大問別の正答率とともに、Z会の科目別担当者が出題の狙いも解説します。テストは受け終わった後が肝心です。本講評を元に振り返ってみましょう。
総評
今回の入試基礎力診断テストの英語では,個別試験を含めた大学入試全体で求められる読解力を試す問題を「共通テスト」で出題される問題の傾向に沿って出題しました。
「リーディング」の平均点は51.9点で,6割には届きませんでした。大問別の正答率は以下の通りです。前半のウェブサイトや広告・パンフレットなどの読み取りに比べ,後半の説明文・論説文の正答率が低くなっていました。
大問1 73%
大問2 64%
大問3 61%
大問4 40%
大問5 47%
大問6 47%
特に注目すべき問題
小問別に見ていくと,後半の読解問題の中でも,チンパンジー研究者の生涯を時系列で述べた説明文を扱った大問5の問4 Which of the following best describes Dr. Goodall?「グドール博士を最もよく言い表しているのは,次のうちどれか。」という問題や,オーケストラ(交響楽団)の歴史についての論説文から出題した大問6の問4 Which of the following statements best summarizes the article?「次のどの説明が,記事を最もよく要約しているか。」など,英文全体の内容把握を問う問題の平均正答率が40%を下回っており,受験者の多くが苦戦したであろうことがうかがえました。
大問5,6のような説明文・論説文は,基本的に各パラグラフ(段落)に1つのトピック(主題)があり,英文全体のトピックにつながるという構造を持っています。トピックとは「何について論じているか」ということであり,英文全体のトピックを効果的に伝えられるように複数のパラグラフが組み立てられています。
説明文・論説文を題材とした読解問題では,部分的な理解を問う問題に加え,英文全体の理解を問う問題が出題されるのが普通で,各パラグラフのトピックとその関係性を把握しながら英文を読み進められているかが問われます。今回のテストの大問5の問4,大問6の問4ともに,パラグラフごとのトピックを読み取った上で英文全体のトピックを特定し,これに一致するような選択肢を選ぶという意識を持つことで,正答を導きやすい問題であったと言えるでしょう。
今後の学習について
「トピックを把握する力」は,共通テストに限らず,国公立大学の個別試験で出題される「要約問題」などでも問われる力であり,大学入試レベルの長文読解問題に対応するためには不可欠なものです。もちろん,その土台となる文法・語彙などの基礎的な英語知識も少しずつ身につけていく必要がありますが,並行して英文の論理展開を正確に読み解く練習を重ねることが大切です。
Z会の英語講座では,トピック把握力を始め,英文の内容を正確に理解するために必要となる着眼点を体系的に身につけ,読解力を鍛えることができます。添削問題での演習を重ねることで,大学入試レベルの長文読解にも対応できる力を身につけましょう。
総評
今回の入試基礎力診断テストの英語では,共通テストの出題傾向に沿ってリスニング力を問う問題を出題しました。
「リスニング」の平均点は59.4点で,全体としては高2秋の段階であることを考えれば健闘していると言えますが,大問別で見ると,大問5や大問6などの長文を一度で聴き取る必要のある問題の正答率が低くなっていました。大問別の正答率は以下の通りです。
大問1 80%
大問2 61%
大問3 66%
大問4 63%
大問5 32%
大問6 50%
注目すべき問題
大問5,大問6は,共通テストでは頻出の問題形式となっています。特に正答率が低かった大問5は,講義の概要をまとめたワークシートを見ながら講義を聴くという形式で,1回で音声を聴き取り,聴き取った内容をもとにワークシートを埋めたり,さらに提示されるグラフも考慮しつつ選択肢を選んだりする必要がありました。聞き取った内容と与えられた情報を組み合わせて,素早く正確に処理する力が問われる問題で,難度が高いと感じた方も多かったのではないでしょうか。
このようなタイプの問題では,設問文やグラフ,表などの形で問題を解く手がかりになる情報が提示されており,音声が流れる前にこれらの情報を読み取る時間が与えられます。この時間を活用して与えられた情報を吟味し,どのような情報を聞き取る必要があるのか見当をつけた上で音声を待ち構えるという姿勢が大切になります。
今回のテストの大問5においては,事前に与えられた情報の中にあるキーワード「外貨準備(foreign exchange reserve)」や,ワークシートの表にある「それぞれの通貨について,2019年の外貨準備が 50% を上回っていたかどうか(over 50% or 50% or less)」と「過去20年間で外貨準備が減ったか増えたか(increase or desrease)」という2つのポイントに特に注意して音声を聴く必要がありました。多くの受験生がこの点は把握できていたことと思いますが,大問5の平均正答率が約30%にとどまったのは,一度に処理すべき情報量の多さに加え,あまり馴染のない話題だったこと,様々な数字が含まれていたことなどが原因でしょう。
