第51回 無駄

執筆者:鈴木亮介(Z会進学教室 調布教室長/国語科)
記事更新日:2022年04月30日

無駄

無駄――役に立たない余計なこと。効果・効用がないこと。

一度しかない人生、なるべく選択を誤らず、無駄なことはしたくないと考えるのは自然なことかもしれませんが、そもそも「無駄」というものが存在すると考えるからこそ、人は盆に返らない覆水にこだわり、前に進めなくなるのではないでしょうか。

「成功」「失敗」の二択しかない?

経済学で”sunk cost” という考え方があります。日本語にすると「埋没費用」と言って(6年生の皆さんには難しい言葉ですね)、過去に支出された資金や労力のうち、回収も取り消しもできない費用のことを言います。「埋没費用」は無視して考えることが合理的ですが、そうも割り切れないのが人間というもの。

例えば「映画の前売券を2枚買ったのに、家に置いてきたことを電車に乗ってから気づいた!今から取りに戻ったら映画に間に合わない」とこんなとき、気持ちを切り替えてチケットを忘れたことを忘れて、現地に着いて当日券を買えば済むのですが、どうしてもそこで「あーあ損した」とか「やっぱ映画見るのやめようかな」とか思ってしまうのです。(ちなみにこの題材がR.2年度新宿高校推薦入試の問題に登場します。興味があれば高校のHPに問題が掲載されているので解いてみてください)

皆さんには「やり直したい過去」はありますか。「ドラえもんの道具で一番欲しいものは何?」「タイムマシン!過去に戻って失敗をリセットしたい!」…先日行った小学5年生の作文の授業での一コマ。他の参加者も「○○の場面に戻ってやり直したい」と書いていました。なるほど人間の選択は常に【成功】か【失敗】の二択しかないという考えが無意識に刷り込まれているようです。

でも、どうでしょう。「あのときグーじゃなくてチョキを出してたら自分が勝ったのに」…負けた後、様々な喜怒哀楽を経て、今のあなたがあります。もしもあのとき勝っていたら、その後色んな人に恨まれたり、油断癖がついてしまったり、など大変なことが起きてしまったかもしれません。今こうして美味しいご飯が食べられるのも、あのときじゃんけんで負けたから。かどうかはわかりませんが、絶対に違うとも言い切れません。

何もかも無駄じゃない

こと教育という分野において、学びということにおいては、費用対効果で説明できることなど何一つなく、無駄なことなど何一つないと私は考えています。「せっかく先生が大事な話をしているのに、授業中寝ているなんて、時間とお金の無駄!」とよく言われます。私自身「せっかくの機会を無駄にしないように」という言い方で生徒を励ますことはありますが、損得勘定で捉えているわけではなく、使い勝手がいいから「MOTTAINAI」と連呼しているだけなんです…。

以下は昨年Z会調布教室を卒業した卒業生で、とある都立トップ高校に合格したFさんの合格体験記です。全文掲載します。


「Z会で成長した自分」
私はZ会調布教室に中1の春に通い始めました。親に勧められて入ったのですが、通い始めた時から勉強をさせるのではなく自分から勉強するという雰囲気に通いやすさを感じていました。最初は「自主自律」の方針に戸惑うこともありました。1、2年生の頃は質問に行くことが恥ずかしく分からないことをそのままにすることも少なくありませんでした。このままでは一向に成績は伸びないと思い、3年になり積極的に質問に行くようになりました。そうすることで、先生とのコミュニケーションをとることができ、先生方も私のことを理解しアドバイスをくださいました。

この3年間、特に3年生になってZ会で学んだことは、受け身の授業だけではなく自分から勉強し質問するという積極性の大切さです。質問するところを見つけてやろう、くらいの気持ちで授業に臨むと辛い受験も楽しくなってきます。私も最後の1年間は毎回の授業が楽しみで、苦手だった数学も徐々に点が取れるようになりました。3年間Z会に通い続けたおかげで成績が伸び、合格することができました。しかし、それだけでなく、自分で考え自ら行動する力もつき人間としても成長できたのだと思います。受験を終えた今、感謝したいのは、家族、友達、そしてZ会です。ありがとうございました!


この生徒にとって「質問にも行かず、分からないことをそのままにし続けた中1、中2の2年間の通塾」は無駄な時間だったと言えるでしょうか。…ということに尽きます。保護者会でも面談でも「ここに存在していることに、無駄なんてないんです」と伝えるべく、どうにかこうにか言葉を尽くして訴え続けてきましたが、このFさんの文章が全てを物語っているように思います。

変わりたいと思っているのならそれだけで、今すぐに変えなくたって、十分それで立派だよ、と言いたい。


この記事の著者

鈴木亮介(すずき・りょうすけ)
2013年よりZ会進学教室にて中学生の国語、小6公立一貫校受検コースの文系を担当。立川教室や池袋教室を中心に数多くの6年生の作文指導に携わり、南多摩中、立川国際中、大泉中などの合格者を輩出。2016年よりZ会に入社し、同年より調布教室の教室長を務めるほか、国語科の一員として校正業務、冬期講習単科ゼミ「西の作文」の講座設計・教材作成も担当。肥薩線の三段スイッチバックのごとく「地味にすごい」をモットーに教壇に立つ。

 

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