第70回 「息抜き的に楽しんだ、創造理数科のレポート対策」

執筆者:王川俊浩(Z会進学教室 立川教室/理科科)
記事更新日:2022年09月02日

【シリーズ 合格体験記の表と裏】⑥「息抜き的に楽しんだ、創造理数科のレポート対策」

こんにちは。Z会進学教室立川教室で副教室長をしている王川です。今回はZ会立川教室を卒業した生徒の合格体験記を皆様にご紹介します。合格体験記を書いてくれた生徒がどんな生徒だったのか、皆さんも知りたいですよね。この連載シリーズでは合格体験記の「表と裏」ということで、実際に書いてくれた生徒のZ会進学教室での様子など、当時を振り返ってのエピソードなどをあわせてお話ししたいと思います。

今回ご紹介する生徒は東京都立立川高校の創造理数科に合格、進学しました。まずは彼女の合格体験記を見てみましょう。

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私の3年間と心の支え

私がZ会にお世話になったのは、中1の夏期講習からです。自分の学力を知っておきたいと思い、受講しました。このときは本科の受講は見送りました。それから、講習を定期的に受け、中2の夏期講習を受けた際に本科の受講を決めました。

Z会は周りのレベルが高く、自然に努力することができました。初めの頃の月例テストはまったく点数が取れませんでしたが、授業を重ねるにつれ少しずつ点数が上がり、安定するようになりました。

特に忙しくなり始めたのは中3の夏休み頃からで、過去問や模試、都立推薦対策に追われるようになりました。加えて内申の出る11月までは、中学校の勉強に気を遣っていました。そして、都立立川高校創造理数科を推薦で受ける際に必要なレポートも勉強と別に作成していました。また、不安と闘うことも多くなり、先生からもらったアドバイスのメモなどを眺めて落ち着くようにしていました。

試験当日は、緊張と焦りから問題を読み飛ばす失敗をしてしまいましたが、面接では吹っ切れてあまり緊張することはなく行うことができました。結果は合格で、今思うとあの自分を思う存分出せた面接が良かったのかと思います。

受験を経験して、心の支えになったのは、信頼できる先生と友達でした。わかりやすい授業と豪快な性格からあっというまに虜になり、よく勉強で心配なことを相談し、アドバイスをもらっていました。また、塾でできた友達と分からない部分を教え合ったり、一緒にお菓子を食べたりしてリフレッシュしていました。私はZ会で勉強することができて、とても良かったです。

教室スタッフからの、エピソード

自主的でありながら自己主張は謙虚である、とてもバランスが取れた生徒さんであったと記憶しています。外から見れば「受験も難なくこなすのだろうな」と思われるような生徒さんでも実は山あり谷ありで、大きなチャレンジがあるのがこの受験というイベントです。都立立川高校の創造理数科立ち上げの年に推薦入試で挑むというのは、彼女故に成立したチャレンジだったと考えます。

都立立川高校の創造理数科の推薦入試は、普通科の推薦入試で行われる小論文、面接の試験に加え、理科に関するレポートの提出と当日そのレポートをもとにした口頭試問が課されます。準備しなくてはならない事が多く大変だってであろうことは間違いないのですが、彼女は毎週のようにレポートの版を重ね、理科担当である王川に見せてくれました。勉強の息抜き的に楽しんで取り組んでいたのだと思います。それは、彼女がやりたいテーマを選んだ上でレポートに挑んでいたからこそ。生徒の自主性を重んじ、志望校を尊重するZ会進学教室の土壌が良く作用したのではないかと思います。

高校入学後にも教室に来てお話しする機会があり、高校生活をとても満喫しているようでした。

ところで、どういったテーマのレポートを提出したのか読者の皆さんも気になると思います。今回、本人の許可が得られたので、最後に簡単に内容を紹介いたします。

『テーマ』
スタジオジブリのアニメーション映画作品「崖の上のポニョ」をご存じでしょうか。
その作中に「フジモト」という魔法使いが登場します。彼の家は、なんと海の底!そこに作られた家を魔法の膜で守り、彼は暮らしています。
この魔法の膜が「どれだけの水圧に耐えているのか」というのが彼女のレポートのテーマです。

『方法』
圧力は中学で学習します。
水圧を与えているのは水の重さで、それは1リットル当たり1キログラムというのも一般的な知識ですしかし、どれだけの量の水が「フジモト」の魔法の膜を押しているのかが分からなければ計算できません。如何にして、「フジモトの家」の水深を見つけ出すか。これが彼女のレポートの面白い所です。

映画に関する資料を当たっても水深に関するデータは手に入りませんでした。
(あくまで中学3年生が調べられる範囲で、ですが)
そこで参考にしたのが地学の知識「示相化石」です。
地層から示相化石が出たならば、その地域の当時の環境を考察する鍵になります。
生物にはそれぞれ、生息するのに適した環境があり、その生物がいれば(死骸があれば)その場所は適した環境だと考えることができる、示相化石はそういった考え方を元にしています。

「標高」や「水深」もまた環境における要素の一つです。
示相化石の考え方を生きている生き物に応用し、深度を求めたのです。

着目したのは、「フジモトの家」とともに映っていたり、「フジモトの家」の窓から見える海の生物たちです。
ヒントは映像のみ、生物の特徴から同定し、生息している深度を調べます。
・ダイオウイカ 約600m~1000m以上
・リュウグウノツカイ 約250m~1000m以上
・ヌタウナギ 約300m~800m
などなどの生物が見つかりました。

生息域の狭い生物ほど貴重なデータになるという事がわかりますね
それぞれの生物がフジモトの家と同時の映るのであれば、各生物の生息域の重なる部分こそ求めるべき水深です。

『結果と考察』
計算の結果から、1平方メートル当たり600トン~800トンの力がかかっている所まで絞り込めました。これは、人の腹の上にアフリカゾウが30~40頭乗っかっている状態と同じ圧力です。
しかし、発見できたのは水圧だけではありません。
作中で一緒に書かれる生物は共通の水深で活動できることが判明しました。アニメーション映画ではありますが、そこにはリアリティに対するこだわりが見えます。
こうして感じた世界観の深みについても、レポートの考察に含みました。
意外かもしれませんが、レポートの考察は、実験や観察を通し普段と異なる視点に立って得た発見を盛り込むパートですから「お勉強」とはちょっと遠そうな発見も書いて大丈夫です。内容を問わず多角的な考察ができると、レポートに深みと個性が出てきます。

『今後の展望』
実は、深度の測定の際に種類が特定できなかった生物がいました。しかし、ある程度「フジモトの家」の水深が絞れた今、生物を特定する材料が増えたことから、より水深を絞っていくことができる。と、さらなる改善について触れています。
完璧な実験を行い、完璧な結果を得ればこのパートは必要ありませんが、実際はそう上手く行くことは無いでしょう。それを認めて、より良い方法を思いついたのであればこのようなパートを設けて記述しておきましょう。折角思いついたことを、発表しないのは損です。

『出典』
レポートでは重要なこのパート。観察や実験に使用したデータの出典を示します。観察の対象がアニメーション映画、つまりフィクションでもです。参考にした書籍名や、WEBページのURL等を載せていました。

この記事の著者

王川俊浩(みかわ・としひろ)

Z会進学教室の立川教室副教室長。千葉県生まれ千葉県育ち。好きな言葉は「学ぶはまねる」。まねてもらえるような興味深い授業を心掛けている。趣味は水泳だが、一日に2kmあたりが限界。

立川市の学習塾・進学塾「Z会立川教室」

 

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