新学習指導要領で高校英語はどうなる?

2022年度からスタートした新学習指導要領。高校英語の授業や、大学入試ではどのような変化が起きているのでしょうか。従来の英語教育と比較してご紹介していきます。

 

新学習指導要領が目指すもの

2022年度から、高校では新しい学習指導要領(2018年公示)に基づく英語教育がスタートしています。
わが国の英語教育では幕末・明治以来、伝統的に「読む」力が重視され、授業時間のほとんどが英文解釈や文法の習得にあてられてきました。西欧諸国の進んだ知識や技術を外国語の文献から学ぶ必要のあった時代にはもちろんそれでよかったでしょう。しかし、現代ではまったく事情が違います。英語は世界各国の人たちと一緒に活動したり、日本の文化を国際的に発信したりするために用いられるツールなのです。学習指導要領がより「コミュニケーション」を重視するようになってきた背景には、そうした時代の変化があります。
これまでの学習指導要領でも、コミュニケーションを重視し、「聞く」「話す」「読む」「書く」4技能を総合的に育成するねらいが掲げられていました。しかし、大学入試で相変わらず「読む」力が偏重され続けたこともあり、実際には高校の授業で「話す」「書く」に関わる実践的な言語活動が十分に行われていたとは言えないでしょう。また、小→中→高の接続が十分でなく、進級・進学後にそれまでの学習内容や指導方法を発展的に生かせていないといった問題も指摘されていました。そこで、今回の学習指導要領改訂は、コミュニケーションに必要な資質・能力を伸ばすことに加えて、中学校での学習と高校での学習を接続させること、「外国語を使って何ができるようになるか」を明確にすることを目標に行われたのです。

 

英語の授業はこんなに変わる!

新しい学習指導要領のもとで、高校英語は2種類の科目に再編されました。一つは「聞く」「読む」「話す」「書く」4技能のうち「話す」技能をさらに「やり取り」「発表」に細分化した5領域を総合的に扱う科目「英語コミュニケーション」、もう一つは発信能力(「話す」と「書く」)をとくに強化する科目「論理・表現」です。
「英語コミュニケーション」では日常的な話題・社会的な話題を取り扱いながら総合的な言語活動を行うことが強調され、「論理・表現」ではスピーチ、プレゼンテーション、ディベート、ディスカッションなどでの発信を実際に行うことが明示されました。現実生活のさまざまな局面で行われる多様なコミュニケーションのかたちが具体的に想定されていることがわかります。今後、高校の授業は英語を使って生徒たち自身がさまざまな活動を行う実践的なスタイルへと変わっていくことになるでしょう。今まさに、学校現場でも新しい授業や学びのあり方が模索されている最中です。学校で実践的なアウトプットの機会が増えていけば、生徒たちの英語力の向上、さらには学習意欲の向上につながることが大いに期待されます。
また、従来の学習指導要領で目標とする英単語数は、中学校1200語、高校1800語の計3000語でした。しかし、 新しい学習指導要領では小学校600語~700語、中学校1600語~1800語、高校1800語~2500語で、合計すると4000語~5000語。以前に比べてかなり増やされていますよね。グローバル化の進展を背景に、若者の英語力のレベルを全体として底上げしたいという意図もはっきり見て取れます。

 

新たに見えてきた課題とは……

一方で、新たに見えてきた課題も少なくありません。少なくともしばらくのあいだは、ICTの活用やアクティブラーニングなど新しい教育手法に教師や生徒がうまく対応しきれず、十分な学習成果が得られない可能性があります。
また、先ほど述べたように、高校卒業時までに習得を求められる英単語数は従来よりもかなり増えていますよね。しっかり定着させるには、生徒個人の自覚的な努力も求められるでしょう。
コミュニケーションや発信力を重視する授業がこれから増えていくことは間違いありませんが、授業時間は限られているため、土台となる文法の理解が不十分なまま大学入試の時期を迎えてしまうケースも考えられます。より高いレベルでのコミュニケーション能力、発信能力を目指すのであれば、文法・語法の正確な理解がどうしても欠かせません。それをおろそかにすると、スキルアップも頭打ちになってしまいます。
大学の入学者選抜で課される英語の評価方法が非常に多様化しつつある現状にも注意が必要です。大学入学共通テストにおける外部検定試験の利用は見送られましたが、大学が個別に行う入学者選抜では、英検TEAPなど英語4技能検定を利用するケースが着実に増えてきました。外部検定の成績が求められないとしても、共通テスト(筆記試験とリスニングテスト)の扱いや個別入試問題の出題傾向も大学ごとにまちまち。志望校ごとに入学者選抜の内容を把握し、それぞれに適切な対策・準備を進めるのはますますたいへんになっているのです。
こうしたさまざまな課題を考慮すると、一人ひとりの事情やニーズに合わせ、校外学習をうまく活用することも有力な選択肢になるでしょう。

 

 

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