2024年度「京大文系国語」徹底分析 傾向と対策

Z会の大学受験担当者が、2024年度前期試験を徹底分析。長年の入試分析から得られた知見もふまえて、今年の傾向と来年に向けた対策を解説します。

今年度の入試を概観しよう

分量と難度の変化(時間:文系120分)

第二問は2023年度より1ページほど分量が減少した。各大問ごとに難度のばらつきはあるものの、全体としては京大入試として標準的な難度の出題であると言える。

2024年度入試の特記事項

  • 例年通り、現代文・現代文・古文の3題の出題。標準的な難度ではあるものの、全体の負担感は2023年度よりも上がっている。第一問に時間をかけすぎないよう、トータルの時間配分に留意が必要である。
  • 2023年度にはなかった旧仮名遣いの芸術論が出題されたが、頻出の形式・ジャンルなので京大に対応した演習経験で差がついただろう。
  • 解答欄が広いうえ、解答要素が重なって書きづらい問題もあるので、解答要素の見極めが特に重要となった

合否の分かれ目はここだ!

どの大問も読みづらさや解きづらさなど京大特有の難しさはあるが、出典や解答量などを見て慌てる必要はない。落ち着いて得点できる所を確実に押さえ、トータルで合格点を確保するという意識を持つことが重要である。

第一問の問四・問五は特に解答要素の重複に注意が必要。それぞれで問われている必要な要素を見極め、解答を書き分けることがポイントだ。第三問の古文は和歌に関する問題が複数問出題されたので、和歌の基礎知識と演習経験で差がついたと思われる。出題傾向は一貫しているため、京大に照準をあわせて読解・記述演習をしっかり積んできた受験生であれば、実力を発揮できただろう。

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大問別のポイント

 (一):現代文  出典:奈倉有里『夕暮れに夜明けの歌を―文学を探しにロシアに行く』

言語学習に関する随筆からの出題。リード文には「ロシア語学習歴」とあるが、内容は言語論に通じるところが多くある。出典は2021年に発刊された作品。テーマも受験生にとって親しみやすいもので、読解そのものに苦労することはあまりないだろう。しかし、解答欄に合わせ解答をまとめるのは一筋縄ではいかない。限られた時間の中で、どれだけ解答要素を吟味できたかがポイントである。

  • 問一は傍線部直前、問二は傍線部の前後の内容をまとめる。比較的解答要素が見つけやすく、取り組みやすい設問。時間をかけ過ぎずに得点を稼ぎたい。
  • 問三~問五は1つの段落に傍線が3本引かれている。各設問で解答要素が重複しすぎないよう、解答の書き分けに注意する必要がある。解答を作成する前に、問題文全体と設問文から各解答の方向性を吟味していればスムーズに解答することができただろう。

 (二):現代文  出典:高村光太郎「永遠の感覚」

芸術における「永遠といふ観念」について論じた、詩人であり彫刻家・画家としても有名な高村光太郎の文章からの出題。2021年度文系第二問の石川淳「すだれ越し」以来、3年ぶりに旧仮名遣いの文章が出題された。
京大頻出の芸術論ジャンルの出題だが、議論は順を追って丁寧に展開されており、設問ごとに書くべき解答の方向性も比較的つかみやすい。傍線部の一語一語の意味合いを十分に汲み取ったうえで、解答欄の広さに見合う解答になるよう踏み込んでまとめたい

  • 問一は「どういうことか。」という内容説明問題の形をとっているが、「至極当然なこと」と述べるに至った論理の流れも踏まえて解答をまとめる必要がある。
  • 問三は、問題文で述べられている「時間としての永遠」と「感覚としての永遠」を、傍線部の前後に着目してそれぞれ説明する。この設問に解答すること自体はさほど難しくないが、2種類の「永遠」の違いは問題文の議論全体の前提として念頭に置いたうえで、他設問の解答作成にも臨みたい
  • 問五は傍線部の語句が表現するものに特に注意が必要。「明滅の美」から、特殊の美がもつ〈一時に過ぎないはかなさ〉を押さえ、それでもなお、世界に無数にあるそうした美が「豊饒の場」=「真に独自の大きさをもつ芸術作品」を生む豊かな土壌を構成する旨をとらえる。

