「地理」2019年度京都大学個別試験分析

分析速報

■分量と難度の変化(時間:90分) 
・例年,大問4題で構成されていたが,2019年度は,大問5問構成となった。
・解答数は,単答問題(記号選択・語句解答・空欄補充)が29,論述問題が19であり,2018年度の単答問題25,論述問題15に比べて増加した。
・難易度は大問ごとに差はあるが,全体としてはほぼ前年並みである。
・大問構成は,社会・地誌・産業・環境問題・地形図の読図からの出題であった。例年,大問Iで出題されていた地形図の読図が大問Vで出題された。
・大問1題につき,2~3つの資料が提示されることが多い。

■今年度入試の特記事項
・大問が1題増え,時間配分に注意する必要があった。
・指定字数のある問の総字数は470字(2018年度は420字),字数指定のない短文論述(20~60字程度)が6問(2018年度は6問)で,論述総字数はやや増加した。
・2018年度はなかった空欄補充形式の問題が,大問IIIとIVで見られた。
・2017年度に出題された作図問題は見られなかった。

■合否の分かれ目
・単答問題も基本的な用語を問うものが多く,また論述問題も難易度の高いものはあまり見られないため,十分に対策を行った受験生であれば解答できる問題が大半である。しかし,そのことはすべての京大受験生に共通して言えることであるため,1~2点が合否を分けることがある。単答問題の失点やケアレスミスは絶対に避けたい。
・設問文が解答のヒントになっているものが多い。設問文をよく読むことで効率的に取り組むことができ,高得点を目指すことも可能となる。
・大問Vで地形図の読図が出題された上,すべて論述問題であったため,解答順と時間配分が合否を分けたであろう。

 

■大問別ポイント
 大問I  
人口の年齢構成と女性の就業に関する出題である。
・(1)典型的な人口ピラミッドの判別であり,女性の就業率グラフもヒントに確実に得点したい。
・(2)スウェーデンの少子化対策について「家族の支援」とあるので,子育て家庭への直接的な支援を中心に解答を組み立てたい。
・(3)イタリア南部と北部の経済状況の違いについての基本的な問題である。
・(4)2では,大都市に多い待機児童問題についてまとめる。3では,世帯人数や家族構成の違いを述べればよい。

 大問II  
ライン川・ドナウ川・メコン川流域の地誌に関する出題である。
・(1)国際河川の定義を問題の条件に合わせて説明したい。
・(3)都市アは,フライブルクである。問題文もヒントにし,パークアンドライドの目的について,端的に述べたい。
・(4)分裂した現在の国々の違いに気づけば解答は容易である。宗教・民族の違いに触れつつ,ユーゴスラビア連邦崩壊の理由についてまとめたい。
・(5)「ベトナム」に広がる,「メコンデルタ」の「サバナ気候区の特徴」を説明する。サバナ気候区の特徴については,2018年度も問われている。

 大問III  
世界の農業について,基本的な内容を問う問題である。ミスなく点を積み重ねたい大問である。
・(1)空欄補充はいずれも基礎的な用語である。誤字に気をつけ失点を防ぎたい。
・(2)綿花の生産・輸入・輸出の上位国を語群から選ぶ問題である。X・Yは容易だが,Zで迷うかもしれない。統計順位を正確に覚えている必要はなく,綿花の栽培適地が「生育期は高温多雨,結実期は乾燥」であることから,選択肢の中でこの気候に該当するウズベキスタンを導きたい。また,(3)の問題文もヒントになる。
・(3)アムダリア川・シルダリア川の灌漑とカラクーム運河の建設によるアラル海の縮小と周辺耕地の塩害は,環境問題の定番である。字数に合わせて過不足なく説明したい。
・(4)天然ゴムの原産地と現在の主産地を思い出し,共通する気候区(熱帯雨林気候区)を判定し,特徴を簡潔にまとめたい。熱帯雨林気候区の降水量の特徴は2018年度も出題されている。どの気候区を問われても特徴を説明できるようにしておきたい。

 大問IV  
大気汚染について多角的に問う問題である。
・(1)の空欄補充,(2)の単答は,基礎的な問題であり,取りこぼしのないようにしたい。
・(3)表中の国の位置関係を頭の中で描き,排出量の多い国と沈着量の多い国の分布を考えたい。その上で,ヨーロッパにおける自然的要因として,偏西風を想起する。それらを制限字数内でバランスよくまとめたい。
・(4)1は,インドネシアのスマトラ島でプランテーション栽培されている作物について,問題文の「果実」もヒントに,商品価値の高い油ヤシを思い出したい。2は,油ヤシの果実がパーム油に加工されることと用途の両方を制限字数内に盛り込みたい。
・(5)北京を初め中国では広く,冬の暖房に石炭を利用してきたという知識の有無で点差が開くと思われる。

