2023年度「京大英語」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2023年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化

  • 分量:増加/ 難易度:標準
  • Ⅰ・Ⅱの長文読解は、いずれも英文語数は100語以上増加したが、難易度は標準的であった。
  • Ⅲの和文英訳は例年通りで、分量・難易度とも変化はなかった。
  • Ⅳの自由英作文は書くべき分量は多くないが、書き始める前に、会話文から求められている内容を把握する作業が必要であった。

2023年度入試の特記事項

Ⅰ・Ⅱの長文読解は、いずれも和訳問題3題の構成となった。2022年度はいずれも内容説明問題1題と和訳問題2題であり、近年は内容説明問題を取り入れる傾向にあったが、2014年度以前の和訳のみの傾向に戻った
・Ⅲでは京大らしい和文英訳が引き続き出題された。
・Ⅳでは2021年度と同様の会話型の自由英作文(空所補充型・語数指定あり)が出題された。

合否の分かれ目はここだ!

・Ⅰ・Ⅱの長文読解はすべて和訳問題であり、シンプルな設問構成ではあるものの、複雑な構文の解釈や語義の推測、さらに読み手に伝わる和訳としてアウトプットする能力が求められる。

・Ⅲの和文英訳では、「損得勘定」といった日本語特有の表現や、「ろくなことがない」、「便宜を図る」といった表現をうまく別の日本語に読み換えることがポイントであった。ことわざを正しく解釈できたかどうかも鍵となる。

・Ⅳは問題文にある会話から、各空所で求められている内容を理解し、white lie(罪のない嘘)に関する会話が論理的につながるように注意する必要があった。

京大英語で対策必須の
長文読解英作文の対策が充実!



さらに詳しく見てみよう

大問別のポイント

 I【長文読解】 

  • 論説「インターネットによる情報氾濫時代における、物事の判断」についての約590語の英文。難易度は標準的で、2022年度の大問Ⅱと近いテーマであった。
  • 2022年度は内容説明問題1題、和訳2題だったが、和訳3題の構成となった。
  • (1)は、the+比較級…, the+比較級〜 の構文、blame A for B や devote A to B のイディオムが含まれる。this reduced attention span の自然な訳出がポイント。対比の while と部分否定の not entirely にも注意。
  • (2)は、まず It isn’t that 〜, but rather that … のつながりを把握すること。but rather that の中は as節+主節だが、間にコンマがない。節の区切りを正しく見抜きたい。with the result that … も前文に自然につながるように訳出する必要がある。public debate も適切な訳語の選択がやや難しかった。
  • (3)は、2つの動名詞を含む主語が長いため、文の動詞を正確に見抜くこと。文構造自体は複雑ではないが、weigh up(比較検討する)、the pros and cons(賛否両論) などの表現を1つ1つ丁寧に訳出することが求められる。

 II【長文読解】  

  • 論説「意識を理解することの難しさ」についての約730語の英文。大問Ⅰと同様、内容説明問題がなくなり、和訳問題3題という構成となった。
  • (1)は、profess to do(…と公言〔断言〕する)や the uninitiated(知識の乏しい人々)などの語彙を、文脈に即して語義を推測しつつ適切な日本語で表現する力が問われた。
  • (2)は、主語と目的語がそれぞれ複数の関係詞節を含んでおり長いため、修飾関係を見失わないよう注意が必要だった。quite a bit(かなりたくさんのこと)という表現も正確に訳したい。
  • (3)は、‘something it is like to be you’ と what it is to have a point of view in terms of 〜 の2箇所について、‘it is 〜 + to不定詞’ の形式主語構文が用いられており、読み解きにくかった 。また、下線部最後にある circular(堂々巡りの)は見慣れない単語だったかもしれないが、circulation(循環)や circle(円)からこの意味を推測できれば、逆にこれを含む1文の内容を推測することも可能であった。したがって、この1文を適切に訳せたかどうかも差がつくポイントであろう。

 III【和文英訳】 

  • 「情けは人のためならず」ということわざに関する和文英訳問題。ことわざは過去、2017年度に「生兵法は大怪我のもと」、2021年度に「転ばぬ先の杖」が出題されている。
  • 京大の定番の出題形式で、「損得勘定」「ろくなことがない」「便宜を図る」「人の世の真理を突く」などの日本語独特の言い回しは、和文和訳した上で訳出する必要があった。全体の難易度は標準的ではあるものの、一見すると訳しにくい日本語が例年より多いと感じたかもしれない
  • 最終文の「情けは人のためならず」は「情けは人のためにならない」と誤って解釈されることがあるが、「情けは人のためではなく自分のためだ」という意味を正しく理解した上で、適切な英語に訳す必要がある。

