「京大理系国語」個別試験分析(2022年度)

Z会の大学受験担当者が、2022年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化

2021年度と比較して全体の分量・難易度に大きな変化はなく、京大入試として標準的な難度の出題であった。

2022年度入試の特記事項

  • 例年通り、現代文・現代文・古文の三題の出題。(一)の現代文のみ文理共通の文章からの出題。(理系は一問設問数が少ない)
  • 2017~2021年度同様、(一)での漢字書き取り問題の出題はなかった。
  • (二)は小説家による文章表現についてのエッセイで、比喩表現や言葉遊びが多用されているので、理系受験生にはやや読みづらかったかもしれない
  • (三)は私家集からの出題。和歌の意味を直接問う設問はないが、和歌の意味を理解できていることを前提に取り組む必要がある。

合否の分かれ目はここだ!

(三)の古文は鎌倉時代の私家集からの出題。和歌に関連した出題は京大頻出であり、引き歌として提示されている和歌の解釈も難しくなく、文中に登場する語義のレベルも高くない。しっかり対策してきた受験生には、大意をとらえることはそこまで難しくはなかっただろう。

今回の問題文では、リード文で提示された状況を読み誤ると、全体の読解の方向性を大きく外す可能性が高い。リード文も丁寧に読み込んで素直に読み進めれば、話の方向性を見失うことなく解答できただろう。京大に照準を合わせた演習を積んでいたかどうかで差がつく。

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大問別のポイント

 (一):現代文  出典:岡本太郎『日本の伝統』

著名な芸術家による、伝統主義・権威主義への批判と新たな伝統創造への気概を主張する文章からの出題。主題は読み取りやすいが、解答のまとめ方に工夫を要する設問が多く、記述力が試される

  • 問一は傍線部周辺から解答要素を押さえればよく、比較的取り組みやすい設問。ここでの失点はできる限り避けたい。
  • 問二・問三は、随筆らしい表現を問題文の主題を踏まえて説明する必要がある設問。解答の中心要素はつかみやすいが、行数に見合う形でわかりやすくまとめる記述力が必要となる。
  • 問五は、問題文全体の主題を踏まえ「ほんとうの芸術家」について説明する全体のまとめとなる出題。傍線部自体の表現の説明と、問題文全体の内容を踏まえての説明が要求される難度の高い設問であった。

問題文中の表現の切り貼りでは解答を作成できず、自分なりに表現をふくらませて説明する必要がある京大らしい出題であった。取り組みやすい設問を見極めて確実に得点し、問題文全体の主題を踏まえて解答をまとめ上げる記述力が要求される出題で、京大型の演習経験を積んでいたかどうかで差がついただろう。

(二):現代文  出典:多和田葉子「雲をつかむ話」

筆者がかつて日本語を教えていた外国の青年とのやりとりから、文章表現について思いを巡らせる文章。比喩や言葉遊びが使われていて、理系では苦手意識を抱く人もいるかもしれない。問一・問二は、傍線部前後から解答を作成できるが、問三は文章全体を踏まえて答えるのでやや難しい

  • 問一は「尖った先が眼球に刺さる」の比喩を、手紙を送ることに即して的確に説明する必要がある。手紙は日記とは違って相手がある、という点も押さえる。
  • 問二は傍線部を含む段落の内容から説明できる。鱒男のふだんの文章の作り方と「出たい」という直接的な欲望の表出との落差を押さえる。
  • 問三は点差がつく問題。傍線部の「そういう風」が指す「『春が来ると』という文節を…接ぎ木した」の説明は最終段落にあるので、ここまで目配りしたい。単に「文法的には正しくないが~」というレベルではなく、一般論に主観の強い欲望が結び付いている、という点まで具体的に説明できたかがポイント

理系受験生にも文学的素養を求める京大らしい文章からの出題だが、記述演習をしっかり積んできた受験生であれば問題なく対応できただろう。

 (三):古文  出典:『建礼門院右京大夫集』

鎌倉時代の私家集からの出題。京大で出題された過去10年の出典を振り返ると、近世に書かれた文章、平安時代の物語文、室町時代の歌論、2022年度は鎌倉時代の私家集から…と、時代やジャンルを問わず出題されるため、幅広い文章の演習経験を積むことが必要だ。また、和歌について直接問う問題は多くないものの、和歌の意味を捉えていることを前提とした出題が頻繁にみられる。理系にも文学的な素養が求められているため、しっかりと古文の対策をおこないたい。

