2023年度「京大理系国語」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2023年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化(時間:理系90分)

文系・理系ともに、2022年度と比較して分量がやや増加している大問はあるものの、全体としては平年並み。また、難易度に大きな変化はなく、京大入試として標準的な難度の出題であった。

2023年度入試の特記事項

  • 例年通り、現代文・現代文・古文の三題の出題。(一)の現代文のみ文理共通の文章からの出題。(理系は一問設問数が少ない)
  • 2017~2022年度までと同様、(一)での漢字書き取り問題の出題はなかった。
  • (二)は結核患者である筆者が、同様の病で亡くなった女性の死を哀悼しつつ、生と死について思いをめぐらせた随筆からの出題。
  • (三)は近世の随筆からの出題。内容としては読みやすいものの、比喩の示す内容を明らかにするなど丁寧な読解が求められる。

合否の分かれ目はここだ!

(三)の古文は江戸時代の随筆からの出題。問題文量はやや多めであるものの、今回の問題文は近世の文章ということもあり読みやすく、内容はとらえやすい。ただし、比喩の指し示す内容を明示する必要があるなど細部まで理解できているかが問われていたため、読解力の差があらわれやすいだろう。また、例年と同様、どこまで説明に含めるべきかを見極める点が難しく、京大に照準を合わせた演習を積んでいたかどうかで差がつく。

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大問別のポイント

 (一):現代文  出典:福田恆存『芸術とはなにか』

昭和に活躍した評論家・劇作家の福田恆存による演劇論からの出題。2022年度文理共通第一問の岡本太郎の文章同様、芸術の理想について筆者の考えを述べるもので、京大では頻出の文章ジャンルである

  • 問一・問二は傍線部周辺から解答要素を押さえればよく、比較的取り組みやすい設問。解答欄に見合う形でわかりやすくまとめることを意識し、ここでの大きな失点は避けたい。
  • 問三・文系問四は、解答の中心要素は傍線部周辺から押さえることができるが、わかりやすい形にまとめるには高度な記述力が要求される。演劇・芸術に対する筆者の考えを押さえ、全体の論旨を意識して解答をまとめたい。
  • 文系問五/理系問四は、「本文全体を踏まえて」という設問条件があり、芸術の本来のあり方についての筆者の考えも踏まえて説明する必要がある設問。傍線部自体の表現の説明と、問題文全体の内容を踏まえての説明が要求される難度の高い設問であった。

問題文中の表現の切り貼りでは解答を作成できず、自分なりに表現をふくらませて説明する必要がある京大らしい出題であった。取り組みやすい設問を見極めて確実に得点し、問題文全体の主題を踏まえて解答をまとめ上げる記述力が要求される出題で、京大型の演習経験を積んでいたかどうかで差がついただろう

(二):現代文  出典:福永武彦「小山わか子さんの歌」

結核で亡くなった歌人を追悼した随筆。2022年度は現代作家による読みやすい文章だったが、2023年度は1949年発表の古い文章で、京大でよく出題されるタイプ。問一・問二は、傍線部前後から解答を作成できるが、問三は設問の条件を踏まえて文章全体から解答要素を拾わなければならないのでやや難しい

  • 問一は第一段落の「死者が生者に対して……共に死ぬ」の記述からまとめる。解答欄が2行なのでポイントを押さえて簡潔にまとめる必要がある。
  • 問二は第二段落の傍線部までの記述を中心にまとめる。「自らの問題」「他者の問題」の内容を明らかにし、「ゆえに」で結ばれる関係でまとめる。
  • 問三は点差がつく問題。「小山わか子の歌集にも触れながら」という設問条件に留意し、「自己を希薄ならしめることではない」の内容を説明する。傍線部付近だけでなく、第一段落の「死者の…記憶なくしては、…生のもつ真の悦びに想到し得ない」も踏まえて答える。

理系受験生が苦手とする抽象的な表現が多い随想だが、理系でも文学的素養を求める京大らしい文章からの出題。書くべきポイントは押さえやすいので、京大対策の記述演習をしっかり積んできた受験生であれば問題なく対応できただろう。

 (三):古文  出典:松岡行義『後松日記』

江戸時代後期の随筆からの出題。近世の文章が出題されるのは、2020年度『北辺随筆』以来。2022年度とは異なり、和歌に関する出題はなかった。近世の随筆かつ、リード文で「当時の為政者について論評したもの」と説明がされているため、内容を把握すること自体は難しくはない。しかし本文の内容全体を踏まえ、3行という広い解答欄に解答要素をもれなく入れることは難しく、高度な解答作成力が求められている

