第64回 プログラミングはコミュニケーション力を鍛えることができる ~仲間を増やそう~

執筆者:鈴木亮介(Z会進学教室 調布教室長/国語科)
記事更新日:2022年07月15日

プログラミングはコミュニケーション力を鍛えることができる ~仲間を増やそう~

こんにちは。Z会調布教室教室長の鈴木です。2020年から小学校の教育課程にプログラミング教育が導入されました。プログラミングとは、簡単に言うとコンピュータに指示・命令を与えること。プログラミング教育について文部科学省は、「コンピュータなどの情報機器やサービス、情報を適切に選択・活用して問題を解決していくことが不可欠な社会が到来しつつあ」ることをふまえ、「コンピュータを理解し上手に活用していく力を身に付けることは、これからの社会を生きていく子供たちにとって、将来どのような職業に就くとしても、極めて重要なこと」としています(小学校プログラミング教育の手引より https://www.mext.go.jp/content/20200218-mxt_jogai02-100003171_002.pdf )。

プログラミングというと「コンピュータ」「ロボット」と連想したり、あるいは「理数系の能力」と結び付けて考えたりすることも多いと思います。でも、プログラミングを学ぶことによってつけられる力は、それだけではありません!そこで今回は、普段Z会の教室で小中学生に国語を教えている私・鈴木の目線で、小学6年生のみなさんに伝えたい「プログラミングを学ぶ意義」をお話しします。


プログラミング=パソコンだけじゃない!

突然ですが質問です。みなさんの身近に「プログラミングされて動いているもの」はどれくらいあるでしょうか?思いつく限り挙げてみてください。

パソコン、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ…

それだけではありませんよ!ちょっと全然思いつかないなぁという6年生のみなさんに、おすすめの本があります。Z会の本「99%の小学生は気づいていない!?」シリーズの『プログラミングの創造力』の中にもいくつか具体例が出てきますので、手に取って読んでみてください。

その本の中にも出てきますが、プログラミングされて動いているものは、身近にたくさんあります!たとえば、電子レンジは電磁波の振動によってまさつ熱を生み出し、食品などを温めることができますが、センサーで食品の温度を検知し、目標の温度になったら電磁波を止めるようにプログラミングされています。これによって、人がずーっと監視し、頃合いを見て止めるといった必要がなく、温めすぎる心配もありません。

ほかにも、エアコンや掃除機、冷蔵庫などにもプログラミングが使われている機種が増えてきています。一歩外に出ると、街中の電光掲示板や、自動改札機など、あらゆるところでプログラミングが使われ、私たちの便利な生活を支えています。

プログラミングが”コミュ力”を高める、その理由は?

さて、この記事のタイトルに「プログラミングがコミュニケーション力を鍛えることができる」と書きました。どういうことなのか、先ほどご紹介した本『プログラミングの創造力』の一節を取り上げますので、まずは以下を読んでみてください。

(主人公の小学生”タスク”と”マイ”は、ロボットの”ボット”と一緒に鬼ごっこをすることになり、初めはボットが鬼役に。ルールを一通り説明したのですが…)

「イチ、ニー、サン、シ……」
「逃げろー!」
いっせいに走りだすタスクとマイ。
ところが、ボットは数えおわっても動きません。
広場の真ん中に、突っ立ったままです。
「どうしたの、ボット?」
タスクはボットにかけよりました。
「ダレヲ ツカマエレバ ヨイカ、ワカリマセン」
ボットは首をかしげています。
「だれでもいいよ」
「ダレデモ トハ、ダレ デスカ?」
「つかまえやすそうな子だよ!」
「ツカマエヤスソウナ コトハ、ドウイウ コデスカ?」
「『どういう子』って言われても……」

この記事を読んでいる小学生のみなさんは、この課題をどうやって解決しますか?(これまでに公開した『課題解決のヒケツ』『読み取るチカラ』の記事も参考にしてみてくださいね)

私たちはふだん「つかまえやすそうな子」というのを自分の頭の中で何となく判断していますが、ロボットは「つかまえやすそう」というあいまいな指示では動くことができません。はっきり、明確に指示しなければなりません。