 大問V  
長野県西南の御嶽山東麓の新旧地形図の読図問題である。論述問題のみの出題であるが,いずれも30字程度なので,落ち着いて地形図を読み取りつつ,解答を組み立てたい。
・(1)1では,古くからの集落は,湧水があるなど水利がよいところ(崖下・扇端など)に立地するという知識のもと,また,問題文の「2集落の間に水田がみられる」という記述に留意して,地形図にあたりたい。反対に2では,新しく集落が立地したところは,水利が不便であることを念頭に,土地利用を読み取りたい。
・(2)1では,の下にある地図記号の凡例を参考に,土地利用の変化を読み取ればよい。2では,問題文の「植生の変化は日本の各地で生じたものであり,山の利用のあり方が変化した」から,里山を想起し,地形図を読むとわかりやすい。
・(3)1では,道路が敷設されている箇所をの地形図と照らし合わせてみると,ほぼ等高線に沿っていることがわかる。2では,御嶽山の東麓であることや,温泉の地図記号があることなどから,建物は保養施設や別荘地として利用されていることに気づきたい。「住宅地内の土地利用」という問題文の記述に留意し,住宅のそばに針葉樹林の記号があることについても,解答に盛り込みたい。

 

攻略のためのアドバイス

京大地理を攻略するには,次の3つの要素を満たす必要がある。

●要求1● 幅広い分野についての知識力
京大地理は,自然(地形図の読図を含む),産業,社会(都市・人口・民族など),地誌などといった幅広い分野から出題されるのが特徴である。細かい知識について問われることは少ないが,高校地理の全分野にわたって基本的な知識を押さえておく必要がある。また,基本的な用語については,40~50字程度で簡潔に説明できるようにしておくことが望ましい。

●要求2● 正確な資料読解力
京大地理では,多数の資料が提示される。資料の判読を行い,その判定結果をもとに論述するという出題構成が見られるので,資料判読を誤ると大量失点につながりかねない。例年,出題されている資料の中には読み取りが難しいものも珍しくないため,正確な資料読解力が求められる。

●要求3● 簡潔に論述する表現力
論述問題の1題当たりの指定字数は100字以内で,40~60字程度のものが最も多いが,いざ書いてみると,字数の調整が難しい。また,2015年度から出題されている字数指定なしの論述問題に取り組む場合にも,解答欄に合わせて適切な分量を見極める必要がある(解答欄の大きさから20~60字程度と判断する)。様々な角度から解答できるよう,基礎的な知識と簡潔にまとめる表現力が必要である。

攻略法として,まずは●要求1●を満たすことを目指そう。授業での教科書学習を中心にして幅広い知識を正確に獲得することに努めよう。Z会の通信教育本科「難関国公立コース 地理」を利用するなどして,高校3年生の夏までに,各分野の基本事項を理解しながら学習を進めていこう。2019年度の試験のように,基礎的な知識で対応できる出題もあるので,基礎固めを疎かにせず,知識を確実に自分のものにしておきたい。

次の段階としては,基礎知識を使いこなしながら,京大型の論述問題に対応できるようになろう。Z会の通信教育本科「難関国公立コース 地理」では,受験生の夏までの間にも取り組めるよう,論述問題を段階的に出題している。また,Z会の通信教育では資料問題も数多く出題しているため,京大地理攻略の大きなポイントでもある資料読解力も磨くことができる。

最後は実戦演習を行おう。制限時間を意識して,素早く正確に資料判読を行うとともに,短い指定字数の中で,的確に論述をまとめられるようになろう。Z会の通信教育本科「難関国公立コース 地理」では京大に対応した,資料の判読を行い,その判定結果をもとに論述するという構成の問題も出題しているので,自分の得意不得意,問題の難易度を意識し,時間内で得点を最大化できる取り組み方を身につけてほしい。また,Z会の通信教育の特講「過去問添削 京大地理」では,過去5年間の過去問の添削が受けられる。京大で求められる端的に説明する力を養成するのに打ってつけである。

 

▼「難関国公立コース」地理担当者からのメッセージ
・大問構成が4題から5題に変更になり,動揺した受験生も多かったと思われます。比較的解きやすい問題も多かったので,全体を見渡し,時間配分を考えてから取り組むという試験の鉄則が活きた受験になったことでしょう。
大問 Iのグラフ1は,いずれも特徴的な人口ピラミッドでした。グラフ2の女性の年齢別就業率グラフで,日本はいわゆる「M字カーブ」を描くことを知っていれば,自信を持って国名判定が行えたと思います。国名判定を誤ると後の(2),(3)とも失点してしまいます。慎重に行いましょう。
大問IIは,3つの国際河川流域の地誌が問われました。(4)のユーゴスラビアの分裂について,50字でまとめるのは,難しかったと思います。必須要素を過不足なく盛り込み,短い字数でまとめる練習を積んできた人は,確実に得点できたことでしょう。
大問IIIは,易しい大問でした。取りこぼしの無いよう,気をつけて取り組みましょう。2018年度のZ会の通信教育本科「難関国公立コース 地理」4-2では,アラル海の環境問題についての論述問題を出題していました。一度でも書いたことのある題材であれば,書きやすかったことでしょう。
大問IVの資料は初見の人も多かったことでしょう。が,いずれも読み取りやすい資料でした。
大問Vは,京大では定番の地形図の読図問題でした。村落立地の条件などの知識を援用して解答をまとめましょう。

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