Z会の大学受験担当者が、2022年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。
今年度の入試を概観しよう
分量と難度の変化 (理科…1科目90分、2科目180分)
分量:増加 / 難易度:やや易化
- 各分野から出題されるが、「遺伝情報の発現」および「生態と環境」からの出題頻度が比較的高い。
- 教科書に掲載のない、初見の題材をもとにした出題が基本となる。
- 近年は知識問題と考察問題がバランスよく出題される。論述問題は、解答欄の範囲内で答える。
2022年度入試の特記事項
- 2019年度以降、大問4題中2題が(A)、(B)に分かれていない。
- 2019年度・2020年度は、多くの受験生には解答の糸口をみつけられないような設問がなかったが、2022年は2021年度に引き続き、解きやすい問題からかなりの考察力や論述力を要する問題まで、さまざまな難易度の設問があった。
- 2022年度は計算が煩雑な設問がなかったが、論述を中心に設問数が増えたため、負担感は変わらない。
- 実験構築の論述が2題あった(生物問題Ⅰ問6、生物問題Ⅲ問3)。
合否の分かれ目はここだ!
2019年度・2020年度は、手がつけられないような設問がなく、解ける設問でケアレスミスせずに確実に得点することが重要になったが、2021・2022年度は従前のように、基本的な問題を確実に解いたうえで難易度の高い考察に挑む必要があった。
2022年度は論述量も多いため時間内に解答作成をすべて終えるのは難しく、解ける設問で確実に得点できるかどうかが明暗を分ける。
- 生物問題Ⅰ問1・問3,生物問題Ⅱ問1,生物問題Ⅲ問1・問4,また生物問題Ⅳ問9のような、教科書レベルの知識で解答できる問題、生物問題Ⅰ問2・問4や生物問題Ⅱ問4,生物問題Ⅲ問6,生物問題Ⅳ問2・問3のような取り組みやすい考察問題は、誤字や要素不足などのミスをせずに、確実に解くようにしたい。
- 一方、生物問題Ⅳ問4のような問いは、思いつかなかったら、ひとまず先に進み、時間が余ったら戻るようにしたい。
- 考察論述問題では、わかっていないことまで無理に踏み込まず、読み取れる内容を設問の要求に沿って簡潔に記し、無駄な失点を防ぎたい。
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大問別のポイント
生物問題 I
テーマは神経の抑制性イオンチャネルとチャネルに影響する物質の探索。
- 抑制性シナプスの作動に関する知識問題(問1)およびリード文を踏まえた取り組みやすい考察問題(問2)、また遺伝子の発現に関する平易な設問(問3・4)は確実に解答したい。
- 問6は実験構築の論述であり、与えられている実験2を踏まえて述べていきたい。
生物問題 II
中問に分かれていない大問で、メダカの性決定と遺伝および初期発生と遺伝子の発現を取り上げている。
- 問1〜3はリード文にあるメダカの性決定を踏まえて個体の性染色体のもち方を考える。
- 「人工遺伝子の挿入は…さまざまな部位に起こり」「染色体の一か所に挿入される」ことから、実験2に関する問5・6と実験3に関する問7・8では、人工遺伝子が挿入された染色体が異なる。
生物問題 III
(A)
- 芽生えの形態の違いへのエチレンの影響を題材とする問題。
- 問2(1)・(2)ではリード文にある「子葉展開」「胚軸の…伸長」の両方を踏まえて述べる。
- 問3は実験構築の論述であり、エチレンの合成と応答のどちらに異常があるかによって、エチレン添加の際の形態の変化が異なる。
(B)
- 植物どうし、また植物と共生菌の種間関係を題材とする問題。
- トウモロコシとインゲンマメを混植すると、それぞれを単植した場合より収量が増加することを入り口に、種間関係に関する問いが続いた。
生物問題 IV
(A)
- 花筒の伸長と昆虫の口器の伸長の共進化をめぐる問題。
- 問4は当たり前すぎて、却って思いつきにくかったかもしれない。
(B)
- 問6〜8は、種内競争の強弱が種間競争に与える影響をリード文に沿って考えていく語句選択問題である。
- 問9は、資源の重なりが小さくなる変化(棲み分け・食い分けなど)によって共存できる方向に種間関係が変化することを述べる。
攻略のためのアドバイス
京大生物を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。
●要求1●関連分野と連動した知識
ハイレベルな勝負になる京大生物では、教科書レベルの知識でカバーできる用語問題や論述問題での失点は許されない。教科書と図説を参照する習慣を身につけよう。
教科書で太字になっている語については単純に暗記するだけでなく、関連する生命現象と合わせて、自分の言葉で説明できるようにしておくこと。
●要求2● 実験データの読解力
京大生物は、初見の題材の出題が多く、見慣れない実験の手法やデータを的確に読み解く必要がある。
そのためには、条件や結論を箇条書きにして整理する訓練が有効。まずは標準レベルの実験考察問題に取り組むところから始め、徐々に京大レベルに近づけていこう。
●要求3● 解くべき問題を見極める力
論述力は自分の手を動かして答案を書き上げることが何よりも大切。実戦演習を重ねる中で、仮説→実験→結果→考察→仮説という一連の流れを自分なりに整理する癖を身につけ、論述に必要なキーワードを集めることから始めよう。
書き上げた後は、独りよがりな答案になっていないか、添削をしてもらうとよい。
対策の進め方
知識力の完成
なるべく早く●要求1●の完成を目指すこと(遅くとも高3の夏をめざそう)。とくに、「生態と環境」、「生物の進化と系統」は対策が遅れがちになるので、計画的に学習を進めよう。
Z会の本『生物 知識の焦点』は、高校生物の全範囲について、教科書だけでは学べない入試頻出事項を解説しているので、知識力の向上に最適である。
演習量の確保
入試形式の演習問題になるべく数多くあたり、●要求2●および●要求3●のレベルUPを図ろう。典型・頻出問題は一通りこなしておくこと。Z会の通信教育[本科]「京大コース」でも、京大の出題レベルに合わせて典型・頻出問題を出題していく。
速読・速解の習得
問題の分量が多いこともある京大生物では、なるべく全部の設問に手をつけられるよう、問題を解くスピードも重要になってくる。本番の入試を意識して、時間配分にも気を配った演習を積もう。
Z会で京大対策をしよう
2021年度に引き続き、基礎的な用語問題から難易度の高い考察論述問題や計算問題まで様々な設問が課されました。解ける問題を手早く確実に解答作成した後、時間配分を意識して難易度の高い問題に挑んで得点を上積みしていく必要がありました。
また、考察問題は、設問に沿って考察を深めていく構成のことが多く、ある設問で勘違いをするとその後も間違えてしまいます。条件の見落としがないように、要点を押さえた速読を演習時から意識しましょう。
論述問題では、設問の要求を正しく理解したかどうか、要求に対して的確に論述できたかどうか、といったところで、差が開きます。学習時間が限られてくると、生物の問題演習では、考察論述問題も要素だけ挙げて答え合わせ・・・となりがちです。
しかし、個別試験に向けては、実際に手を動かし、文どうしのつながりも意識して論述する演習を、一定量取り入れるようにしてほしいです。そして、それにはZ会の添削問題が最適だと、自信をもっておすすめします。
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