Z会の大学受験担当者が、2023年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。
今年度の入試を概観しよう
分量と難度の変化 (理科…1科目90分、2科目180分)
分量:増加 / 難易度:やや易化
・各分野から出題されるが、「遺伝情報の発現」および「生態と環境」からの出題頻度が比較的高い。
・教科書に掲載のない、初見の題材をもとにした出題が基本となる。
・近年は知識問題と考察問題がバランスよく出題される。
2023年度入試の特記事項
・設問数・論述量が減り、分量は減少した。高度な考察や複雑な計算が求められる設問などもなかっため、負担感は2022年度に比べて格段に軽くなった。
・2019年度〜2022年度は、大問4題中2題が(A)、(B)に分かれていなかったが、2023年度は全大問が(A)、(B)に分かれ、それぞれ別の題材を扱っていた。
合否の分かれ目はここだ!
・2023年度は、2021・2022年度と異なり、解ける設問でケアレスミスせずに確実に得点することが重要な出題構成であった。2019年度・2020年度に近しい出題であった。
・教科書レベルの知識で解答できる問題(Ⅰ問2、Ⅱ問1、Ⅲ問3〜問5、Ⅳ問1・問2など)や取り組みやすい考察問題(Ⅰ問3・問4、Ⅱ問1〜問3、Ⅲ問1・問2(1)・問6、Ⅳ問5など)は、条件の見落としや誤字・要素不足などのミスをせずに、確実に解くようにしたい。
・そのうえで、Ⅰ問6やⅡ問4・問6、Ⅳ問3・問7のような考察問題を丁寧に検討したり、Ⅰ問5やⅣ問4・問6などを、条件を見落とさずに述べたりすることに時間を割きたい。
・生物問題Ⅱ問5のような問いは、あてはまりそうなものをとりあえず書いて先に進み、時間が余ったら戻るようにしたい。
・考察論述問題では、わかっていないことまで無理に踏み込まず、読み取れる内容を設問の要求に沿って簡潔に記し、無駄な失点を防ぎたい。
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さらに詳しく見てみよう
大問別のポイント
生物問題 I
(A)
・ミトコンドリア内膜上のATP合成酵素を介したH+の移動とATPの合成・分解が題材。
・比較的取り組みやすい問題が並んだ。
(B)
・4種の調節タンパク質と遺伝子Xのプロモーターの相互作用が題材で、設問は2つである。
・リード文にある4種の調節タンパク質の特徴を踏まえて、使われている調節タンパク質と結果を整理しながら実験を読み解いていく紛らわしさはあるが、丁寧に読み解いて考えれば解ける出題であった。
生物問題 II
(A)
・ヒトのマイクロサテライトのハプロタイプについて、その遺伝や組み換え、単一遺伝子疾患の遺伝子の含まれる場所の特定などが問われた。
・リード文や設問文の説明が丁寧であり、最近の遺伝の問題より格段に取り組みやすい。
・問4は、患者に共通するサテライト番号を含むように指定することになるだろう。
(B)
・問5としてショウジョウバエの形態形成にかかわる遺伝子群の知識問題、問6としてホメオティック遺伝子群の発現の状態とマウス胎児の形態の関連を問う知識問題が出された。
・問6は、図4・5を踏まえてマウス胎児の形態(図6)とHox遺伝子群の転写の様子(図7)を検討する、複数の図を処理する必要のある設問であった。
生物問題 III
(A)
・しつがい腱反射を題材に、筋紡錘での感覚受容や、反射弓の末梢神経を刺激したときの筋肉における膜電位変化の意味、筋細胞内のカルシウムイオン濃度の調節が問われた。
(B)
・重力屈性とオーキシンの移動や作用について、基本的な事項が問われた。
・生物問題Ⅰ(A)と並んで解きやすい設問の並んだ中問である。
生物問題 IV
(A)
・光合成生物を題材に、光合成色素や光の利用波長、複数の遺伝子からみた藻類の系統関係、アーケプラスチダ(植物など)以外の生物の葉緑体の由来が問われた。
・問3は、Ⅱ(B)問6ほどではないが複数の図を読み込む必要がある。
(B)
・個体数を推定する2つの方法について、区画法が適した生物の特徴、区画法が個体数を反映しない要因、標識再捕法の結果が過大あるいは過小になる要因が問われた。
攻略のためのアドバイス
京大生物を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。
●要求1●関連分野と連動した知識
ハイレベルな勝負になる京大生物では、教科書レベルの知識でカバーできる用語問題や論述問題での失点は許されない。教科書と図説を参照する習慣を身につけよう。
教科書で太字になっている語については単純に暗記するだけでなく、関連する生命現象と合わせて、自分の言葉で説明できるようにしておくこと。
●要求2● 実験データの読解力
京大生物は、初見の題材の出題が多く、見慣れない実験の手法やデータを的確に読み解く必要がある。
そのためには、条件や結論を箇条書きにして整理する訓練が有効。まずは標準レベルの実験考察問題に取り組むところから始め、徐々に京大レベルに近づけていこう。
●要求3● 解くべき問題を見極める力
論述力は自分の手を動かして答案を書き上げることが何よりも大切。実戦演習を重ねる中で、仮説→実験→結果→考察→仮説という一連の流れを自分なりに整理する癖を身につけ、論述に必要なキーワードを集めることから始めよう。
書き上げた後は、独りよがりな答案になっていないか、添削をしてもらうとよい。
対策の進め方
知識力の完成
なるべく早く●要求1●の完成を目指すこと(遅くとも高3の夏をめざそう)。とくに、「生態と環境」、「生物の進化と系統」は対策が遅れがちになるので、計画的に学習を進めよう。
Z会の本『生物 知識の焦点』は、高校生物の全範囲について、教科書だけでは学べない入試頻出事項を解説しているので、知識力の向上に最適である。
演習量の確保
入試形式の演習問題になるべく数多くあたり、●要求2●および●要求3●のレベルUPを図ろう。典型・頻出問題は一通りこなしておくこと。Z会の通信教育でも、京大の出題レベルに合わせて典型・頻出問題を出題していく。
速読・速解の習得
問題の分量が多いこともある京大生物では、なるべく全部の設問に手をつけられるよう、問題を解くスピードも重要になってくる。本番の入試を意識して、時間配分にも気を配った演習を積もう。
Z会で京大対策をしよう
2022年度と打って変わって、ケアレスミスが許されない高得点での競争になる出題となりました。理解があいまいな分野を残してしまうとかなり苦しくなります。出題範囲全体について正確な理解を身につけて臨む必要がありました。
例年だと、考察問題は、設問に沿って考察を深めていく構成のことが多く、ある設問で勘違いをするとその後も間違えてしまいます。条件の見落としがないように、要点を押さえた速読を演習時から意識しましょう。
論述問題では、設問の要求を正しく理解したかどうか、要求に対して的確に論述できたかどうか、といったところで、差が開きます。学習時間が限られてくると、生物の問題演習では、考察論述問題も要素だけ挙げて答え合わせ・・・となりがちです。しかし、個別試験に向けては、実際に手を動かし、文どうしのつながりも意識して論述する演習を、一定量取り入れるようにしてほしいです。
そして、それにはZ会の添削問題が最適だと、自信をもっておすすめします。