  • 問一の理由説明は、傍線部直後の内容だけれはなく、「全て古き名残は……罪深げなり。」の内容も含められたかどうかがポイント。
  • 問二の現代語訳は、「指示語と比喩の指す内容を明確にしつつ」という設問条件がついている。基本的な単語の意味を押さえたうえで、設問条件に合うような解答を作成できたかどうかで差がつく。
  • 問三の内容説明は、「このかしこき新君たちも……」から傍線部までの内容を押さえたうえで、「かしこき新君たち」が具体的にどのような君主なのかの説明を補う。傍線部付近だけではなく、本文全体を踏まえた解答が求められている

 攻略のためのアドバイス

京大理系国語を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 基本的な語彙力

文学的・抽象的な表現を含む文章からの出題が多い京大国語では、読解力・記述力ともに高いレベルが要求される。その水準に達するためには、基本語彙の意味を正確に把握し、記述する際にも適切な語を選ぶことができる語彙の運用力が必要不可欠。『現代文 キーワード読解』『速読古文単語』(いずれもZ会出版)などで、語彙力の基礎を固めよう。

●要求2● 幅広いジャンルに対応できる読解力

京大国語では、普段受験生が読み慣れないであろうさまざまなジャンルの文章から出題されるため、京大で出題されそうな文章の読解経験の量がものをいう。問題文中に直接的に表現されていなくとも、文中の表現のニュアンスを汲み取り、筆者の主張や心情を正確に読み取る力が必要である。

要求3● 大意をまとめなおす記述力

京大国語の設問は、すべてが記述式問題であり、求められる記述の分量もかなり多い。解答に必要な要素を見極める力と、必要な要素を正確に伝わる形で解答にまとめなおす力が求められる。問題文中の記述の寄せ集めではなく、適宜自分の言葉で言い換えたりふくらませたりすることができる確かな記述力が必要である。

対策の進め方

まずは、土台となる●要求1・2●を満たすことを目指そう。Z会では、通信教育・教室ともにさまざまなジャンルの問題文を出題するので、読解経験を積むことができる。語彙・文法事項といった知識事項の抜け漏れをつぶしていくと同時に、記述演習にも取り組むことで、第三者に伝わる解答の作成法を身につけよう

その後は、さらに●要求2・3●を磨いていこう。Z会の通信教育では、受験生の9月からより実戦的な京大対応のオリジナル問題を出題する。第三者の客観的な視点からの添削指導を受けて、自分の解答に足りない要素やまとめ方のコツを把握し、解答の質を高めていこう。読解量・記述量ともに負担が重い京大国語に対応するために、制限時間内でうまく解答をまとめることを意識して問題演習を行おう。

入試直前期には、過去問演習に加えて予想問題にも取り組むことが大切だ。本番前の最終調整として、より本番に近い形での演習をするとよい。

Z会で京大対策をしよう

Z会京大国語担当者からのメッセージ

現代文は評論と随筆からの出題で、文系・理系の枠内にとどまらず知識・教養の幅を広げてほしいという京大のメッセージが感じられます。理系受験生にとっては読解のハードルが高く感じられるかもしれませんが、京大としては標準的な難度の出題といえます。過去問を含め京大型の問題演習を積んでいた受験生であれば、実力を発揮できたでしょう。

古文は近世の随筆からの出題。傍線箇所だけではなく、本文全体の内容を的確に読み取り、要素を意識しながら解答を作成する力が試されます。古文の問題演習を怠らずにしっかり演習を積んでいたかどうかが試される出題でした。

京大国語では、受験生がなかなか読み慣れないような文章から出題され、さらに広い解答欄に自分なりの言葉でわかりやすく解答をまとめていくことが要求されます。そのため、理系であっても、さまざまな文章の読解経験を積み、作成した解答を第三者に見てもらうといった、国語の対策を十分にすることが非常に重要です。Z会では、長年の入試分析をもとに、本科「京大講座」、特講「過去問添削」など、京大合格までの道筋を支える講座を多数用意しています。良質な問題と添削指導を通じて盤石の実力を養成し、京大合格をつかみ取りましょう!

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