Z会の大学受験担当者が、2022年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。
今年度の入試を概観しよう
分量と難度の変化(理科…2科目180分)
- 基本的には穴埋め形式の問題であり、各大問の最後に記述形式の問題がある。
- 例年、力学、電磁気分野から各1題、その他の分野から1題の計3題の出題。
- 分量、難易度ともに2021年度から変化なし。2019、2020年度は難易度が高かったが、この2年は比較的落ち着いている。
2022年度入試の特記事項
- ⊿Q/⊿t(電荷の時間変化の割合)、⊿I/⊿t(電流の時間変化の割合)などの、時間変化(時間微分)を考える問題が頻出だが、2022年度は見られなかった。
- 問題のページ数および空欄の数が2021年度より増加したが、負担感は昨年と同程度だった。
- 2022年度は、全体で6割強を得点したい試験であった。
合否の分かれ目はここだ!
- 京大物理においては、問題文の情報量の多さ、問うている状況の目新しさやイメージのしにくさ、近似をはじめとする計算量の多さや煩雑さが、難易度を高くしている要因である。いかに問題文をすばやく読み、必要な情報を抽出して整理し、正確かつ迅速に計算ができるかが合否の分かれ目と言えるだろう。
- 限られた時間で高得点を取る戦略としては、まず全ての問題を概観し、解きやすそうな大問を見つけ、前半部分の基本的な問題を確実に解答することを意識したい。考えが煮詰まったり時間がかかりそうであったりすれば、ひとまず飛ばして別の大問に移るとよい。
- また、すべての問題を通して、論述問題である「問」形式の問題は難度が高いが、最初の立式やグラフの概形だけでもよいので、自分のわかる限りのことを書き、少しでも得点に結びつけようとする姿勢を持つことが大切である。
- 普段の学習においては、すばやく正確に計算する練習をすることや、答の次元や符号の正負を確認しながら解き進めミスをなくす工夫をすることなどを通して、物理の土台となる力をしっかりと涵養してほしい。
各大問のポイント
- 物理問題Ⅰは、前半の穴埋め形式の問題をすばやくミス無く解きたい。問1と問2の解答欄も埋めたいが、時間がかかりそうなら他に移るのもありだろう。
- 物理問題Ⅱは、(1)の穴埋め形式の問題を確実に解いた上で、(2)問1と(3)でも点を稼いでおきたい。続く(4)で、順方向に電流が流れるダイオードを、単純に導線に置き換えてはならないことに気づけた人は、そのまま時間をとって考え続けるか、後回しにするかの判断を誤らないように。(4)とは独立している(5)を先に取り組むのもよい判断である。
- 物理問題Ⅲは、(1)と(2)の穴埋め形式の問題は完答したい。問1のグラフまで解けると合格が見えてくる。なお、穴埋めの最後の「さ」、「し」および問2は、それより前の設問ができなくても、問題文の文脈から解答可能と思われる。
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大問別のポイント
物理問題 I 力学[標準]
2球の弾性衝突、円運動、放物運動
- (1)は質量の異なる2球の弾性衝突。内容は基本的で、問題文での定義や考え方の指示にしたがって解いていけばよい。油断して、細かなミスをしないように注意が必要である。
- (2)の空欄および問1は、円運動、放物運動の標準問題。方針はすぐに立てられるので、要領のよい計算が求められる。
- (3)の問2は、計算問題としては難しくないが、「理由を簡潔に述べ」るために、解答欄をどう埋めるかに迷う。
物理問題 II 電磁気[標準]
無限の長さのはしご型導体に生じる電磁誘導
固定された無限の長さのはしご型導体があり、その上で棒磁石を一定の速さで運動させたときの、回路に流れる電流を求める。
- (1)は、与えられた簡単な等価回路を利用し、そのまま解けばよい。
- (2)の問1は、ある導線から左側の半無限回路網の合成抵抗値を求める問題である。結論も方針も与えられているので、慌てなければ対応できたであろう。
- (3)は(2)の続きとなる問題で、ここで半無限回路網に対する理解度が試される。
