、小6公立一貫校受検コースの文系を担当。立川教室や池袋教室を中心に数多くの6年生の作文指導に携わり、南多摩中、立川国際中、大泉中などの合格者を輩出。2016年よりZ会に入社し、同年より調布教室の教室長を務めるほか、国語科の一員として校正業務、冬期講習単科ゼミ「西の作文」の講座設計・教材作成も担当。肥薩線の三段スイッチバックのごとく「地味にすごい」をモットーに教壇に立つ。

調布市の学習塾・個別指導塾「Z会調布教室」

 

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