第14回 【入試制度】東京都立高校篇 ~小学6年生のあなたへ~

執筆者:尾田哲也(Z会進学教室 代表/御茶ノ水教室 教室長/数学科)
記事更新日:2021年10月8日

【連載:高校入試を知る!】東京都立高校篇

こんにちは。Z会進学教室御茶ノ水教室の尾田です。この記事では東京都にお住まいで都立高校入試の受験を検討されているみなさまに、都立高校入試について概要をお伝えします。ぜひ学習や志望校選びの参考になさってください。

都立高校の2つの入試

都立高校入試では、推薦に基づく選抜(いわゆる推薦入試)と学力検査に基づく選抜(いわゆる一般入試)の、大きく分けて2種類の入試が行われています。首都圏の一都三県の公立高校入試で、学力検査を課さない推薦入試的なものが行われているのは都立高校だけです。

推薦入試 選抜方法と日程

推薦入試は、例年1月26日と27日に行われます。集団討論と個人面接の他に、小論文・作文・実技検査などの中から学校ごとに1つ以上を実施します。集団討論は、与えられたテーマを5~6人で30分ほど話し合うのですが、令和3年度入試においては、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から集団討論は行われず、令和4年度入試においても集団討論は行われないことになりました。小論文や作文は学校ごとに特徴があるので、受験生は過去問題を研究しておかないといけません。

推薦入試の定員は、各高校の募集人員のうち、普通科では20%、専門学科では30%に設定している学校が多いです。定員が少ないため倍率が高くなり、男子は3倍前後、女子は4倍前後になる学校が多いです(都立高校の普通科においては男女別の定員が設けられています。公立高校入試で男女別の定員が設けられているのは、全国で都立高校のみとのことです)。

推薦入試の配点は高校ごとに決められています。例えば令和3年度の日比谷高校の推薦入試は、調査書点:450点、個人面接:200点、小論文:250点、の合計900点満点で選抜されました。配点のうち調査書点の割合が50%という高校が多いです。

倍率が高く受かりにくいため、都立高校が第一志望でも、推薦入試を受けない生徒もいます。特に、調査書点が低めの生徒や、集団討論や個人面接などの人前で話すのが苦手な生徒は、推薦入試を受けないという選択をする生徒が多くなります。Z会進学教室に通っている生徒では、都立高校を第一志望としている生徒のうち推薦入試を受験するのは、およそ3人に1人くらいです。Z会進学教室では記述問題の対策がしっかりできている生徒が多いので、受験者数は多くなくても、合格する生徒の割合は一般の倍率より高い場合が多いです。

推薦入試では、合格したら必ずその高校に進学をしないといけません。推薦入試で受かりやすい高校に受かっておいて、一般入試で難しい高校を受けるということはできません。

推薦入試で不合格になった場合は一般入試を受験することになるわけですが、推薦入試と同じ学校を受けることもできますし、違う学校を受けることもできます。同じ学校を受けたときに、推薦入試を受けていたからといって、有利になることも不利になることもありません。

一般入試 選抜方法と日程

一般入試(の第1次募集)は例年2月21日に行われます。都立高校の全日制のほとんどの学校が5教科入試です。5教科の学力検査の得点を700点満点に、調査書の得点を300点満点に換算して、合計1000点満点で選抜されます。

■調査書の得点について
都立高校入試における調査書の得点は、推薦入試においても、一般入試においても、中3のもののみが使用されます(首都圏の一都三県の公立高校入試で、中3の調査書点しか見られないのは都立高校のみです)。

一般入試においては、音楽・美術・保健体育・技術家庭の技能4教科の得点を2倍して(オール5だと20点満点を2倍して40点満点)、それに英数国理社の5教科の得点(オール5だと25点満点)を加えて、65点満点にし、それを「65分の300倍(約4.6倍)」して300点満点にします。(技能教科を2倍するのは一般入試だけです。推薦入試では2倍されません)

都立のトップレベルの高校をめざすのであれば、一般入試でも、中3で5と4が半々以上はほしいところです。Z会進学教室から都立のトップ校を受ける生徒の多くは中3でそのくらいの調査書点を取ってきますが、その生徒たちみんなが中2の時からそのような良い成績を取っていたわけではありません。中1中2の間に、自分に適した調査書点の取り方(どうすれば定期試験で得点が取れるかなど)を見つけていきましょう。

■学力検査について

都立高校の学力検査は各教科50分で行われます。一部の学校を除いてほぼすべての都立高校では同じ問題を使用して入試が行われます(この同じ問題のことを「共通問題」と呼んでいます)が、一部の学校では英数国の入試を、学校ごとに作成した問題(この問題を「自校作成問題」と呼んでいます)で行われます。