- その次の(4)が、もっとも難しい。はしご型回路にとりつけられた発光ダイオードの電流電圧特性のグラフと、発光ダイオードを流れる電流と棒磁石の速さのグラフから、電流回路の様子を正確にイメージする必要がある。
- (5)は(3)の応用。問題文の誘導をヒントに、正負に注意して解く。
物理問題 III 熱力学[標準]
断熱変化と等温変化、伸縮するヒモの熱力学的なサイクル
まず、理想気体を断熱変化および等温変化させたときの熱サイクルを、(1)で確認する。(2)ではそれを、内部エネルギーをもって伸縮するヒモに応用させる。このような設定ではあるが、(2)は(1)と直接の関係なく解けるようになっている。
- 気体が外部から正の仕事をされるのは気体が収縮するときであるのに対し、ヒモが外部から正の仕事をされるのはヒモが伸びるときである点を見落とさないように。
- (2)問1では、ヒモの張力の大きさを縦軸に、ヒモの長さを横軸にとったグラフの作図が要求された。
- 全体的に、文字や式が多く登場するので、式や文字を適切に選んで利用する必要があった。
攻略のためのアドバイス
京大物理を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。
●要求1● 問題文を読解する力
京大物理は問題文が長く、問題の設定を理解することに時間がかかる場合が多い。設定をきちんと把握するためには、相当の読解力が必要である。問題文にはヒントが含まれていることも多く、この読み取りが合否を分ける。
●要求2●正確かつ迅速に計算する力
京大物理では、例年、設問で与えられる記号(物理量)が多く、設問数も計算量も多い。このため、煩雑な計算をミスなく、かつ速く解く必要がある。
●要求3● 解くべき問題を見極める力
京大物理は、例年、問題文が長く計算量も多いため、時間内にすべて解くのは厳しい。このため、試験開始直後に問題全体にざっと目を通して解くべき問題を見極め、解答に必要な時間を適切に配分することが、合格点の確保に向けて重要となる。
大問の途中で解けない設問があっても、最後の方に独立して解ける設問がある場合が多いので、諦めず全体に目を通し、「解ける設問を確実に解く」姿勢が、合格には必須である。
対策の進め方
まずは、●要求2●を意識して、ミスなく要領よく解答できる力をつけよう。次に、基礎力がある程度ついたら、京大レベルの問題に慣れていこう。Z会の通信教育[本科]「京大コース」では、読解力向上や重量級の計算にも対処する力の養成を念頭においた出題を行っている。
また、●要求1●や●要求3●は実戦演習の中で培われる力である。京大物理は、早めに基礎を固め、徐々に長い問題文に慣れていかないと、太刀打ちできない。自分の得意不得意、問題の難易度を意識し、試験時間をめいっぱい活用して得点を最大化できるような解き方を身につけてほしい。
Z会で京大対策をしよう
2020年度、2019年度に比べれば、取り組みやすい試験でした。とはいえ、依然として分量や計算量は多く、時間内に全ての問題に解答するのは難しかったでしょう。
全体を通して、各大問の前半部分は基本〜標準的な問題が多いため、京大物理においては基本〜標準問題をいかにすばやく確実に解答できるかが重要です。また、他の受験生と差がつく「やや難」レベルの問題や、目新しい題材の問題をいかに多く解けるかが、合格の鍵と言えるでしょう。
京大物理の出題をみると、最初は面食らうかもしれませんが、目新しい題材ほど誘導が親切で、解きやすいことが多いです。大切なことは2回書いてくれたり、途中で検算になるヒントを散りばめたりしてくれていますので、ヒントを見落とさず、確信をもって解き進められるようになってほしいです。
Z会の通信教育[本科]「京大コース」では、問題文から状況を正しく読み解き立式する練習を通して、難易度の高い京大物理にも対応できる力を養います。演習を繰り返すことで、京大で頻出の目新しい設定の問題に出会っても、最後まで解ききる力が身につきます。粘り強い演習を積み重ねて、京大合格を勝ち取りましょう!
Z会の「京大コース」で着実に力を伸ばそう!
Z会の大学受験生向けコース[本科]「京大コース」は、京大入試の詳細分析を基に設計。入試本番から逆算して、合格に必要な力を段階的に身につけられる学習プログラムをご用意しています。京大受験のプロであるZ会だからこその教材&指導で、京大合格へと導きます。