では、もう一節読んでみましょう。

(今度はおともだちの”ラン”も交えて、”タスク”が鬼役、”ボット”たちが逃げることになったのですが…)

「逃げろー!」
マイとランが走りだしました。
少し遅れて、ボットも動きだしました。
「待てー!」
二人と1体を、鬼役のタスクが追いかけます。
タスクを見つけたボットは、タスクから離れ続け、公園から出ていってしまいました。
ぐんぐん遠ざかっていくボットを、マイもランも、あっけにとられて見ています。

みなさんが友達と鬼ごっこをしているときのことを思い浮かべてみてください。絶対に鬼に捕まりたくないからと言って、公園から出て家に帰ってドアのカギをかける…なんてことはしませんよね。でも、なんでですか?改めて、その理由を答えよと言われたら、どのように説明しますか?「え、そんなの常識じゃん!」…でも、それではロボットには伝わりません。

これも、ロボットに対する指示が不足していたために起きてしまったことです。「逃げろ」だけではなく「どこまで離れればいいのか」という指示も必要だったわけですね。プログラミングでは、このようにあらゆる事態を想定しつつ、指示に不足や誤りがあった場合は問題を見つけて修正することが大切です。

「あいまい」「普通、常識」では、伝わらない

鬼ごっこのケースで見てきた「あいまいな指示」や、「暗黙の了解(普通こうだよね、それって常識じゃん、など)」は、コンピュータへの指示に限らず、人と人とのコミュニケーションにおいても実は重要な視点です。

みなさんも学校でSDGsを学習する機会があるかと思いますが、その中に「5.ジェンダー平等を実現しよう」「10.人や国の不平等をなくそう」といった項目がありますね。様々な価値観を持つ人と交流するうえで、自分の常識で判断したり、相手の考えを聞かずに決めつけたりすると、時に相手を傷つけてしまいます。

以前、ある中学入試の問題で「留学生にじゃんけんの仕方を説明せよ」という作文の問題がありました。これを中学生に書いてもらったところ、大半の生徒が「じゃんけんはグー、チョキ、パーがあって…」と書き出していました。

ちょっと待って!そもそも「じゃんけん」って何?どういうもの? 「チョキは2本の指を…」2本ってどの指とどの指? 「掛け声で…」「あいこのときは…」考えれば考えるほど、私たちが慣れ親しんでいるものを1から10まで省略せず説明することの難しさを痛感します。でも、これって相手を思いやる大切な力ですよね。

同じ言葉でも、相手と自分とではその認識は違います。「早めに終わらせて」「きちんとやって」…大人も仕事のシーンでこうした言葉を上司から部下に投げることがありますが、部下なりの早めが上司にとっては遅い、なんてこともあります。ここで部下は「早くやれといっただろう」と怒られてしまうのですが、ここで悪いのは部下ではなく、正確な指示を出していない上司ですよね。「早め」ではなく「●日の●時まで」と正確に言えれば、部下も安心して取り組むことができます。

99%の小学生は気付いていない?

プログラミングを学ぶことで、「理系」「文系」を問わず、これからの時代に必要なコミュニケーション力を育てることができます。

今回紹介した本『プログラミングの創造力』には、教科書では学べない、これから生きていくために大切なことがたくさん書かれています。知っておきたいプログラミング・コンピュータ用語の一覧なども収録されています。気になった人はぜひ、『プログラミングの創造力』を本屋さんで買って読んでみてください。

❖書籍紹介リンク
https://www.zkai.co.jp/books/guide/id-5420/

「99%シリーズ」特設サイトURL
https://www.zkai.co.jp/books/99series/


この記事の著者

鈴木亮介(すずき・りょうすけ)
2013年よりZ会進学教室にて中学生の国語、小6公立一貫校受検コースの文系を担当。立川教室や池袋教室を中心に数多くの6年生の作文指導に携わり、南多摩中、立川国際中、大泉中などの合格者を輩出。2016年よりZ会に入社し、同年より調布教室の教室長を務めるほか、国語科の一員として校正業務、冬期講習単科ゼミ「西の作文」の講座設計・教材作成も担当。肥薩線の三段スイッチバックのごとく「地味にすごい」をモットーに教壇に立つ。

調布市の学習塾・個別指導塾「Z会調布教室」

 

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