家が居心地のいい場所に。思春期の子どもとの接し方。(後編)_2017.10

2017年10月26日

カテゴリー : 教育情報全般

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公立小学校で23年間教師を勤めた親野智可等さん。子どもたちが未来を切り拓くために必要な力は“自己実現力”。そのために親ができることは何か。引き続きお話を伺います。

 

── 子どもにはやりたいことを自分で見つけさせること、それが見つかるように紹介と推薦を続け、そして子どもがやりたいことを見つけたら応援してあげる。そうやって自己実現力を身につけていくんですね。

そうです。そんなに難しいことではありませんが、子どものペースにじっくり付き合ってあげることはもしかしたら大変かもしれませんね。

先日病院へ行ったときこんなことがありました。受付に診察券を入れる機械があり、幼い子どもが診察券を入れたいと言って聞かない。じゃあこれをこう向きに入れてとお母さん。そのあと紙が出てきたり子どもにとってはわくわくする作業が続くわけです。時間がかかるけれどやりたいだけやらせる。子どもにとっては大人の機械を使いこなせたという自信、お母さんの役に立った達成感で満たされます。些細なことですが、これが自己実現です。
危険なこと、人の迷惑になることはだめです。ですが、それ以外のことは、子どもの主体的なやる気を大切にしてあげてください。

 

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── 思春期になると、親の言うことを素直に聞かなかったり反抗期の悩みもあります。

そうですね。中学生にもなると、細かい小言を言い続けても絶対無理です。もちろん、人間として許されないことや、犯罪的なことに関しては、絶対許してはいけませんが、そうでない日常の細かいことで叱り続けるのはやめた方がいいです。たとえば、「靴下を脱ぎっぱなしじゃダメでしょ」「食べるとき肘をつかない!」など、言い続けてもお互い不愉快になるだけですから、諦めて目をつむった方がお互いのためです。(笑)

でも、だからといって、何も話しかけないでいるのもよくありません。子どもは親に見放されたように感じて、「どうせ自分のことなんかどうでもいいんだ」と思うようになってしまうからです。ですから、「おはよう。今日もいい天気だね。美味しい味噌汁できてるよ」「お帰り、お疲れ様。大変だったね」など、相手を思いやる言葉を掛けてあげてください。親は、小言と声かけの違いを意識している必要があります。

子どもからは無視されるか、あるいは「別に」「うぜえ」などの冷たいひと言が返ってくるかもしれませんが、それでも全く声かけをやめてしまうのはよくありません。親の愛情を伝え続けることが大切です。食事の献立に自分の好きなものが出てくるだけでもうれしいものです。朝、明るく「おはよう」と言われるだけでも親の愛情を感じることができます。

この時期にもうひとつ大切なのは「共感」です。例えば、子どもが部活を辞めたいと言い出したとき、「何言ってるの!才能あるんだからがんばりなさい。応援してるから」などと跳ね返してしまうと、子どもはもう何も言えなくなります。どうせ親に言ってもお説教されるだけだと感じて、一人で溜め込むことになります。

ですから、こういうときは「どうしたの?」と聞いて、子どもが「だって○○で□□なんだもん」と言ったら、「そうなんだ。それは大変だね」「それはイヤになっちゃうよね。苦しいね」など、共感してあげてください。共感してもらえるだけで子どもの気持ちが楽になります。すると、「もうちょっとがんばってみよう」という気持ちになることもあります。そうならない場合も、たくさん話を聞くことで原因がはっきりするので、対応の仕方も自ずから見えてきます。

思春期の子どもにとって、家は居心地がいい場所であるべきです。人間関係でたくさん悩み、勉強も大変。部活や塾…大人が思っている以上にストレスが多い生活です。せめて家は、ストレスもなく安心できる場所である必要があります。そのためには、細かい小言を言うのをやめて、明るい声かけと共感的な対応に心がけることです。そうすれば、いずれ反抗期を乗り越えることができますし、非行に巻き込まれることもありません。

 

── 子どもが未来を切り拓くには、親の関わり方が大切ということですね。

そうですね。子どもが自己実現力を身につけ、自己肯定感で満たされる。そのために親は一番のサポーターであるべきです。

スマホやSNS、放っておいても子どもたちは新しいツールに出会うでしょう。スマホが普及したのは本当にここ数年の間ですから、この先もっと新しいものがどんどん出てくる可能性があります。スマホを使ってはダメ、LINEは危険などと遠ざけるだけでは時代についていけません。子どもがスマホも含めて新しいものを使いたがるのは自然なこと。であるならば、セキュリティソフトを更新する、OSをアップデートする、親子で話し合ってルールをつくるなど、子どもが危険に巻き込まれないようにサポートしてあげる、これが親のやるべきことです。SNSなどでトラブルにならないように、困ったら親に相談できる、なんでも話せる関係が必要です。そのためにも、日頃から共感を大切にして、よい人間関係を築いておくことがとても大切です。

どの子にも明るい未来を主体的に切り拓いて欲しいですね。そのために親にできるサポートをしてあげてください。親の願いを押しつけるのではなく、子どもの主体的な自己実現を応援してあげてください。

 

文・ふるたゆうこ

 

プロフィール

親野智可等(おやのちから)
教育評論家。長年の教師経験に基づく勉強法や子育て法をブログ「親力講座」やメルマガで発信。新聞、雑誌、テレビなど各メディアに絶賛される。『「自分でグングン伸びる子」が育つ親の習慣』などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。小・中・高校、幼稚園・保育園での教育講演会も大人気。
公式サイト

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