今後の学習について
共通テストの「英語リスニング」では,単に英語を聴き取る力だけが問われるわけではありません。上で見たように,複数の情報をかけ合わせながら正答を素早く導き出すという,高度な情報処理能力も同時に問われているのです。こうした出題に対応するには,普段から英語の音声に慣れておくこと,聴き取った音を理解できるように語彙・文法などの知識の基礎固めをすることはもちろん,同様の形式の問題に数多く取り組んで,事前に与えられた情報を頼りに情報を待ち構えて音声を聴き取り正答を導き出すという作業を,素早く・正確に行う演習を積んでいく必要があります。
Z会の通信教育大学受験コース「共通テスト攻略演習」では,共通テストの出題ポイントを押さえた多様な問題を出題しています。早い段階から傾向に沿った問題演習に定期的に取り組み,リスニング力と情報処理能力を効率的に身につけましょう。
総評
今回の「入試基礎力診断テスト」の数学では,「共通テスト」の特徴をクローズアップした出題をしました。「数学I,数学A」は平均点としては 44.2 点でした。今回は高2の秋での出題であり,おそらく「共通テスト形式の演習が初めてであった」という人も少なくなかったかと思います。その点を考慮に入れると善戦した結果といえるでしょう。最も大事なことは,復習をして次回の模試や本番につなげることです。本講評を,復習や対策の指針としてください。
第1問
大問全体の得点率は 38.4% であり,4つの大問の中で一番得点が伸び悩みました。まず,本問は「日常の事象の問題」を数学を適用して問題を解決することが求められており,「2次関数」の問題なのですが,その状況や設定の理解が第一であるため,1つめの設問から正答率が 62% と伸び悩みました。このタイプは共通テストでは頻出の問題なので,はじめのうちは時間をある程度かけてじっくり解いて慣れてきたら時間を気にして解く,というように段階を設定した演習をするとよいでしょう。また,各設問間で得点率が急落したところは,(3)から(4)にかけてです。(4)は「各 t について,線分比が同じ」という捉え方が難しくて差がついたものと思われます。この「捉え方」をしっかり確認しましょう。
第2問
測量を題材にした「図形と計量(三角比)」の問題であり,大問全体の得点率は 39.2% でした。本問は教科書でもよく見受けられる題材であり,第1問よりは手がつきやすかったようです。特筆すべきこととして,(2)よりも(1)の正答率が低かったことが挙げられます。おそらく,(1)では近似値計算が必要であり,これに手間取った人が多かったようです。近似値計算は日常事象の問題でよく必要になるので,今後,慣れていきましょう。
第3問
大問全体の得点率は 51.2% であり,今回の4つの大問の中ではもっとも得点率が高かったです。問題に流れがあるため,前の設問から後の設問に向けて徐々に正答率が下がっていきましたが,(2)の(i)から(ii)のところでとくに大きく得点率が下がりました。(2)(ii)では,(i)の結果から,AHとBHの長さを具体的に求めるところがあまり経験のない処理だったようです。この部分だけでも「解答」で確認しておきましょう。また,本問と第4問は太郎さんと花子さんの構想や方針にしたがって考察する問題でした。このタイプの問題も共通テストならではの出題の仕方なので,演習を重ねて慣れていきたいです。
第4問
部屋割りを題材にした「場合の数」の問題であり,大問全体の得点率は 47.2% でした。(1)全体はまずまずの正答率であり,(1)でミスをした人は本問を復習の上,類題にもあたっておきたいです。(2)以降では前の設問で考察した考え方を応用するところがポイントであり,これも共通テストらしい出題の流れです。とくに「前問で考えたこととの違い」を意識して,必要に応じて考え方を変更することが大切です。
今後の学習について
今回の4題は,いずれも共通テストで重視されている問い方を前面に出した大問が並んでおり,難しく感じた人が多かったと思います。共通テストでは「基本事項が身についているかを試す基本問題」も織り交ぜられますが,高得点を狙うためには,基本事項の定着を前提として今回のような設問にも対応することが求められます。
このような力を身につけるには,普段の学習において,単に問題を解くという演習だけではなく,1題をいくつかの解法で解いてみる,他の解法と比較して相違点を考える,他の問題との関係を考えるなど,1段深い考察をすることが大切であり,この学習は共通テストだけではなく,個別試験対策としても重要です。Z会数学では,この点を重視した解答解説や添削指導をしていますので,ぜひ活用してみてください。
