第54回 教えて!校長先生 都立青山高校篇 ~小学6年生のあなたへ~

執筆者:鈴木亮介(Z会進学教室 調布教室長/国語科)
記事更新日:2022年05月27日

【インタビュー企画】教えて!校長先生 ~⑤ 都立青山高校~

Z会の教室による小学6年生の学びを助けるフリーマガジン「親子で始める、中学準備」が、皆さんの憧れる人気校の校長先生にお話を聞くインタビューシリーズ「教えて!校長先生」。連載第五弾は東京・渋谷区にある都立青山高校。小澤哲郎校長先生にお話を伺いました。中学入学、そして高校受験に向けて頑張る皆さんに心がけてほしいことや、高校選びのポイント、青山高校に通う生徒が心がけている「良い習慣」など、6年生の皆さんや、保護者の皆様が今知りたいことをたくさん伺いました。ぜひ最後までお読みくださいね。

東京都立青山高等学校

東京都渋谷区神宮前2-1-8
東京メトロ銀座線「外苑前」駅より徒歩3分
/都営大江戸線「国立競技場」駅、JR中央・総武線「信濃町」駅または「千駄ヶ谷」駅より それぞれ徒歩15分
http://www.aoyama-h.metro.tokyo.jp/

小澤哲郎校長先生は、どんな小学6年生でしたか?

遊びまくってましたね。田舎育ちなので、山の中を駆け回ったり、夏は川下り。多摩川で泳いでいたら友達に原始人オザワなんて呼ばれてました(笑)
勉強は全然してませんでしたが、本と新聞は興味を持って読んでいました。米軍基地が近くにあるので海外の人との交流があり、英語は得意でした。

普通科の「普」の字の意味、知ってる?

――高校選びのポイントを教えてください。
小澤校長:東京に住む人の他県と比べた最大の特徴は、下宿をしなくても私立、公立、国立、好きな学校を選べることです。滑り止めも本命も選べることが東京都の最大の特徴だと知っていただきたい。奥多摩に住んでいる子が都心の学校に通ったっていいし、江戸川に住んでいる子が多摩の学校に通ってもいい。その上で、中高一貫の高校や大学の附属へ行くかどうか。どっちに行ってもいいと思います。

――「高校受験」を選択するメリット、デメリットはどのような点にあるとお考えになりますか?
小澤校長:中学3年、高校3年、と途切れるメリットは選ぶ機会が増えることです。デメリットは6年間通した学びができないので、主体的・対話的で深い学びが途切れてしまうこと。中高一貫校でのカリキュラムは探究的な学習に適していて、将来の道を切り拓くうえで教科の力以外に大きな得るものがあります。ただし入学した後での進路変更が難しいため、自分の特性を非常に早い段階で見極めないといけないという点が6年制のデメリットだと思います。

――確かに小学生の段階で自分の特性を見極めて選択するのは難しいようにも思います。では高校受験をすると決めた人は、どのように高校を選ぶと良いのでしょうか。
小澤校長:選ぶうえでの基準として、現実的なところで学力は否定できないと思います。失敗したから浪人しようというわけにいかないですからね。選ぶときには私立なら教育の特徴、建学の精神が大きなウェイトを占めると思います。公立だと生徒の様子や進学実績が選ぶポイントになると思います。あとは制服とか、校則の自由度などでしょうか。最近だとWi-fiの接続環境などICTの面も大きいですね。

――確かに学力試験が必ずありますから、そこは避けて通れないですね…
小澤校長:試験がある方がモチベーションの維持になるという見方もできます。同じ学力、言い換えると同じ価値観を持つ子どもたちが集まるわけですが、そこで互いに価値を認め合うことが大事です。特に都立はご家庭の環境も様々で、言うならば”メルティングポット”。多様なバックグラウンドを持つ人と関われるのは都立の強みですね。

――多様な人と関われるメリットはどういうところにありますか?
小澤校長:違いに触れることは他者理解において欠かせません。本校では都立青山特別支援学校と毎年交流を行っているのですが、知的障害を持つ児童に対して最初の頃は奇異なものを見る目で見ていた高校生たちが、今では一緒になって手を叩き歌ったり踊ったりしています。「知る」って大事で、そのためにはそばにいることがとても大事です。人間的な成長には、排他的ではない価値観の共有が大事です。

――青山高校では地域との交流も多いのですか?
小澤校長:そうですね。この環境ですから(笑)。ラグビーワールドカップ組織委員会と連携協定を結んだり、日本青年館主催のラグビー教室で青山高校のグラウンドを使用してもらったり、今春卒業した生徒たちは新国立競技場のオープニングセレモニーにパフォーマンスで参加しました。日本オラクル社とは企業連携として、キャリアメンタープログラム(※)をお願いして、10人くらいの社員の方に来ていただきました。昔から行っている青山熊野神社や青山まつりの皆さんとの交流から、ブラジル大使館まで、様々な地域交流を行っています。

(※ 2021年より「キャリアメンタープログラム」として、日本オラクルの社員が自身の経験やキャリアについて青山高校の生徒に共有したり、悩みを聞いたりすることで、生徒が見識を広げ、自身のキャリアについて前向きに考えて学生生活を送ることができるよう支援している。)

