Z会の大学受験担当者が、2023年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。
今年度の入試を概観しよう
分量と難度の変化 (時間:90分)
- 従来は大問4題の構成であったが、2019年度以降大問5題の構成である。
- 解答数は、単答問題は34(うち空欄補充が20)で2022年度から問題数の変化はないが、例年よりも空欄補充の出題が多かった。論述は18問出題され、2022年度の14問より増加した。そのうち、字数指定のある問題が14で2022年度の13より増加し、総字数も510字で2022年度の450字より増加した。また字数指定のない問題は4で、2022年度の1より増加した。
- 論述問題の問題数・総字数が増加し、解答の方向性が立てにくい出題も見られたため、2022年度に比べ難化した。
2023年度入試の特記事項
- 論述問題の指定字数の最大は60字(2022年度は40字)で、50字の出題も複数問見られた。
- 2020年度に出題された作図問題、2020年度・2021年度と続いた画像の判読を必要とする問題は見られなかった。
- 地形図の読図問題は、2021年度・2022年度では大問Ⅰで出題されたが、2023年度では大問Ⅴで出題された。
- 出題内容は自然環境・地誌・産業・社会・地形図の読図であり、頻出のテーマからの出題であった。
合否の分かれ目はここだ!
- 基本的な用語を問うものが多い単答問題で、確実に解答できたか。
- 論述問題において、短い字数でまとめる対策を十分に行えたか。
- 問題全体を見渡し、時間配分を考えながら効率的に解答できたか。
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大問別のポイント
大問 I
ヨーロッパの自然環境と資源エネルギーに関する大問。(1)の空欄補充問題、(2)の地形名、(4)の鉱産資源名など、基本的な問題が多いため、確実に解答して得点につなげたい。
- (3) E国(デンマーク)の風力発電については、再生可能エネルギーの利用例として、近年、新聞やニュースなどでよく取り上げられる事項である。また、偏西風はヨーロッパの気候だけでなく、産業やエネルギーなどへも影響を与えるため、関連性をしっかり理解しておきたい。
- (4) 北ヨーロッパの大西洋側の漁港は、暖流の北大西洋海流により、高緯度でも不凍港となるのは基本事項である。不凍港となる自然的要因までもれなく説明したい。
大問 II
南アメリカ大陸の産業と開発に関する大問。リード文では農業開発に関する内容も取り上げられたが、基本的な問題が中心で、全体的に解答しやすかったと思われる。産業が成立する背景となる自然環境や、開発事業の背景となる都市問題など、様々な分野が関連し合う出題が多く見られた。
- (1) 空欄ウ(リチウム)については難しいが、「電池の材料」をヒントに考えたい。
- (2) 植生と生業の特徴を説明する問題であるが、気候や農業の分布図を思い出しながら、具体例を挙げつつ説明したい。
- (3) 政策の背景について、問題文に「都市問題」について答えるとあるため、解答が絞りやすくなったであろう。
大問 III
5カ国の産業別人口構成と商業立地に関する大問。三角グラフの国判定はしやすいものの、論述において解答の方向性をまとめるのが難しい問題が見られた。
- (1) 本問ではC国とD国の国名を解答するが、後の問題に関連するため、すべての国について判定しておく必要があった。
- (2)・(3) B国(中国)の電子決済やA国(インド)の消費者の変化など、両国の新しい経済状況について取り上げられた。(3)のA国の消費者の変化については、解答の方向性がイメージしにくく、難度の高い問題であった。
- (5) 日本の商店街の類型とそれぞれで扱われている商品の違いについて説明する問題であった。解答のイメージはしやすいが、「買い回り品」という指定語句もあり、より解答しやすかったものと思われる。
大問 IV
西アジアの民族と宗教に関する大問。空欄補充が中心の大問であり、確実に得点したい問題が多く見られた。
- (1) 空欄イは後のシリアの内戦にも関係していることからも判断できるであろう。
- (4) ③で、民族W(クルド人)が独立した国家を持っていない理由について、様々な理由が考えられるが、問題文の「地図からわかること」という部分から解答の内容を絞り込みたい。
大問 V
球磨川河口部の地形図の読図に関する大問。干拓や工場の立地、都市の起源など、幅広い分野からの出題が見られた。論述問題数が多く、難度の高い問題も見られた。
- (2) ①では、この地域の標高が海面下にあることや、海岸部が護岸で囲われ、水門の地図記号も見られることから、干拓による造成地であることを想起したい。②では、読み取りが難しいが、平坦な土地の中に、標高が少し高い場所が見られることや、「島」という地名も判断のヒントになるだろう。
- (4) ②では、城跡の周辺に見られる施設の地図記号を読み取り、機能ごとに分類したい。他の城下町由来の都市の立地も参考にして考えたい。
攻略のためのアドバイス
京大地理を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。
●要求1● 幅広い分野についての知識力
京大地理は、自然(地形図の読図を含む)、産業、社会(都市・人口・民族など)、地誌といった幅広い分野から出題されるのが特徴である。細かい知識について問われることは少ないが、高校地理の全分野にわたって基本的な知識を押さえておく必要がある。
●要求2● 正確な資料読解力
京大地理では、多数の資料判読を必要とする論述問題が見られるので、正確な資料読解力が求められる。2023年度の大問II・大問Ⅳのように、分布や位置関係など、地図上での理解を必要とする問題も頻出なので、日頃から地図を用いた学習を行いたい。
●要求3● 簡潔に論述する表現力
論述問題の1問当たりの指定字数は100字以内で、40字前後のものが最も多い。また、字数指定なしの論述問題に取り組む場合にも、解答欄に合わせて適切な分量を見極める必要がある(解答欄の大きさから20~60字程度と判断する)。
様々な角度から解答できるよう、基礎的な知識と簡潔にまとめる表現力が必要である。
Z会で京大対策をしよう
京大地理は基礎的な内容が問われることが多いため、平易な問題でミスをすると他の受験生との差を広げられることになってしまいます。この傾向を踏まえて、しっかりとした対策と演習を行えば、高得点をねらうことができます。早めに高校地理の学習内容を押さえ、過去問を初めとする様々な演習問題に取り組むようにしましょう。
大問Ⅴの地形図の読図問題は、京大地理の定番といえます。新旧地形図の比較を含めて、様々な地形図に触れ、図から起伏や土地利用の特徴などを読み取る練習を積んでいれば、難なく対応できたでしょう。これらは資料問題の対策においても同様です。
本科「最難関講座 地理」では、京大地理攻略に役立つよう、基礎知識を確認し、図表の読み取りをもとにした論述問題を、幅広い範囲から多数出題しています。京大をめざすみなさん、Z会と一緒に頑張っていきましょう!