「文系国語」2019年度京都大学個別試験分析

分析速報

■分量と難度の変化
・現代文・現代文・古文の3題の出題。
・(一)の現代文のみ文理共通の文章からの出題(理系は1問設問数が少ない)。
・すべて記述式。解答欄は1行14センチで、2行~5行程度の設問が大問1題につき3~5問(理系は3~4問)出題される。解答時間に対する記述量はかなり多めである。
・古文が難化したものの、全体としては分量・難度とも2018年度から大きな変化はなく、京大入試としては標準的な難度の出題であった。

■今年度入試の特記事項
・2018年度に続き、(一)は評論からの出題となった。2017・2018年度同様、漢字書き取り問題の出題はなかった。
・(二)は詩人二人による、詩のあり方についての対話文からの出題。出典の形式としては目新しいが、実質的には京大頻出の文学論に近い文章であり、標準的な難度の出題だった。
・(三)は江戸時代後期の評論からの出題。2016年度から続いていた漢文を絡めた設問の出題はなかった。

■合否の分かれ目
2018年度は小説だった(二)が、今年度は対話形式の文章であった。対話といっても内容はひとまとまりの評論として読めるもので、論旨も明確であり、その意味では2018年度よりも読み取りやすく、また設問も解答の方向がつかみやすかったと思われる。逆に言えば、2018年度よりも読解力や表現力の差が得点差に結びつきやすい出題だったともいえる。解答欄の広さに応じて、解答要素を的確に取捨選択することが求められた。

 

■大問別ポイント
 第1問(現代文) 出典:金森修『科学思想史の哲学』
近代科学のあり方と、そこに対するオールタナティブ(=代案)としての可能性をもつ寺田寅彦の物理学について対比して論じた文章からの出題。論理展開は明確で、筆者の主張はつかみやすい。ただ、解答作成においては、傍線部周辺から解答要素を探すことができる設問と、文中に明記されていない内容を自分なりに類推して表現しなければならない設問とで難度が異なり、さまざまな文章に触れ、京大型の記述演習を積んでいたかどうかで差が開く出題だった。
・問一・問二は3行・4行という解答欄の大きさを踏まえて、傍線部前後の記述をわかりやすく言い換えてまとめればよい。
・問三・問五は、寺田寅彦の物理学のありようについて、文中の記述から類推して自分なりの表現を加えてまとめなおす必要がある。寺田寅彦の文章に触れたことがあれば、よりイメージしやすかったかもしれない。
・3行~5行という広い解答欄を踏まえ、自分なりに表現を工夫してまとめる必要のある京大らしい出題で、例年通り記述問題の演習経験が求められた。

 第2問(現代文) 出典:大岡信・谷川俊太郎『詩の誕生』
詩の生死について論じた文章。詩には生死がある→詩の生死には個人的なレベルのそれと社会的なレベルのそれがある→詩の社会的な死は新しいものを生み出し、前代も含めた伝統全体を更新する契機となりうる、というのが大まかな流れだが、論の中心は〈詩の社会的な死の意義〉にあるとつかめれば、解答の方向を大きく外すことはなかったであろう。
・問一は、「活字になった詩」=社会的に存在するものと押さえ、傍線部直前の〈消滅していくところに詩の本質がある〉を使ってまとめる。
・問二は、谷川俊太郎の発言を、個人の中での「微視的」ではない場合の感動の消滅と対比させつつまとめる。
・問三は、「潜在的」「社会化」という語をそれぞれわかりやすく説明する。
・問四は、「そういうもの」=社会化された詩と押さえ、傍線部の後の内容を使ってまとめる。
・問五は、エリオットの言ったことの、大岡信なりの「理解」をまとめる。