  • 全体としては、難しい単語や意味の把握できない和歌はない。ただし、リード文にある「死別した恋人と過ごした日々の回想」という前提を読み落とすと、解答の方向性を誤ってしまうので注意したい。
  • 問一は、引き歌自体の意味ではなく、「作者の心情」が求められている。作者の心情が直接本文に描かれているわけではないため、「亡き恋人と過ごした日々」の回想である点を押さえて心情を推し量る必要がある。
  • 問二は、傍線部自体の語句は難しくないが、「適宜」どこまでことばを補うべきかに迷う。また、ここは亡き恋人との日々を思い出している場面であるため、「むつかし」を本来の語義である嫌悪感を示す表現で訳すのは適切ではない。場面を踏まえて、「困ったことだ」などのニュアンスで訳出したい。
  • 問三では現代語訳が求められているが、「さこそ」の指示内容を明らかにする必要があるため、傍線部前後の内容はもちろん、注で提示された和歌を踏まえる必要がある。なお、「さこそ」に気を取られて、「人をも」「げに」「(思ひ)けめ」など、副詞・助詞・助動詞の訳出に漏れがないように。

 攻略のためのアドバイス

京大理系国語を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 基本的な語彙力

文学的・抽象的な表現を含む文章からの出題が多い京大国語では、読解力・記述力ともに高いレベルが要求される。その水準に達するためには、基本語彙の意味を正確に把握し、記述する際にも適切な語を選ぶことができる語彙の運用力が必要不可欠。Z会の書籍『現代文 キーワード読解』『速読古文単語』などで、語彙力の基礎を固めよう。

●要求2● 幅広いジャンルに対応できる読解力

京大国語では、評論・随筆・小説など、普段受験生が読み慣れないであろうさまざまなジャンルの文章から出題されるため、京大で出題されそうな文章の読解経験の量がものをいう。問題文中に直接的に表現されていなくとも、文中の表現のニュアンスを汲み取り、筆者の主張や心情を正確に読み取る力が必要である。

要求3● 大意をまとめなおす記述力

京大国語の設問は、すべてが記述式問題であり、求められる記述の分量もかなり多い。解答に必要な要素を見極める力と、必要な要素を正確に伝わる形で解答にまとめなおす力が求められる。問題文中の記述の寄せ集めではなく、適宜自分の言葉で言い換えたりふくらませたりすることができる確かな記述力が必要である。

対策の進め方

まずは土台となる●要求1●および●要求2●を満たすことを目指そう。Z会ではさまざまなジャンルの問題文を出題するので、読解経験を積むことができる。語彙・文法事項といった知識事項の抜け漏れをつぶしていくと同時に、記述演習にも取り組むことで、第三者に伝わる解答の作成法を身につけよう。

その後は、さらに●要求2●および●要求3●に対応する力を磨いていこう。Z会の通信教育では、受験生の9月から、より実戦的な京大対応のオリジナル問題を出題する。第三者の客観的な視点からの添削指導を受けて、自分の解答に足りない要素やまとめ方のコツを把握し、解答の質を高めていこう。読解量・記述量ともに負担が重い京大国語に対応するために、制限時間内でうまく解答をまとめることを意識して問題演習を行おう

入試直前期には、過去問演習に加えて予想問題にも取り組むことが大切だ。本番前の最終調整として、より本番に近い形での演習をするとよい

Z会で京大対策をしよう

Z会京大国語担当者からのメッセージ

現代文は二題とも随筆からの出題で、文系・理系の枠内にとどまらず知識・教養の幅を広げてほしいという京大のメッセージが感じられます。理系受験生にとっては読解のハードルが高く感じられるかもしれませんが、京大としては標準的な難度の出題といえます。過去問を含め京大型の問題演習を積んでいた受験生であれば、実力を発揮できたでしょう。

古文は中世の私家集からの出題。和歌を含む文章は京大頻出のジャンルであり、注・リード文から登場人物の置かれている状況を把握し、丁寧に心情を追っていく読解力が試されます。古文の対策を怠らずにしっかり演習を積んでいたかどうかが試される出題でした。

受験生がなかなか読み慣れないような文章から出題され、さらに広い解答欄に自分なりの言葉でわかりやすく解答をまとめていくことが要求される京大国語では、さまざまな文章の読解経験を積み、作成した解答を第三者に見てもらうことが非常に重要です。

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