総評
「数学II,数学B,数学C」の平均点は 39.5 点で,「数学I,数学A」よりも約 5 点ほど下がりました。その理由として,数学IAより設定がより複雑だったこと,図形的な見方がより要求されたことなども挙げられますが,高2の秋という時期を考えると,「ベクトル」など履修が完了してから時間があまり経っていない単元が含まれていたことも大きな要因だったかもしれません。
もし演習時に「基礎力の不足を感じた」のであれば,それ自体が今回の受験の成果です。教科書などを見ながらでも,今回のテストの復習を行い,加えて基礎問題集などで基本事項の確認・定着を行うなど,次回以降に備えるとよいでしょう。
第1問
大問全体の得点率は 37.6% でした。本問の設問間の正答率の特徴としては,どの設問の正答率も約 40% であまり大きな変化がないことが挙げられます。つまり,本問は「全部できたか,全部できなかったか」という人が多かったようです。その理由としては,問題の設定の理解が難しかったのだろうと思われます。今回のテストの全体的な特徴にもなりますが,問題文が長く,その読解と内容の把握に時間がかかる問題もあります。つまり,数学においてもある程度の「読解力」が必要になるわけです。今後は,素早く状況をつかむ,必要な情報をいち早く見抜く,といったことなども演習を通じて意識していくとよいでしょう。
第2問
「図形と方程式」から「円とその接線」に関する問題で,太郎さんと花子さんの方針で複数の解法を考えるものでした。大問全体の得点率は 49.2% で,今回の4つの大問の中でもっとも得点率が高かった問題です。設問間の正答率を比較すると,最初の(1)が 42% なのに対して後半の(3)(i)は 80% と,とてもよくできていました。今回に限らず,テストでは「自身の得点を最大化する」ことが大事であり,きちんと「解ける問題はないか」と全体をみていた現れです。今後も続けていきましょう。
第3問
奨学金を題材にした「数列」の問題。日常事象に数学を活用するもので,設定の理解や読解力も必要になります。大問全体の得点率は 34.8% でした。設問の正答率は,(1)(i)が 63% で,その他が 24%~41% でした。(1)(i)に対して(ii)の正答率が大きく下がっていることがわかります。これは「漸化式は立てることができたが,その一般項を正しく求めるというところで苦戦した」ことを意味します。この原因ですが,まずは「漸化式の解法自体が身についていないこと」が挙げられます。この漸化式の処理は必ず知らなければならない解法となりますので,教科書などで確認し,次回は自力でできるようにしておきましょう。この他,解法は知っているが,計算が正確にできずあてはまる選択肢がなかった人も多いかと思います。本設問は,小数の計算がありミスしやすいものでした。「解答」では,初項をうまく捉えて,小数計算をできるだけ回避する方法を紹介しているので,復習の参考にしてみてください。
第4問
直方体を題材にした「空間ベクトル」の問題であり,大問全体の得点率は 36% でした。(1)と(2)はよくできていました。これらの設問でミスした人は,基本事項が身についていない可能性があるので,「空間座標」の基本的な扱いを一度振り返っておくとよいでしょう。(3)では,(ii)において苦戦していました。ある点から平面に垂線を下ろした点の位置ベクトルを求める問題は,定期考査や個別試験でも頻出なので,次回はできるようにしておきましょう。
今後の学習について
「数学I,数学A」も含めて,今回出題した問題は,共通テストの色が強いものが多く,見た目は個別試験とは異なるような印象があるかもしれません。しかし,このような問題に,たとえば「単に解法だけを暗記する」ような受験のためだけの学習では対応できないことは,今回受験をしていただいた皆さんであれば実感できたかと思います。
これが,大学入試センターが共通テストにおいて,わざわざ今回のような問題を出題している理由であり,その意味においては,個別試験も同じです。共通テストも個別試験も,基本事項の理解だけではなく,それらを組み合わせて,もっと別の問題を解決する力や,解決しようとする姿勢を試してきます。これらに対応するには,普段の学習において
・学習したことを使って,それをさまざまな問題に応用しようとする
・1つの問題をじっくり考え,いくつかの解法を検討し,比較する
・「なぜ」を大切にして,その理由を積極的に考える
といったことが必要になります。少なくとも,単に「与えられた問題をひたすら解く」といった学習では太刀打ちできないでしょう。
Z会数学では,上記に挙げたことを実践できるような教材や指導を準備しています。大学入試だけでなく,その先も見据えた「数学」の学習を進めていきましょう。