2023年度「京大文系国語」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2023年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

 

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化(時間:文系120分)

文系・理系ともに、2022年度と比較して分量がやや増加している大問はあるものの、全体としては平年並み。また、難易度に大きな変化はなく、京大入試として標準的な難度の出題であった。

2023年度入試の特記事項

  • 例年通り、現代文・現代文・古文の三題の出題。(一)の現代文のみ文理共通の文章からの出題。(理系は一問設問数が少ない)
  • 2017~2022年度までと同様、(一)での漢字書き取り問題の出題はなかった。
  • (二)は「数学」について述べられた内容ではあるが、専門的な表現は少ないので読解に苦労はしないだろう。俳句も出てくるが、鑑賞文ではないので、焦る必要はない。
  • (三)は近世の随筆からの出題。漢詩が内包された文章であり、設問として問われている点は目新しいものの、漢文自体の読解は基礎知識があれば対応可能

合否の分かれ目はここだ!

(三)の古文は江戸時代の随筆からの出題。和歌や漢詩が含まれてはいるものの、近世の文章ということもあり読みやすく、前後の文脈や注を参照すれば内容を把握することは難しくない。ことばの補足・経緯の説明の追加など、設問において細かく条件が示されているため、核となる解答要素を押さえることは当然として、解答欄の大きさをふまえつつ、条件を満たす必要な要素を見極める力が求められる。京大に照準をあわせて読解・記述演習をしっかり積んできた受験生であれば、実力を発揮できただろう。

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大問別のポイント

 (一):現代文  出典:福田恆存『芸術とはなにか』

昭和に活躍した評論家・劇作家の福田恆存による演劇論からの出題。2022年度文理共通第一問の岡本太郎の文章同様、芸術の理想について筆者の考えを述べるもので、京大では頻出の文章ジャンルである

  • 問一・問二は傍線部周辺から解答要素を押さえればよく、比較的取り組みやすい設問。解答欄に見合う形でわかりやすくまとめることを意識し、ここでの大きな失点は避けたい。
  • 問三・文系問四は、解答の中心要素は傍線部周辺から押さえることができるが、わかりやすい形にまとめるには高度な記述力が要求される。演劇・芸術に対する筆者の考えを押さえ、全体の論旨を意識して解答をまとめたい。
  • 文系問五/理系問四は、「本文全体を踏まえて」という設問条件があり、芸術の本来のあり方についての筆者の考えも踏まえて説明する必要がある設問。傍線部自体の表現の説明と、問題文全体の内容を踏まえての説明が要求される難度の高い設問であった。

問題文中の表現の切り貼りでは解答を作成できず、自分なりに表現をふくらませて説明する必要がある京大らしい出題であった。取り組みやすい設問を見極めて確実に得点し、問題文全体の主題を踏まえて解答をまとめ上げる記述力が要求される出題で、京大型の演習経験を積んでいたかどうかで差がついただろう

 (二):現代文  出典:森田真生『数学する身体』

「独立研究家」を名乗り、京都を拠点に国内外で〈数学の楽しさ〉を伝える活動を行っている森田真生の文章からの出題。設問は、傍線部の内容説明問題が3問、理由説明問題が1問、引用された芭蕉の句がどのようにしてできたかの説明問題が1問。いずれも文中に解答の根拠があり、解答の方向に戸惑うような設問はないが、過不足のない適切な答案を作ることは難しい。問二・問三はいずれも指示語を含むので、まずその指示対象を明確にした上で、解答作業にかかる

  • 問一は、説明に必要な要素を傍線部の前後の数か所から見つけ、〈自己が大きく変わることで、今まで理解できなかった心の状態から理解できる状態に移行すること〉を中心にまとめればよい。
  • 問二のように「岡潔が感じた」理由は岡の引用文中に述べられているが、表現が抽象的で難しいので平易に言い換えながら、〈自然法則を計算で解明することは困難なのに、自然はそれを瞬時に実現しているから〉といった内容を核にしてまとめる。
  • 問三は、「数学的思考」も〈すべての生物の活動と同様に「身体」と結びついたもの〉であることを押さえ、それがどういうことかをさらにわかりやすく説明する。
  • 問四は〈生きている自然の動きを瞬時にとらえ十七音で表現する〉という内容を中心にして説明する。
  • 問五は、「数学研究」を突き詰めると「記号的な計算」だけでなく「非記号的な、身体のレベル」にまで進む必要があるので、研究を極めようとすれば、〈研究主体である自分を研究せざるを得なくなる〉ということ。