リーダーは「興味ないです」ではダメ

――小澤校長先生からご覧になって、青山高校にはどんな生徒が多いですか?
小澤校長:優しいですよ。人の失敗を笑わない。そして素直で勤勉です。買い物に行って列に割り込まれても文句を言わないタイプ(笑)。それが逆に言えば「2番手に甘んじる」ということでもあるので、欲を言えばもっと妥協せず高みを目指してほしいですね。最近は進学実績も上がってきているので「もはや2番手校ではない」と言うようになってきていますが。

――なるほど。そんな青山高校に入りたい!と考える小中学生はどんな準備をしたら良いでしょうか?
小澤校長:青山高校は普通科ですが、読者の小中学生の皆さんは普通科の「普」の字の訓読みを知っているでしょうか?「あまねく」と読みますが、言い方を変えると「リベラルアーツ」です。「これが大好き!」ということ自体は素晴らしいけど、「ほかのことはダメ」というのではあまり良くないです。幅広く興味を持つことが必要だと思います。

――何か一つのものを突き詰めるだけではだめなのでしょうか。
小澤校長:もちろんそれを否定するものではないですし、何か秀でているものがあって、そこに特化していくのならそういう子たちを伸ばせる、専門的な学習ができる学校に進むべきだと思います。本校のように将来リーダーになる子たちを育てる学校では、リーダーになったときに自分の興味関心知識がない分野も扱えるような人を育てたい。リーダーは「それ、わかりません」「興味ないです」ではだめなんです。そのためには、好き嫌いなく幅広い興味を持てるようになってほしいです。

チャレンジしよう

――小澤先生はこれからの時代を作る子供たちにどのようなことを期待していますか?
小澤校長:自分の力で世の中を変えられるぞ、というくらいの気概を持ってほしいです。「どうせ変わらないでしょ」と思っているかもしれないし、実際変わらないかもしれないけど、もっといろんなことにチャレンジしてほしいです。

――チャレンジですか?
小澤校長:チャレンジという言葉の意味をわかっていないように思います。単に「挑戦」と訳してしまうと「別に新しく挑戦なんてしなくても大丈夫ですよ、今のままで。」と捉えてしまいます。英語のチャレンジはトライとはちょっと違います。コロナ禍も円安もチャレンジだし、戦争が起きていることもチャレンジだし。困難の中でどう道を切り拓いていくかということを考えられる人間になるために君たちは勉強しているんだよっていうことに気付いてほしいですね。

――チャレンジする必然性を感じていないということでしょうか?
小澤校長:そうそう。様々なチャレンジに私たちは否応なく飲み込まれているじゃないですか。危機の時代に生きる子どもたちにはそれがかえってプラスになるかもしれません。「危機をなるべく知らせないで守ってやろう」ではなく、「こんな危機があるんだよ」と知らせ、アイデアを出せるように育てていきたいと思います。

――ところで青山高校ではBYOD (自身のタブレット端末などを持ち込んで授業で使用すること)やオンライン授業など、ICTの導入も積極的に取り組んでいますよね。
小澤校長:否応なくそういう時代になっていますよね。2021年に「一人一台端末」を他校に先駆けて先行導入してから1年が経ちました。まだそこまで劇的な変化が起きているかはわかりませんが、教える側はそれぞれ工夫をしています。現在の先行導入の成果は、対面授業での活用です。アプリを使った先生主導の活用、ノートと鉛筆代わりの生徒主導の活用、HR活動等の特別活動の活用など、現在も研究を継続しているところです。

――オンライン授業はこれから増えていくのでしょうか?
小澤校長:正直なところデメリットもあると思います。たとえば国語では画面上だと文章の全体像をつかみづらいですし、世界史で地図を用いて説明する際には生徒自身に地図帳をめくって位置関係を見てもらう方が良いです。自宅でずっとオンライン授業だけ受けているということ自体も、それによって心身の体調を崩してしまい、学校に来られなくなる生徒も出てしまいました。2022年現在、本校では対面の授業を中心にしていますが、どのようなスタイルがベストなのかは引き続き模索したいと思います。

小学6年生のあなたへ メッセージ

新聞を読むこと、読書をすること、地域の自然や文化に親しむこと。この3つのどれが欠けても良くないと思います。デジタルが普及する時代だからこそ、人とコミュニケーションを取って何かを行う経験を積んでほしいです。やらないとできるようにはならないですからね。何をしたらいいかわからなければ、まず地元の中学に行き、そして高校に行っても何をしたらいいかわからなければ普通科を選ぶ。大学も何をしたらいいかわからなければ一番優れた学生がいる大学を選べば良いと思います。

みんなが気が付かない皆の中に隠された可能性があると思いますが、それは誰も教えてくれないし下手をしたら一生気づかないかもしれない。でも可能性があると信じて気づけるような努力、体験をすることが正しい生き方だと思います。何の保証もないけど、ノーリスクノーリターン。ある日突然気がつくかもしれないし、自分から探しに行かないと何も手に入らないですよ。

この記事の著者

鈴木亮介(すずき・りょうすけ)
2013年よりZ会進学教室にて中学生の国語、小6公立一貫校受検コースの文系を担当。立川教室や池袋教室を中心に数多くの6年生の作文指導に携わり、南多摩中、立川国際中、大泉中などの合格者を輩出。2016年よりZ会に入社し、同年より調布教室の教室長を務めるほか、国語科の一員として校正業務、冬期講習単科ゼミ「西の作文」の講座設計・教材作成も担当。肥薩線の三段スイッチバックのごとく「地味にすごい」をモットーに教壇に立つ。

 

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