自校作成問題について

英数国を自校作成問題で入試を行う都立高校は10校あります。進学指導重点校の7校(日比谷・西・戸山・青山・国立・立川・八王子東)と進学重視型単位制の3校(新宿・国分寺・墨田川)の合わせて10校です。

学校ごとに作成した問題と言っても、形式はある程度決まっています。

国語は、漢字の読みと書きの後に、小説と論説文と現古融合文(昔の人が書いた古文や和歌などを現代の人が評論した文章)の3つの問題が出題されます。論説文の問題の最後に、筆者の意見を踏まえて200字から250字の小論文を書く問題が出題される高校が多いです。また漢字の配点が高く、20点配点の高校が多い(共通問題の国語も漢字は20点配点です)ので、漢字の練習はしっかりとしておかないといけません。

数学は、記述問題が3問出る高校が多いです。平面図形の証明問題と、関数と空間図形の途中過程を書く問題です。

英語はリスニング問題(リスニング問題は共通問題と同じ問題です)の後に、長文2題(対話文と説明文)を読んで、最後の問題で40単語以上で書く英作文が出題される高校が多いです。長文2題に使用されている単語数は合計2000単語を超えているので、リスニングや英作文などの問題を解く時間を考えると、1分間に100単語以上の英文を、意味を理解しながら読むスピードが求められます。

受験者平均点は、英語と国語が60点前後、数学が50点前後になることが多いです。3教科ともに、難関私立高校のような難易度の非常に高い問題が出題されるわけではないのですが、共通問題よりはかなり難しい上に、記述問題を含めて50分で解くには時間的に厳しい問題量が出題されるため、問題を解く訓練を充分に行っていないといけません。

英数国を自校作成問題で入試を行う学校でも、理社は共通問題です。自校作成問題校を受ける生徒は、理社はともに90点以上をめざしてください。

上記の10校の他に、都立国際高校は英語のみ自校作成問題で入試を行っています。都立国際高校の英語は他校と形式も違いますし、リスニングもオリジナルです。

共通問題について

都立の共通問題は、出題の形式や小問数が年によってほとんど変わらないため、対策は取りやすいですが、難しい問題も数問出題されるので、高得点を取るためにはしっかりとした学習が必要になってきます。

共通問題で入試が行われる高校のうち比較的難しい学校(小山台・駒場・竹早・武蔵野北など)を受験する生徒は、5教科ともに90点以上をめざして学習してください。

各教科の問題構成は以下の通りです。

国語は、1⃣漢字の読み(10点)、2⃣漢字の書き(10点)、3⃣小説(25点)、4⃣説明文(30点)、5⃣現古融合文(25点)、の5問構成で、4⃣の最後の問題は200字の作文が出題されます。

数学は、1⃣計算や確率や作図などの小問(46点)、2⃣新傾向の問題(12点)、3⃣関数(15点)、4⃣平面図形(17点)、5⃣空間図形(10点)、の5問構成で、2⃣と4⃣に証明問題が1問ずつ出題されます。

英語は、1⃣リスニング(20点。自校作成問題と共通)、2⃣小問(24点)、3⃣対話文(28点)、4⃣物語文(28点)、の4問構成で、2⃣の最後に英作文が出題されます。

社会は、1⃣小問、2⃣世界地理、3⃣日本地理、4⃣歴史、5⃣公民、6⃣融合問題、の6問構成で、記述問題が2問出題されます。

理科は、1⃣と2⃣小問、3⃣地学、4⃣生物、5⃣化学、6⃣物理、の6問構成で、記述問題が2問出題されます。

(社会は1問5点×20問=100点、理科は1問4点×25問=100点ですが、大問ごとの配点は年によって異なります)

メッセージ

以前(20年以上前)に比べると、都立高校は学校ごとに個性が出てきたので、まずは学校見学などをして自分の進学したい高校を見つけてください。それとともに、以前に比べると都立高校(特にここで名前を挙げた高校)は合格することが難しくなったので、しっかりと学習して、自分の行きたい高校に合格できるように努力していきましょう。

この記事の著者

尾田哲也(おだ・てつや)

Z会進学教室で横浜教室長・渋谷教室長・御茶ノ水教室長を歴任するとともに、20年以上数学の授業を担当。入試情報の分析・発信に力を入れている。

御茶ノ水駅(千代田区)の学習塾・個別指導塾「Z会御茶ノ水教室」

 

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