Z会の京大コース担当者が、2022年度入試の京大文系数学を徹底分析。受験生の再現答案や得点開示データをもとに、合否を分けた「差がつく一問」を選定し、京大文系数学の攻略法を詳しく解説します。
まずは、2022年度の「京大文系数学」を俯瞰しよう
はじめに、問題構成や出題傾向をおさえて、「自分が受ける入試問題」を正確に把握しましょう。
出題傾向に合わせて十分な対応力をつける
京大文系数学に限ったことではありませんが、「出題傾向に合わせて対策を練る」ことは当たり前の入試対策です。京大文系数学では、微積分、場合の数と確率、整数、図形問題がほぼ毎年出題されますので、どれか1つでも弱点があれば、その弱点が差に直結しやすいということになります。
合否の分かれ目は?
合格者と不合格者の平均点の差が大きい大問は第1問と第2問、第4問でした。とくに、第1問は抽出した答案では15点近くの差がついていました。逆に、第3問と第5問の差はそれほど大きくなく、差のついた3題の出来が合否に大きく関わったと考えてよいでしょう。
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差がつく一問は
≪第1問≫
どんな問題?
京大らしい小問のない「単問」の明快な証明問題です。京大らしいのは「単問」であるだけなく、常用対数の条件の与え方です。多くの大学では、近似値を与えるのに対し、京大では本問のように「範囲(評価)」を与える場合が多く見られます。実は、同様の与え方の常用対数の問題は過去にも多く例があります。その意味で、本問は「きちんと京大対策をしてきたか」を問う出題ともいえるでしょう。
受験生の再現答案&添削を見ながら、差がつくポイントを確認しよう
Z会では、受験生が作成したこの大問の再現答案を、独自の採点基準に基づいて添削しました!
結果として、この答案の得点は20点となっています。
目標点に到達するには?
まず、右側の不等式を示すために「45.5」の計算から始めており、2048>2022にたどり着いて証明ができています。 本問では、左側の不等式の証明が難しいところでしたが、この答案では「45.4の常用対数」を計算し、与えられた範囲を用いて、この値の範囲を正しく求められています。さらに、2022>2000にも気づいており、「2000の常用対数」を「2の常用対数」で正しく表せていました。この「2000」をもってくるところに大きな配点があると考え、これによって目標点に到達することができました。さて、答案はここで止まってしまっていますが、実は、この「2000の常用対数」を与えらえた範囲を用いて評価すれば、左側の不等式を証明することができますから、完答まであと一歩でした。おそらく、答案や計算用紙にいろいろと式を書いているうちに、自分が何の計算をしていて、目標が何か、大きな証明の構造を見失ってしまったのではないかと思います。このようなときは、一度、議論全体を見直してみるとよいかもしれません。
受験生全体の解答傾向は?
第1問の合格者と不合格者の最大の違いは、白紙答案かどうかであり、不合格者では白紙答案が目立ちました。たしかに左側の不等式の証明では、「2000や1000といった都合のよい値を自らもってくる」ところの難易度が高いですが、少なくとも右側の不等式は京大受験生であれば、確実に処理したいところです。ひょっとすると「過去問の類題の経験がある」ために、本問のような問題は難しい、という先入観があったのかもしれせん。 それでも、示すべき不等式を変形して「証明の方針を探る」ということをすれば、右側の不等式は解決できたハズです。糸口の見つからない問題に出会っても「手を動かしてみる」という姿勢は、過去問演習などの実戦演習ではつねにもっておきたいところです。
Z会が独自作成。この大問の採点基準はこちら!
大学から採点基準が公表されていない中、Z会では、実際の受験生の答案や得点開示データを毎年収集し、綿密に分析。長年の分析に基づいて作成した独自の「採点基準」で、本番に限りなく近い採点を可能にしています。
「2022年度入試 京大文系数学 第1問」の採点基準
配点 30点
《配点のめやす》
□1 右側の不等式の証明ができて10点
□2 左側の不等式の証明ができて20点
《一言コメント》
□2では、「2000の常用対数」を「2の常用対数」で表すことができて、10点の部分点を与えます。
Z会の『過去問添削』で、京大対策を進めよう!
Z会では、特別講座『過去問添削』を開講中です。長年の分析に基づく正確な採点で現在の実力を正確に把握。そのうえで、あなたの答案に寄り添った適切なアドバイスにより、次の打ち手が明確になります。実戦力を効果的に高められる講座です。
Z会京大コース担当者からのメッセージ
京大文系数学では、レベルの高い発想力、計算力、論述力が問われる出題も見られますが、標準的な出題も比較的多く見られます。出題傾向はあまり変化なく、微積分、場合の数と確率、整数、図形問題はほぼ毎年出題されます。問題なのは、「難易度の高い問題がどの単元で出題されるかわからない」ということで、苦手や演習不足の単元が難問で出題されれば差はつきませんが、標準的なレベルの問題として出題されたときに致命的な差を生んでしまうということです。つまり、出題傾向を踏まえた十分な対策の有無が合否に直結するわけです。過去問添削は過去問を扱いますので、京大の出題傾向に合わせた問題演習、弱点の発見ができるだけでなく、問題の難易度や主旨ごとに異なる採点基準を、再現答案分析をもとに作成しておりますので、実際の入試の採点に近い採点を経験することができます。また、論述における不備などへの添削指導を通して効率的に合格答案を作成するための力をつけることができます。