 Ⅳ【自由英作文】  

  • white lie(罪のない嘘)をテーマとした、会話文の空欄を指定語数内で補充する形式の問題。会話文の空欄補充は2016〜2018、2021年度に出題例があるが、語数制限がある点で2021年度と類似した形式である。(1)12語以内、(2)24語以内、(3)12語以内、(4)16語以内と、比較的少ない語数制限のもとで簡潔にまとめる必要があった。
  • (2)「『罪のない嘘』の具体例」は another example might be に続くものとして、適切な英語で表現するのに苦戦した受験生もいるだろう
  • テーマ自体は日常に即したもので取り組みやすい英文であるため、空欄に入るおおよその内容はさほど悩まず特定できるだろう。文法・語法のミスなく、論理的に成立した会話の流れにできたかどうかで差がついたと思われる。

 攻略のためのアドバイス

京大英語を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 単語力、文法・構文力

京大入試においては、まず相応の単語力が大前提となる。純粋な語彙の量だけでなく、複数の語義やイディオムなど、1つ1つの語彙に対する深い理解が求められ、日々の英語学習の中で意識的に身に付けていく必要がある。そのためには必ず単語集による学習を行い、日本語と英語のどちらからでも適訳を思い浮かべられるようにしよう

「文法・構文力」も同様に必須である。これも自分に合った問題集・参考書を見つけ、早めに苦手分野をなくしておくこと。また、知識の定着だけでなく、実際に読解問題に取り組む中で構文を見抜く練習や英作文に組み込む練習も並行して行いたい

●要求2● 精読力

まずは、1文ずつ英文の文構造を把握しながら正確に読む「精読力」の養成から始めよう。難関大の入試を見据えた長文読解の問題集・参考書に取り組むことが望ましい。

しばらくは時間がかかっても構わないので、問題に取り組んだ後に解答を確認するだけではなく、英文中でよく理解できなかった語句・表現は辞書を引いて意味や用法をきちんと確認するようにしよう

●要求3● 表現力

近年の京大入試は出題傾向の変化が大きい。内容説明問題を含む出題が続いていた長文読解は、2023年度は和訳のみの出題となったが、この傾向が続くとは限らない。長文読解においては、文脈をふまえて正確に和訳する力と、設問の解答となる該当箇所を見つけ、適切な長さでまとめる力の両方が必要だ。

和文英訳では定番の出題が続いており、日本語の難しい表現を英訳しやすい形に読み換えた上で英語に変換する練習を重ねることが大切である。自由英作文は数年前の出題が復活するなど傾向が安定していないが、どのような形式が出題されても、与えられた条件・状況を把握し、自分の意見や考え、その裏にある理由や意図が相手に確実に伝わるように的確に書く訓練をしておく必要がある。

対策の進め方

まずは、●要求1●の基礎的な部分を満たすことを目指そう。単語にしろ、文法・構文にしろ、覚えては忘れ、忘れては覚えていく地道な努力が不可欠である。また辞書を引きながら長文読解問題や英作文問題に取り組み、精読力と文法・構文を実戦で活用する力を同時に高めていこう。

次に、制限時間内での解答を意識しつつ京大レベルの問題に取り組もう。長文読解問題では、わからない単語が出てきても逐一辞書で確認せずに、英文全体の論理展開を意識して意味を推測する練習にも取り組むとよい。また和文英訳については、日本語独特の表現を含む問題に取り組み、意味内容を大きく変えることなく英訳しやすい日本語に読み換える練習を重ねよう。自由英作文は出題変化があっても対応できるよう、さまざまな形式・語数の問題演習を積んでおきたい

最後に、京大レベルの演習に精力的に取り組み、第三者の添削を受けるようにしよう。自分が意図したことが相手に伝わらないと得点にはつながらないので、常に第三者の視点を意識することが大切である。

Z会で京大対策をしよう

Z会京大英語担当者からのメッセージ

京大英語は毎年のように出題傾向の変化が見られますが、長文読解・英作文ともに難度が高く、解くのに時間がかかることに変わりはありません。文法・語法の正確な運用力が求められるのはもちろんですが、限られた時間の中で正確に文脈をおさえる読解力と、伝えるべき内容が相手に正しく伝わるように自分の知っている単語・構文で論理的に表現する力が求められています。

Z会の京大講座は毎月様々な設問形式を含む長文読解と英作文双方の演習ができるように設計されています。質の高い問題で実戦的な演習を積み、自分の解答に添った添削指導を受けることで、第三者に伝わる確かな表現力を身につけることができます。Z会での学習を通して表現力が求められる京大入試でも確実に得点できるようにし、京大合格を勝ち取りましょう!

Z会は京大合格に向けて全力でサポート!

「Z会の通信教育」京大対策講座

Z会の大学受験生向け講座では、入試本番から逆算して合格に必要な力を段階的に身につけられる学習プログラムをご用意しています。毎年、京大合格者を輩出し続けてきたZ会だからこその教材&指導で、京大合格へと導きます。

「Z会の通信教育」LINE公式アカウント

京大をはじめとする大学受験に役立つ情報を配信中。学習アドバイス記事やお得なキャンペーンのご案内、おすすめ講座情報などを随時お届けしています。ぜひご登録ください。

CVエリア

「Z会の通信教育」では、京大受験生向けの講座を多数開講中!

無料の資料請求も受付中!