 (三):古文  出典:室鳩巣『駿台雑話』

江戸時代の随筆からの出題。本文中に漢詩が含まれ、設問にもなっている。漢文が出題されるのは2018年度以来5年ぶりだが、漢文といっても焦るほどのものではない。近世の文章なので内容は読み取りやすいものの、設問文の条件に合わせてどこまで内容を補って説明するかがやや難しい

  • 問一は、現代語訳の問題。「適宜ことばを補いつつ」という条件が付されているので、重要古語や文法を押さえたうえで、文脈を踏まえて適宜ことばを補う。(3)がやや難しいが、直後の一文がヒントとなるので、注を参考にして和歌が詠まれた状況を踏まえて訳すとよい
  • 問二は、直前の兼好『徒然草』の挿話にも触れながら、傍線部を説明する。傍線部、挿話ともに内容把握に苦労はしないだろう。ここは確実に得点しておきたい
  • 問三も、傍線部の説明問題。「この考えに至る経緯を含めて」とあるので、漢詩を読むことになった状況や直前の筆者の発言を踏まえて説明すればよい。ここも確実に得点したい。
  • 問四は、中国の故事を踏まえ、漢詩の意味を説明する。雪の降った日に人々が訪ねてきた状況や筆者の発言を踏まえたうえで、「吾」と「客」の対比で説明する。

 攻略のためのアドバイス

京大文系国語を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 基本的な語彙力

文学的・抽象的な表現を含む文章からの出題が多い京大国語では、読解力・記述力ともに高いレベルが要求される。その水準に達するためには、基本語彙の意味を正確に把握し、記述する際にも適切な語を選ぶことができる語彙の運用力が必要不可欠。『現代文 キーワード読解』『速読古文単語』(いずれもZ会出版)などで、語彙力の基礎を固めよう。

●要求2● 幅広いジャンルに対応できる読解力

京大国語では、普段受験生が読み慣れないであろうさまざまなジャンルの文章から出題されるため、京大で出題されそうな文章の読解経験の量がものをいう。問題文中に直接的に表現されていなくとも、文中の表現のニュアンスを汲み取り、筆者の主張や心情を正確に読み取る力が必要である。

要求3●大意をまとめなおす記述力

京大国語の設問は、すべてが記述式問題であり、求められる記述の分量もかなり多い。解答に必要な要素を見極める力と、必要な要素を正確に伝わる形で解答にまとめなおす力が求められる。問題文中の記述の寄せ集めではなく、適宜自分の言葉で言い換えたりふくらませたりすることができる確かな記述力が必要である。

対策の進め方

まずは、土台となる●要求1・2●を満たすことを目指そう。Z会では、通信教育・教室ともにさまざまなジャンルの問題文を出題するので、読解経験を積むことができる。語彙・文法事項といった知識事項の抜け漏れをつぶしていくと同時に、記述演習にも取り組むことで、第三者に伝わる解答の作成法を身につけよう

その後は、さらに●要求2・3●を磨いていこう。Z会の通信教育では、受験生の9月からより実戦的な京大対応のオリジナル問題を出題する。第三者の客観的な視点からの添削指導を受けて、自分の解答に足りない要素やまとめ方のコツを把握し、解答の質を高めていこう。読解量・記述量ともに負担が重い京大国語に対応するために、制限時間内でうまく解答をまとめることを意識して問題演習を行おう。

入試直前期には、過去問演習に加えて予想問題にも取り組むことが大切だ。本番前の最終調整として、より本番に近い形での演習をするとよい。

Z会で京大対策をしよう

Z会京大国語担当者からのメッセージ

現代文は幅広いジャンルの文章において論理や論旨、表現の意図などの的確な理解を求める京大らしい出題でした。単に問題文中の表現を切り貼りするだけでは対応できず、筆者の考え・問題文の主題を読み取って自分なりの表現でまとめ直す必要があります。京大に照準を合わせた演習を積んでいたかどうかで差がつく出題でした。

古文は近世の随筆からの出題。漢文を含む文章でしたが、文章展開を正確に押さえ、丁寧に逐語訳する演習を積んでいた受験生であれば、実力を発揮できたでしょう。

受験生がなかなか読み慣れないような文章から出題され、さらに広い解答欄に自分なりの言葉でわかりやすく解答をまとめていくことが要求される京大国語では、さまざまな文章の読解経験を積み、作成した解答を第三者に見てもらうことが非常に重要です。Z会では、長年の入試分析をもとに、本科「京大講座」、特講「過去問添削」など、京大合格までの道筋を支える講座を多数用意しています。良質な問題と添削指導を通じて盤石の実力を養成し、京大合格をつかみ取りましょう!

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