 (三):古文  出典:『とはずがたり』

鎌倉時代の日記文学からの出題。父の三十三回忌に際して、和歌に優れた血筋をもつ作者の苦悩や願望がつづられている。場面と人物をたどって細かく丁寧に読む必要がある。問題文中に和歌が4首あり、和歌に関連した設問も3題出題された。解答の方向性はとらえやすいが、丁寧に補って記述することがポイント。

  • 問一は和歌の上の句についての内容説明。直前の記述と和歌の下の句を踏まえ、作者の感慨を押さえたい。
  • 問二・問三は現代語訳で、リード文がヒントになる。例えば、問三の和歌は「海人」と「尼」の掛詞に気づいて比喩を訳す必要があるが、作者が出家していることがリード文に書かれている。
  • 問四は傍線部を含む段落から「いづ方」の内容を押さえることがポイント。ここは必ず得点しておきたい。
  • 問五は和歌の内容を踏まえて傍線部の理由を説明する。和歌の詠まれた状況や和歌の内容をまとめればよい。

和歌の修辞や基本語句、古文常識などを押さえたうえで、文脈を踏まえて読解していく力が重要な出題だった。リード文や注がヒントになることもあるのでここまで目配りできると差がつくだろう。

 攻略のためのアドバイス

京大文系国語を攻略するには、次の3つの要求を満たす必要がある。

●要求1● 基本的な語彙力

文学的・抽象的な表現を含む文章からの出題が多い京大国語では、読解力・記述力ともに高いレベルが要求される。その水準に達するためには、基本語彙の意味を正確に把握し、記述する際にも適切な語を選ぶことができる語彙の運用力が必要不可欠。Z会の書籍『現代文 キーワード読解』『速読古文単語』などを活用して、語彙力の基礎を固めよう。

●要求2● 幅広いジャンルに対応できる読解力

京大国語では、普段受験生が読み慣れないであろうさまざまなジャンルの文章から出題されるため、京大で出題されそうな文章の読解経験の量がものをいう。問題文中に直接的に表現されていなくとも、文中の表現のニュアンスを汲み取り、筆者の主張や心情を正確に読み取る力が必要である。

要求3●大意をまとめなおす記述力

京大国語の設問は、すべてが記述式問題であり、求められる記述の分量もかなり多い。解答に必要な要素を見極める力と、必要な要素を正確に伝わる形で解答にまとめなおす力が求められる。問題文中の記述の寄せ集めではなく、適宜自分の言葉で言い換えたりふくらませたりすることができる確かな記述力が必要である。

対策の進め方

まずは、土台となる●要求1・2●を満たすことを目指そう。Z会の通信教育の本科「京大講座」では、毎月さまざまなジャンルの問題文を通じて、京大入試に対応した読解・演習の経験を積むことができる。語彙・文法事項といった知識事項の抜け漏れをつぶしていくと同時に、記述演習にも取り組むことで、第三者に伝わる解答の作成法を身につけよう。

その後は、さらに●要求2・3●を磨いていこう。9月以降のZ会「京大講座」では京大入試本番と同様、大問3題セットのオリジナル問題を出題する。第三者の客観的な視点からの添削指導を受けて、自分の解答に足りない要素やまとめ方のコツを把握し、解答の質を高めていこう。
入試直前期には、本番前の最終調整として過去問や予想問題を活用しながら、より本番に近い形での演習をするとよい。読解量・記述量ともに負担が重い京大国語に対応するために、制限時間内でうまく解答をまとめることを意識して問題演習を行おう。

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