 第3問(古文) 出典:藤井高尚『三のしるべ』
2018年度は和歌を含んでいなかったが、2019年度は和歌を含んだ歌論から出題された。問題文は一見読みやすそうに見えるが、キーワードとなる「みな月の望」に注がないため、これが「旧暦六月十五日」の意味であり、現在の〈真夏〉に当たることに気がつかないと、読解に苦労する。思い込みによる誤解に注意し、一文ごとの意味を丁寧に解釈することがポイントとなる。
・問一「ふじのねに……」の歌に即して説明すればよい。
・問二「それ」の指示内容を〈富士山の雪がいつまでも消えないこと〉などとしたうえで、「みな月の望にも……」の部分と「かいなでの歌よみ」を丁寧に訳せば、主要なポイントはすべて押さえられる。
・問三「さるからに……」以下の傍線部を逐語訳したうえで、「さるからに」の内容を「ふじはいみじき高山なれば」以下からまとめる。
・問四〈筆者が問題視していること〉は、傍線部とその前後部分に書かれているが、それは要するに〈歌の不合理な部分を理屈で説明しているだけでは、歌の感動を知ることはない〉ということ。筆者は、そういう『万葉集』の古今の注釈者(歌学者)たちの姿勢を問題視している。
・問五「いにしへよりよき歌には……」とある文末の一文を解答の中心にするが、「本文全体を踏まえて」とあるので、さらに俊恵法師の「ただ歌をば、をさなかれ〈=ただ歌は、子どもらしい気持ちで詠め〉」といった言葉の内容なども含めてまとめればよい。

 

 

 

攻略のためのアドバイス

京大文系国語を攻略するには、次の3つの要素を満たす必要がある。

●要求1● 基本的な語彙力
文学的・抽象的な表現を含む文章からの出題が多い京大国語では、読解力・記述力ともに高いレベルが要求される。その水準に達するためには、基本語彙の意味を正確に把握し、記述する際にも適切な語を選ぶことができる語彙の運用力が必要不可欠。Z会の書籍『現代文 キーワード読解』『速読古文単語』などで、語彙力の基礎を固めよう。

●要求2● 幅広いジャンルに対応できる読解力
京大国語では、評論・随筆・小説など、普段受験生が読み慣れないであろうさまざまなジャンルの文章から出題されるため、京大で出題されそうな文章の読解経験の量がものをいう。問題文中に直接的に表現されていなくとも、文中の表現のニュアンスを汲み取り、筆者の主張や心情を正確に読み取る力が必要である。

●要求3● 採点者に自分の考えを伝える力
京大国語の設問は、すべてが記述式問題であり、求められる記述の分量もかなり多い。解答に必要な要素を見極める力と、必要な要素を正確に伝わる形で解答にまとめなおす力が求められる。問題文中の記述の寄せ集めではなく、適宜自分の言葉で言い換えたりふくらませたりすることができる確かな記述力が必要である。

受験生の夏までは、まずは土台となる●要求1・2●を満たすことを目指そう。Z会では、通信教育・教室ともにさまざまなジャンルの問題文を出題するので、読解経験を積むことができる。語彙・文法事項といった知識事項の抜け漏れをつぶしていくと同時に、記述演習にも取り組むことで、第三者に伝わる解答の作成法を身につけよう。その後は、さらに●要求2・3●に対応する力を磨いていこう。Z会の通信教育では、受験生の9月からより実戦的な京大対応のオリジナル問題を出題する。第三者の客観的な視点からの添削指導を受けて、自分の解答に足りない要素やまとめ方のコツを把握し、解答の質を高めていこう。読解量・記述量ともに負担が重い京大国語に対応するために、制限時間内でうまく解答をまとめることを意識して問題演習を行おう。入試直前期には、過去問演習に加えて予想問題にも取り組むことが大切だ。本番前の最終調整として、より本番に近い形での演習をするとよい。

 

▼「京大コース」文系国語担当者からのメッセージ
・(一)は近代科学の可能性を広げる寺田寅彦の物理学のありようについて論じた文章、(二)は高名な詩人による詩のありようについての対話と、さまざまな文章の読解経験を積み、知識・教養の幅を広げてほしいという京大のメッセージが感じられる出題でした。寺田寅彦の文章は、2018年度のZ会専科「京大即応演習」でも出題していますが、一度彼の文章に触れたことがあれば、(一)の設問を解く際の助けとなったかもしれません。
・古文は論じられている和歌を正しく解釈できるかが全体の出来を左右する、難度の高い出題でした。「みな月=水無月=旧暦六月=真夏」という古典常識が前提となっており、知識事項も落とさずにしっかり学習することが求められています。
・受験生がなかなか読み慣れないような文章から出題され、さらに広い解答欄に自分なりの言葉でわかりやすく解答をまとめていくことが要求される京大国語では、さまざまな文章の読解経験を積み、作成した解答を第三者に見てもらうことが非常に重要です。Z会では、長年の入試分析をもとに、本科「京大コース」、専科「京大即応演習」「過去問添削」など、京大合格までの道筋を支える講座を多数用意しています。良質な問題と添削指導を通じて盤石の実力を養成し、京大合格をつかみ取りましょう!

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